表紙 目次 | ■■■ 観光業を考える ■■■ 2014.12.19 全くの素人論。・・・ 1週間ほど前、NHKが「函館の外国人観光客最多に」と報じた。 凾館−札幌-小樽が観光定番ルートになりつつあると、大分昔に耳にしたことがあるが、ようやく拡大基調が定着したようだ。 2013年、訪日外国人旅行者数1000万人突破がニュースになった。そして、北海道は100万人超え。 ちなみに、2014年、第1四半期の北海道における外国人宿泊客は25万人で前年比28.5%増。(道内宿泊客242万人,道外宿泊客127万人,日帰り客1,099万人) 外国人の宿泊消費単価は道内客の6倍近いし、道外客より6割多いから、すでに収益上で重要な位置を占めている。 外野から眺めていると、それほどに重要なセグメントであるにもかかわらず、顧客数の増加スピードはいかにも遅く感じる。どこか問題があるのではなかろうか。 と言うのは、欧米より物価がかなり低いし、モノやサービスの質が高いから、航空運賃の低価格化を妨げる施策を取り払えば、このような低い数字で留まっている筈がなかろうと見るから。 もっとも、北海道の実話を聞けば、ここまでに至るだけでも相当な苦労があったことがわかる訳だが。 とはいえ、海外の潜在顧客数を考えれば、300〜400万人が妥当では。 昨今の上野動物園にしても、空いていそうな日をみつくろって立ち寄ってみると、遠足児童を除くと、台湾からと思しき人達が多い。もちろん、各国語入り乱れ状態。団体は皆無で、様々な年齢構成。 東京だと、訪日旅行者は地下鉄で勝手にあちらこちら巡れるから、動物園好みの人がやってくるのだろう。 しかし、北海道ではこうはいかない。行きたい場所はバラバラと点在しており、国内旅行者でも簡単にアクセスできないからである。 従って、それなりの仕掛けがないままだと、訪問客の伸びは限定的。その辺りに問題がないのか気になる。 それと、訪日外国人旅行者についても、ターゲットを絞り込む必要があるのでは。 1に、台湾、香港。 2に、タイ、マレーシア。 残りは手抜き。 1は、すでに日本よりレベルが上の生活者が多いが、日本のように国内旅行を楽しむには、国土の多様性に欠けており、海外旅行は当たり前のレジャーの筈である。定番旅行として食い込めるチャンスは高かろう。 2は、見かけは、1ほど大きな市場ではないが、高所得層にとって海外旅行はごく当たり前のレジャーであり、魅力を感じてもらえば一気に立ち上がっておかしくなかろう。後は経済発展の波で自然とビジネスが拡大という流れも期待できよう。 そして、国内旅行者獲得競争は手抜きとすべきだろう。時間とおカネがある高齢層は、海外か交通至便な近場がお好みだからだ。 国内パッケージツアー客依存の観光業に頼っていれば、将来性は暗いだけでなく、折角のチャンスを潰すことになるのでは。北海道観光振興を本気で進めるつもりなら、ここからの脱皮のための投資しかなかろう。新陳代謝策は一番嫌われるが、それを避ければどうなるかは自明。 北海道は、沖縄同様、若者にとっては十分魅力がある土地であり、それこそ宣伝などなくても、顧客が宣伝してくれる。縮んでいく市場で、大枚の競争費用を投入すれば、競合も投入せざるを得なくなるだけ。 そういう状態の時は、教科書的には、ニッチで高収益な事業化へと進むのが鉄則。知る人ぞ知る観光を狙うということ。その観点では、投網的な振興策や、若者一般を呼ぶような仕掛けはマイナス効果になりかねない。 そうそう、中国、韓国をターゲットにするのは、避けた方がよかろう。 そもそも、「中国」としてまとめること自体が余りに雑。中国で狙うべき地域は、香港隣接の沿海部。市場が大きいからといって、北京や上海を主要顧客とすると、他とは期待感が違うので焦点が定まらなくなり大損。 同じように、韓国も避けるのが無難。 中国北部や韓国の人々からみれば、北海道とは、One of themでしかない筈。有名だから、「一応」自然景観を見ておこうという姿勢と見ておいた方がよかろう。おそらく、実態としては、温泉とショッピング。コア顧客としてはどう見ても不適。 これに対して、亜熱帯地区の人達の姿勢は全く異なる。遠距離であっても、飛行機でひとっ跳びということもあり、垂涎の眼で見ている筈。緯度の違いは大きいから、異国を訪れてみたいと考える人にとっては魅力度ピカ一かも。従って、北海道はOnly Oneの可能性大。一度ならず、よければ何回でもということになろう。 こういう人達をコア顧客として取り込むことこそ、最重要課題だと思うが。 なにせ、時差ボケの心配もなく、普段食類似の食事もできる地なのだから、気楽に旅行できることが大きい。それに加え、犯罪に巻き込まれる確率が低いから安心感抜群。子供連れには嬉しい話ではないか。 これでは何を言いたいのか皆目わからないか。 要するに、北海道の海産物をウリにするようなツアーは意味が薄い時代に入っているということ。おカネを出せば、東京でもそれなりに食べれる時代である。 美味しいと感じる、「日本風」な料理を工夫する方が大事かも知れないのである。もちろん、和食ばかりに拘る必要もない訳で。それこそ、朝食に、何の変哲もないが、美味しい中華粥を出すだけで、リピーターになってくれる可能性もある。米食人なら、バンコクのオリエンタルに滞在していれば、中華粥の有難味がわかろうというもの。 重要なのは、このリピーター化が始まるための下地作り。それは、各地域の自然景観の紹介ではない。 そんなものは、たとえ黙っていても、ファンになったリピーター自身が発掘していく。 最初の切り札を揃えることが肝心。 小生は、北海道の一番の魅力である自然景観で直接訴求する観光客誘致は一番損なやり方と見ている。 それをすると、国内から安価な団体旅行者が押し寄せてくること必定。そのテーストに合わせた観光地ビジネスが立ち上がってしまう訳で、海外渡航者が訪れたくない場所になってしまう。 現在、この岐路に立っている訳だ。衰退ビジネスを続けるか、これから伸びるビジネスへ大胆に進んでいくかの二択。 後者ということなら、動きは大きく変わってくる筈では。 まず、混雑する「旭川」動物園の代替スポットが必要だと思う。そして、子連れが感激するような動物の動きが、のんびり見れる施設であることを喧伝すればよい。 人気動物としては、アシカ、ペンギン、白熊なのは自明。白熊は難しかろうが、日本はペンギン飼育王国だし、アシカ芸もお得意な国だから、様々な企画が可能では。もっとも、すでにそんな施設はあるかも知れぬ。 こうした動物の水中の動きや、地上での姿は、東南アジアの生活者にとっては是非とも見たいものであるに違いない。しかも、これらの動物には好奇心旺盛な個体もいて、ヒト好きだったりする。子供は一度見れば再び来たくなること請け合い。 大人向きに、デパート、アウトレット、菓子スーパーも不可欠な要素である。ショッピングの場が貧相では、おカネは落ちまい。 当然ながら、訪日外国人旅行者のニーズに合うように大胆にシフトする必要があろう。それは道内顧客にとっては不快かも知れぬから、言うは易しの課題である。 言うまでもなく、スポットだけではどうにもならない訳で、点を繋ぐ線の仕組みを行政のリーダーシップで構築しないとどうにもならない。 大型バスによる観光業者の団体ツアーに任せるスタイルでは発展性に乏しかろう。日本人のテーストとは違う訳で、Comfortableな交通手段を用意するのが筋では。まあ、日本の政治風土ではそれが難しかろうが、躊躇していればチャンスを潰すことになる。 そうそう、亜熱帯アジアからの旅行者ブームが始まりそうだとなれば、温泉・宿泊施設への投資は黙っていても始まるもの。起業家を呼び込めば、どこにでもある施設なろ作らないだろうし、顧客が喜びそうなエンタテインメントを組み込んだ新企画が次々よ生まれる筈である。 従って、この分野への万遍なき支援も止めた方がよかろう。特に、ローカル行政が大好きな、経営が傾きかけている企業を助ける動きは厳禁である。観光業の質の低下は、すぐに魅力度に影響するからだ。支援すべきは、フラッグシップ的な施設の質的向上と、老朽化施設の取り壊し。そして、外部からの投資大歓迎の姿勢。 まあ、そういうやり方は、政治的にはえらく難しい訳だが。 新陳代謝できるかで勝負が決まるというのが、本稿の主旨。 (記事等) 函館の外国人観光客最多に 2014年12月11日 08時18分 NHK 平成26年度第1四半期観光入込客数調査 平成26年12月 北海道経済部 観光局 北海道への外国人観光客、初の100万人超え 13年 2014/6/12 2:00 日経 「観光業を考える」−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |