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YOKOSO! JAPAN

■■■ 観光業を考える ■■■
2015.4.9

地方観光業の現実

学校春休期間の最後の土曜日。
曇ってはいるもののセーター一枚が心地よく、出歩くには申し分なき天気。と言うことで、温泉に浸かりに行った。自宅からタクシーで駅に出て、1時間半で到着。地の利があり、黙っていても繁栄しそうな観光地である。
その地で、開花時期には雑踏となる、14,000坪の梅林を訪れた。シャガと山吹が咲いているし、周囲を囲む山は、新芽の緑があふれ、ところどころに山桜が開花という状態。落ち着いた風情で、都会の生活者にとっては楽しい散歩コースである。

ところが、入口から一番奥まで歩いたが、人影皆無。ついに出会ったのは、一番奥で庭園を手入れされていた方。お昼の音楽が流れたにもかかわらずお仕事をされていた。家内との雑談を聞いていたら、池に泳いでいる無数のオタマジャクシはほとんど鳥の餌になるとか。この辺りでは、野鳥も元気なようだ。
すべての通り道は葉の一枚も落ちていないほどに掃き清められており、実に大変な仕事である。
そこまでしても、行楽客が行きたがる場所にはなっていない訳だ。次に人波が押し寄せるのは蛍の頃なのだろうか。その先は紅葉で、梅に戻るというカレンダーなのだろう。
その夜は、名物の大型花火打ち上げがあるので、宿泊客は多い筈で、昼間どこか周遊していたに違いないが、別な施設に回ったのだろう。

その花火だが、鑑賞クルーズに参加した。デッキでのんびりと見物して十分堪能したが、はたしてこの程度で採算がとれるのか心配になった。200名規模の催行企画のようだが、どう見ても乗船者は50人を切っていたようだから。

・・・これが日本における典型的な観光客誘致という気がした。

要するに、国内観光客が落とすお金を当てにしている誘致施策は、どこもこんなものではないか。人口動態から見て、パイは縮小一途なのだから、同質の競争を繰り広げれば、どうなるかはわかりきった話。
頑張ればなんとかなる時代はとっくに通りこしている。

しかし、そんな環境だからこそ、チャンスありと見るのが企業家の視点。同質の観光客誘致策に乗らず、特定顧客に絞り込んで知恵を絞れば、道はひらけると考えるのである。
花火クルーズにしても、満員御礼となる企画は有る筈だろう。正解など誰もわからないから、挑戦してみるしかないのである。
今の時代の観光業振興策とは、そんな芽というか、挑戦を鼓舞するものでなければ。

ところが、現実には、多くの地域では、「規制」によってそのような動きを封じ込めたり、成功者の足を引っ張る動きだらけと聞く。
要するに、地域振興策とは、延々と同じことを続けていて、没落しつつある企業をなんとか救おうという策が多いということ。新陳代謝阻止策なのである。もっとも、当人はそう思っていないようだが。
これでは、どうにもなるまい。

なんといっても驚きは、パイが大きい、海外からの人々の財布を当てにする気がなさそうな点。カードで外食もできないし、土産物も買えない地域がほとんど。しかも、東京に比べてコストパフォーマンスが悪いサービスだらけとくる。

そんな状態なのだから、海外からの訪問者が、東京や京都などの特定の地域観光に集中するのは当たり前だろう。
千代田区内のお花見では、海外からの渡航客が矢鱈多かったらしいが、それは当然の結果と言えよう。

東京では、渡航客は、今や、交通カードで都内全域を勝手に歩き回り始めている。(振興政策の成功例)まだまだ、難ありの、行先表示ではあるものの、好きなところに勝手に出向く旅行スタイルが実現しつつある。
そのような状況に慣れてしまえば、地方の観光地を訪れた途端に幻滅する可能性大である。

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