トップ頁へ>>> YOKOSO! JAPAN

2008年7月24日
「観光業を考える」の目次へ>>>
 


地域観光政策がさらなる経済低迷を引き起こす…

 長崎新幹線着工に驚いた人が多いようだが、失礼ながら、どうせそんなことだろうと思っていた。在来線も存続させ、新幹線も走らせたい体質の地域だからだ。
 そう思うのは、佐世保〜伊万里〜有田に第三セクターMR(松浦鉄道)が走っているから。素人が考えても、北松浦半島の住民の足以上のものではない路線である。人口密度から考えれば、バスでも経営が成り立つか疑問が湧くが。
(そもそも、有田に行くなら、JR佐世保駅の3つ手前の早岐駅からJRを使うのではないか。)
 にもかかわらず、わざわざJRと線路を分断し、伊万里駅も駅舎を別にしたりしたらしい。一大投資を行ってどうしようというのか。
 さらにこの路線にICカードを取り入れるという。(1)
 しかも、並行路線を運営するバス会社が、こうした一連の動きを後押ししているようだから驚き。都会のビジネスマンなら、そんなことにお金をかける位なら、違うことが色々できると考えると思う。

 ともかくできる限り大きな金額の投資をさせることが地域経済の目標のようだ。この投資の理屈をつける仕事をする人が大勢食べているのであろう。まさにお金と頭脳の無駄遣い。
 都会から見れば、こんなことを続けていれば、地域経済がますます低迷するだけと考えるが、発想が全く違うのである。
 そう思ったのは、とんでもない話を聞いたからである。事業継承を頼まれて赴任し、調べてみると、将来性ゼロ。経営者が自腹を切って、赤字事業をずっと続けて来ただけの会社だったというのである。当然、清算。ところが、今迄頑張ってきたのが、どうも美談として扱われるらしいというのだ。こんな状況では、経済低迷は当然の結果としか思えまい。

 革新的なコンセプトのハウステンボス型ビジネスが上手くいかなかったのも、この風土が足を引っぱった可能性は高い。
 興業銀行をひきこんで、長期的な産業育成を図ったまではよかったが、地域観光振興策に巻き込まれてしまえば、折角のコンセプトが台無しになるからである。
 そもそも、長崎とは遠く離れた、佐世保に作るのに、長崎オランダ村のイメージを引きずること自体、コンセプト自滅の道と言える。地域の観光産業促進を図るための施設にされてしまうからだ。
  要するに、地域観光の目玉にして、長崎、雲仙、島原、有田・伊万里、平戸と、どこだろうがかまわないから、ともかく一緒に色々回ってもらおうと宣伝することになる。ハウステンボスは、眺めて通りすぎる存在にされるわけだ。コンセプトからすれば、リピーター型滞在者や住人を増やすべきだが、全く逆で、本末転倒。しかし、地域優先だからどうにもならないのである。

 おわかりだと思うが、ハウステンボスを成功させたいなら、周辺周遊に興味を覚えない国内観光客を増やすか、知識を欠く海外顧客を呼ぶしかないのである。地域と一緒に観光振興などやらないこと。
 流行っているディズニーランドを見るがよい。余計なところを回りたい人を相手にする筈がなかろう。潮干狩りや、寺社巡り、房総周遊なととの組み合わせなどなんのメリットもない。

 この問題を、観光客側から眺めると、もっとわかり易い。
 例えば、長崎観光に、興味あるかというアンケート調査があれば、小生でも「行ってみたい」と記入する。しかし、おそらく実際に行くことはない。長崎を、のんびり滞在する場所とは見ていないからだ。行くとすれば周遊型旅行にならざるを得ないということ。しかし、そんなくたびれ旅行は御免こうむるというのが正直なところ。
 もちろん、その手の周遊型が好きな人は今でも少なくない。しかし、その市場は縮退一途。そんな市場をいつまでも大事にするのが、この地域の観光振興策ということ。ハウステンボスはそんな観光と一緒にされたのだからたまったものではない。再建したからといって、ここから脱出できないなら同じことが繰り返されるだろう。
 まあ、そんなことがわかっていても、この枠組から離れることを許さないのが、地方の政治である。

観光経済新聞社
「にっぽんの温泉100選」(2)
雲仙のランク変遷
1987-1991 2位
1992-1996 4位
1997-2001 5位
2002-2005 10位
2007 12位
 雲仙温泉の低迷の原因もここいら辺りにありそうだ。
 外から見れば、「湯」の魅力で顧客を呼ぶのではなく、地域観光の宿泊地の役割を担っているようにしか映らないからだ。要するに、どこに泊まろうと気にしない地域周遊顧客を一所懸命に増やしてきたのである。
 もし、地域など考えず、勝手にやっていれば、日本に冠たる温泉になっていた可能性があったのだが。なにせ、この地のもともとの漢字名は「温泉」。「雲仙」は後から付けた当て字だ。「本物」なのである。(3)おそらく、そんなことを知っている人はほんの一部に留まっていると思われる。
 実に、もったいない話だ。

 --- 参照 ---
(1) 「松浦鉄道 ICカード導入検討 西肥バスやJRと 相互利用視野に」 西日本新聞 [2008.6.6]
  http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/26984
(2) 前田勇: “「にっぽんの温泉100選」を通して見た人気温泉地の分析” 観光経済新聞
  http://www.kankokeizai.com/tokusyukiji/bunseki.html
  http://www.kankokeizai.com/image/top/20071215_7.pdf
(3) 雲仙の歴史 雲仙観光協会
  http://www.unzen.org/japanese/rekisi/
(地域の地図) (C) 三角形 井上恵介 →白地図、世界地図、日本地図が無料


 「観光業を考える」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2007 RandDManagement.com