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2013年6月15日
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これゾ「恋の駅」…

「恋の駅」は全国に四つしかないとの、全国キャンペーンが展開されている。これだけの情報だと、珍しくもない鉄道の集客作戦か切符販売との印象は否めまい。
でも、ちょっと違いそう。

昔、秩父や武蔵の山々によく遊びに行った覚えがあるので、西武秩父の恋ケ窪駅だけは知っているが他の駅はよくわからない。ただ、JR北海道と三陸鉄道の駅なら、さもありなんという感じだ。もう一つは、智頭急行となっている。はてさて、この場所がどこかさっぱりわからぬ。西日本では有名なのだろうか。
それにしても、目立つことをしなければ、他の駅のオマケ的存在で終始してしまいかねまい。耳目を集める知恵は不可欠だろう。

そこで、果敢な投資を敢行した模様。
と言っても、駅のお色直。だが、これが圧巻。
    "『恋』にあやかり、平成25年6月9日に、
    駅舎をピンクに塗り替えてリニューアルオープン。"
      [智頭急行公式HP 恋山形駅}
駅名表示板は巨大なハート型だし、待合室には真っ赤なハートとマスコットキャラクターの鉄道むすめ(車掌)「宮本えりお」(駅名由来の名前)の絵とくる。もちろん、絵馬掛けスペースも。リニューアルオープンを記念して「婚活列車」が走った模様。

うーむ。
写真を見ると、周囲の環境との断絶感がちょっとやそっとではない。
緑に囲まれた静かな山村の雰囲気だから、住民がさぞかし嫌がるのではないかと思ってしまうが、全く逆らしい。鉄道会社は開業に当たって『因幡山形』という駅名を考えていたそうだが、住民の強い要望で、人を呼んで来いと掛けて『恋山形』と命名した位なのだ。
そうそう、肝心な駅の場所だが、鳥取県八頭郡智頭町大内。トイレは勿論のこと、付近に自販機も無い。乗降客数は、1日平均2人。従って、「2人きりの時間を、駅を挙げて演出します」という説明に微塵も嘘はない。

と言えばおわかりのように、日本全国よくあるお馴染み3セク鉄道。だが、自治体おんぶということでなく、この先も山村地帯として生き抜くべくにはどうすべきか本気で考えた結果の取り組みのようだ。なにせ、"みどりの風が吹く疎開のまち"をスローガンに掲げているのだ。にもかかわらず、そこにピンクの駅とくる。出色。
山村地帯はどこもここも似たようなものだが、そのなかで、智頭町はここまでやるゾという決意を示したとも言える。本気でなければ、こんなことはとてもできまい。是非、頑張って欲しいもの。

一般に、日本の山村地帯の自治体は、ただただ、他所の真似施策である。国の一律施策に乗ってお茶を濁すだけ。それが一番楽だし、見返りも大きいからだ。これを止めると、生活しにくくなる仕組みが出来上がっているからどうにもならない。簡単に言えば、税金大盤振る舞いの投資と、それに係わる以後のメインテナンスで皆食べていく体制ができあがっているのである。観光産業育成もそのなかで位置づけられているだけで、実は、産業として育たないままでもどうということはない。
延々と育成投資を続けることさえできれば、それで大いに結構というか、それこそが地域安定の最善策でもある。

わかり易いのは農業。たいてい、綺麗な農産物直売場があり、安くて新鮮ということで人気ありとされる。そんな売り場で、大活躍で一等賞で表彰された方に売上げを質問してみるとよい。年50万円だったりする世界である。都会の人間にしてみれば、利益と勘違いしているのかと思うのでは。

しかし、それなら、本格的に出荷する本業は収益性抜群かといえばそんなことがある訳もない。種苗・肥料・農薬・資材といった出費と機械等の減価償却を考えると、はたして事業として成り立っているのか疑問な家業の方も少なくない。それを知ってしまうと、事情がよくわからぬ都会人は、趣味で働いていると勘違いしてしまう。これこそが地域を支える基幹産業そのものなのに。
売上げ額などどうでもよいのである。それよりは、良いモノを作ることに注力する方が重要。物々交換の仕組みが行き渡っているからだ。
しかも、この産業を支えていると、アルバイト的な労務提供の機会や、おカネを貰える様々なチャンスが、天から降ってくる。しかも、時々、土地お買い上げの幸運にも恵まれたりする。土地を手放したり、人に貸したりしなければ、毎年、この富籤が引ける仕組み。楽しいし、十分ペイする事業である。そうは言っても、肉体労働は楽ではないし、知恵なくして簡単に農作物が作れるものでもない。都会人が簡単にできるようなものではない。ただ、稲だけは別らしいが。
そんなことは、マクロで見ればすぐにわかる筈。農作物直売場開設にしても、先ずは土地買収か賃貸契約。そして、土木工事が行われ、初めて売り場が建つ。もちろん、その周囲は美麗に整備される。もちろん、すべて回収不可能な投資。あまりにカネが出て行くので閉鎖される可能性もあるが、一般に採算性なとどうでもよいのである。たとえ数年でも、地域におカネが回りさえすればそれで御の字。続行できれば言うこと無い。もしも、継続的に運営費用や掃除費用が発生し、雇用まで生まれるなら万々歳。ほとんどの場合、赤字の税金垂れ流し事業だが、それで大いに結構なのである。
こうした施策を、手をかえ品をかえ、延々と繰り返しているだけ。

これを変えていくのは並大抵のことではなかろう。地域の生活を税金バラマキで守るための強固な政治組織ができあがっているからだ。

(話題紹介サイト) 1日2人しか来ない駅のリニューアルが凄すぎる【恋山形駅】−NAVERまとめ 2013年06月07日
(地方紙記事) ピンクの駅が出現! 恋山形駅がお色直し 2013年06月04日 日本海新聞
(全国紙記事) 乗降客1日2人…鳥取の無人駅は恋愛スポットになれるか 2013年6月6日16時10分 朝日新聞
(鳥取県智頭町観光協会) http://www1.town.chizu.tottori.jp/kankou/

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