■■■ 鳥類/哺乳類の分類 2013.4.25 ■■■ 舌分類の視点も面白い 「舌」と言えば、まずは味覚器官と考えてしまう。「舌の役割としくみ」というわかり易い説明があるが、これは味覚についての話の一部である。これがヒトの発想である。ただ、感覚器として一番優れていそうなのは蛇や蜥蜴。口外に舌をチョロチョロだして微粒子を補足していると思われるからだ。これに対して、雑食性のヒトは、口中物質検定に特化したと言えそう。 哺乳類全体に拡大してみると、以下のよう機能があると見るのが一般的らしい。尚。爬虫類も同じようなもののようだ。 【基本機能】 ・口腔中操作器官 ・感触器官 【一部の哺乳類が持つ追加機能】 ・”拭う"(体表面のケア) ・"舐める"(傷口や新生児のケア) 【犬が持つ追加機能】 ・気化熱による体温調整 【一部の爬虫類が持つ特殊機能】 ・捕食器官 舌は筋肉だが、その元に骨があるものか、浅学な小生にはわからぬが、化石からでは舌の構造はわからないから、舌で哺乳類を分類する発想はないと思われる。 しかし、動物園で眺めていると、舌こそが種を分ける決め手になっているような印象を受ける。味覚といった感覚器の方ではなく、物理的機能の点でである。舌は歯の補助機関のように受け取られているが、動物達の食餌の様から見ると、歯の方が補助機関と見ることもできるのではなかろうか。 なにがポイントかといえば、上記の"一部の爬虫類が持つ特殊機能"と見なされる「捕食器官」としての役割。この機能を持つ哺乳類が散見されるからである。もしかすると、散見どころかそれこそが主流の可能性も。その割に注目されていないというころは、この見方が間違いということなのだろうか。 小生が驚いたのは、2本の角がある反芻動物のキリンの食べ方。上空の籠のなかから枝を取る際の行動を見ていたのだが、舌がヒトの手のような役割を果たしているのである。籠から、上手に一本の枝を舌で絡めて抜き取るのだ。ヒトのなかにも、サクランボのへたの口中結びができる人がいるが、そのレベルの器用さで、口外でかなりの重量のものを扱えるのだ。 一方、猫族の舌も丈夫にできていることがわかる。常識的には、肉を食べる際は、犬歯で引き千切って口中に入れるイメージをもっていたが、よくよく見るとそういうことでもなさそう。犬歯はあくまでも"刺す"機能がメインで、それは武器としての牙機能。草食動物なら角に当たるものとなるか。この機能を発揮している姿は、動物園では見ることはできないが、"刺す"次の、犬歯に力を込めて肉を引き"裂く"方は多少それらしき動きを見ることができる。ややもすると、これがメインの捕食行為と考え勝ち。 ところが、実際の食餌シーンを見ると、これは思い違いのようなのである。肉を取るのは、舌だからだ。ヒトだと、骨付き肉を手で持ち、付着肉を歯でこそぎ取ることになる。多摩動物園の猫族はそんなことはせず、舌で嘗め回しているように見える。肉がなくなっていくところを見ると、付着肉をこそげ取っているのは間違いない。軟体動物の歯舌に近い舌の構造になっているのかも。 そして、猫族にとって何よりも重要なのは、舌で水を取る機能だ。これなくしては生きていけないからだ。 見たのは、たったこれだけだが、全体観に繋がりそうなものの見方もできるのではなかろうか。【蹄で見た哺乳類の4分類(2013.4.4)>>>】で、以下のような素人的見方の例をあげたが、それとも重なってくる。 ○蹄を持つ系統 ・爪先蹄:化石動物(例えば狼類似のMwsonyx) ・走行特化型の奇数の蹄:ウマ等 (バクは前肢4つ、後肢3つ。はてさて。) ・偶数の蹄:ウシ等・・・草を毟り取る舌 (蹄数もさることながら、反芻用器官と盲腸の存在で見た方がよさそう。) ・走行機能を失った蹄:クジラ・・・魚類同様に無用の舌 ○蹄が無いことで、蹄動物を捕食する系統・・・肉塊をこそげ落とす舌 ・草食獣を食べる肉食獣(ネコ/イヌ/クマ等) ○蹄以外の、脚利用方法で捕食領域を広げた系統 ・コウモリ等 そうなると、他の3つの大分類はこのように位置づけることができよう。 ○蹄同様の器官が認められる系統 ・原始的な蹄:ツチブタ(管歯) ・一応の蹄:ゾウ(磨耗臼歯)・・・捕食機能なき舌 ・蹄的な痕跡:ジュゴン ○もともと蹄を不要とする系統(広域草原生活非対応)・・・捕食機能なき舌 ・ネズミ/ウサギや、サル/ヒト等 ○特殊食性器官に特化した例外系統・・・特定餌専用の捕食機能を持つ舌 ・アリクイ 舌がどうなっているのか調べていない動物が多いので、網羅的に書くことはできないが、まとめると以下のようになる。少数例での推定でもあるから、当てにはならないが。 ○反芻動物とは、舌で草をこそげ取る動物。 ○反芻動物を餌とする猫族は、舌で肉をこそげ取る動物ということ。 ○水中動物化すれば、舌の機能は失せる。 ○舌のそうした機能を前肢と前歯に託したのが、ネズミやヒト。 ○それ以外は別系統。 ・草食なのに舌を活用しないで鼻を使うゾウ。 ・特殊食に適応した舌を持つアリクイ。 尚、反芻動物としたのは、草食であるモウコノウマやイノシシの食べ方を見ると、舌は捕食用ではなさそうだから。よく見えないのでわからないが、舌が出ていないようだ。そうなると、前歯でかきこんで口に入れるということか。 まあ、そうではないかという気はしていた。ウマは、ヒトが好むタイプを除けば、絶滅化一途で、ヒトが滅ぼしたと見なす書き物が多いが、それはウシでも同じ筈。牛や水牛で見れば、その通りになっているが、ウシの類縁である山羊や鹿をみるとしぶとく生き残っている。 これは、舌の捕食機能が強力だからとは言えまいか。草を刈り取るとか、切り取るのではなく、舌でからめて毟り取るのだ。すべての葉に力をかけるから根まで抜けることになり、その飼集めの効率性はダントツ。草地が貧弱化したら、ウマが勝と残れる訳がない。 良く知られているように、天敵がいない離島に山羊を放つと植生が変わってしまう。大増殖し荒地化してしまう訳だ。天下を誇った山羊も飢餓におそわれ、最終的には貧相な環境のまま絶滅するか、植物生育量に見合った生息数に収斂していくしかないと言われている。 と言うことで、舌分類の見方、どうだろう。本質は、食対応ということでしかないが、歯の構造や代謝器官の特徴以外にも、色々な違いがあり、そのストーリーを考えるともっとわかり易い分類ができそうな感じがする。もちろん、素人用のものであるが。 多摩動物公園の見所−INDEX >>> HOME>>> (C) 2013 RandDManagement.com |