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2006年1月4日
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温泉に浸かり考える…

 年末恒例の、旅行会社の投票で決まる2007年版温泉ランキング(1)が発表された。専門家の目で選んだリストだから、直近の人気を反映した結果と見てよい。
 ランクが昨年より上がった温泉場には活気が溢れているのが普通である。

 伊豆の温泉につかりながら、リストを眺め、少し考えてみた。
 と言っても、素人の上、首都圏近辺しか知らないから、視野は狭いが。ともあれ、気付いたことをまとめてみた。

 先ずは1位だが、【群馬県】の草津。
 湯量豊富で、強い硫黄泉の割りには、結構色々な泉質があるから、予想にたがわずといったところ。町をあげて温泉の良さをウリにしてきた努力の賜物だろう。(2)
 落ち着いた雰囲気で、柔らかいお湯の四万(20位)も、人気上昇中である。温泉教授が三ツ星評価を下した旅館が3つもあるのだから当然か。(3)
 一方、昔から知られている伊香保(25位)は、20位近辺でのアップダウンを繰り返している。
 法師や万座は選外である。小生はここだけは行ったことがないが、便が悪いということか。

 【日光・鬼怒川・那須方面】では、鬼怒川・川冶(13位)と塩原(22位)に人気がでているようだ。
 那須・塩原は遠そうな感じがしていたが、よく考えれば、草津と時間的にはたいして変わらないから、結構気軽に行くようになってきたと言うことだろうか。
 ただ、日光湯元は低迷が続いているようだ。場所が結構曖昧な感じがするが、奥湯元はかなり寂れてしまったのは確かだから地盤沈下のイメージは否めない。だが、“行ってみたい関東の温泉ランキング”(goo)(4)では上位に入っている。何を意味しているのか、さっぱりわからぬが。

 しかし、首都圏から見れば、なんといっても本流は、【伊豆・箱根方面】だろう。道路の大渋滞や満員の列車を覚悟の上で、毎週末に沢山の人が訪れるのだから。混雑を避けたい高齢層は、平日の列車でのんびり行く方を選ぶに違いない。

 ともかく、ここは、温泉だらけ。
 北川以外のほとんどの温泉場が順位をあげている。
 熱川や観音は、昨年は番外だった。熱湯や強アルカリの魅力なのだろう。
 今20位内に入っている伊豆・箱根の温泉場も、10年前はすべて50位以下だったと思うが、ようやく人気が戻ってきたようである。
 旅館・ホテルの廃業が多かった地域でも、修善寺のように街並作りに力を入れていたり、近場の利を生かした熱海も好評のようだ。

 このことは、伊豆一帯が、団体旅行と企業の保養施設宿泊客と、ステレオタイプの家族旅行者を対象とした“観光”地から、様々な客が楽しめる地域に変わりつつあるということだろう。個人旅行への対応がようやく、実り始めたのかも知れない。
 河津町のように、“花”をウリにする動きはこうした流れに対応した典型例といえよう。
  (河津桜,バラ[河津バガテル公園].花菖蒲[かわづ花菖蒲園].カーネーション[見本園])(5)
 ただ、維持費がかかるから、下手すると破綻しかねない方策ではあるが。

温泉ランキング(1)での
伊豆・箱根の順位
15〜18位 箱根湯元
伊東
堂ヶ島
26〜39位 修善寺
熱海
55〜92位 湯河原
稲取
強羅
観音
下田
下賀茂
北川
熱川
 様々な観光協会があり、眺めると、たしかに、そんな方向を感じさせるものが多い。かつては、助成の一部を自動的に受け取る組織と揶揄されていたのだから様変わりである。
 しかし、バラバラに活動しているようだし、地元組織連絡板の発想も捨て切れないようだ。習慣はそう簡単に変えられないということだろうか。
 だいたい、未だに、ご馳走を並べる食事をウリにしている案内が目立つ。そんなものなら、東京でも食べられるが。
 おそらく、アンケートをとれば“満足したので又来たい”となるからだろうが、そんな客寄せ策が何時までも奏功するものだろうか。

 みやげ物店も表面的には大きく変わってきているが、一過性のお客さん相手という点ではなにも変わっていない。
 新製品を出し、品揃えを増やし、お洒落な店構えにしたところで、リピーター増や、長期的な売上増が期待できるとは思えないのだが。買う方は、土産モノなど、どの店でもよいという気分なのだから。
 おそらく、成功例を勉強したり、アンケート調査結果の分析に基づき頑張っているから、そうなるのだろうが、問われているのはそんなことではなく、フィロソフィーのイノベーションではないのか。
 これは、勉強すれば、できるという類のものではない。「志」の問題である。
 繁盛している旅館・ホテル・店舗は、どう見てもリピーターが支えている。小手先のニーズ対応でそんな状態が実現できると考えているとしたら大きな間違いだと思う。

 とは言え、2007年3月、稲取地区のレジャー施設が、地場の電鉄会社から、北海道のリゾート施設企業に事業が譲渡された位で、変化の波がようやく本格化してきたようだ。(6)どんな経営になるのかはわからないが、異なった感覚の経営が導入されることは間違いあるまい。
 このような動きが刺激となって、伊豆各地の温泉場がさらに変身して欲しいものだ。

 --- 参照 ---
(1) 「第21回 にっぽんの温泉100選」週刊観光経済新聞 [2007.12.15] http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/ima
(2) http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanko/mr_nakazawa.html
(3) 松田忠徳: 「温泉旅館格付ガイド」新潮社 [2006年]
(4) http://ranking.goo.ne.jp/ranking/051on/onsen_japan03/
(5) http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanko/mr_sakurai.html
(6) http://www.resort129.com/news_rel/r070307/news_letter.pdf
(温泉の写真) (C) 温泉旅ネット http://www.onsentabi.net/
(地図の下図) (C) TSUKUI Intenational Inc. “世界地図|SEKAICHIZU” http://www.sekaichizu.jp/


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