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YOKOSO! JAPAN

■■■ 観光業を考える ■■■
2015.7.14

東京の文化的魅力度向上を急がないと

丁度一年前、2014年7月14日に、エッフェル塔前のシャン・ド・マルス公園で野外コンサートが開催された。どこまで数字が本当か疑問を感じたが、膨大な観客数を公言していた。
出演は、ダニエレ・ガッティ指揮のフランス国立管弦楽団+フランス放送合唱団に有名なオペラ歌手達。

相当前のことだが、これをBS11で視聴。たまたま気付いて。

見るまでは、どうせ仏蘭西のやることだから、オッフェンバックの作品にタイスとベルリオーズが並ぶのだろうと思っていた。ところが大分違うのである。アンドレア・シェニエならわかるが、ドニゼッティ、プッチーニ、ワーグナーとくる。
ただ、予想したような展開がなかった訳ではない。
歌手には、当然のナタリーデッセイ。しかも夫妻デュエットの「シェルブールの雨傘」で、いかにも感を与える。欧州の戦乱はもうご免というコンサートのノリなのである。そして、ナポレオン進撃の「1812年」と〆の「ラ・マルセイエーズ」の前奏曲としての役割も兼ねていた訳で。

なんともビックリは、「威風堂々」が演奏されたこと。これではプリムスと間違ってしまうではないか。対立はそのうち戦乱だゼ。英国よ、EUに留まれ!とのメッセージが込められているのかも。

もっとも一番驚かされたのはネトレプト。映像では、誰だかわからなかった。スラブ系の女性の変身は凄すぎ。

どうあれ、色々と記憶に残っているということは、質が高い、素晴らしい催し物だったことを意味する。流石パリとなる訳だ。
2015年は夜からの通常コンサート型らしい。
その代わりということではなさそうだが、土曜の深夜、パリ北駅を巨大クラブにするという。なんとも、果敢な取り組み。

このようなパリの真似をする必要はないが、東京も、文化的な催し物にもっと力を入れる必要がありそう。民間が自由に力を発揮できるような施策を考案して欲しいもの。簡単ではないが。

東京には、一枚岩的な文化に背を向ける、多種多様な人が集まっている。これからの時代を切り拓くタネは豊富と見てよいだろう。世界に冠たる文化の発信拠点となれる力があるということ。それが現実化し始めれば、そんな文化都市に惹かれてやってくる人は激増する筈だ。

その方向に進むには、文化に関心がある観光客を世界中から東京に集め、ファンをつくっていく必要があろう。

しかし、それは易しいものではない。
例えば、動植物園・美術館・博物館は集客力がある筈だが、それらを活用するのはことのほか難しい。公共施設側は観光スポットではなく教育施設として動いていたりするし、別途、民間施設もあるが、海外客を狙っているとは限らない。
そのような施設でなくても、八芳園の庭園の盆栽など絶大な集客力がありそうに思うが、観光客に大挙しておしかけられたりすれば厄介である。盆栽展示業ではないから即自非公開化になりかねまい。

施設には色々なタイプがあるので、総論的にタネは色々ありますでは、その力を活用することはできないのである。ところが、官庁はそのような個別対応に簡単には踏み切れない。すべてを分け隔てなく扱わざるを得ないからだ。
そんなこともあるので、官庁色が強い案内の類は、観光客にとってはえらくわかりにくいものになる。下手すると、迷惑以外のなにものでもない、単純なリスト情報が提供されたりする。
まあ、それだけですめばまだしも。官庁は、地場の議員を通じた、地域要求に応えることも大きな仕事。こちらになると、必ずしも観光にプラスになる取り組みになっているは限らない。
・・・官庁の仕組みとは本来的にこういうもの。そこをいかに上手く動かせるかが首長の手腕。もちろん、まかせっきりでは力の発揮しようがないと思われるが。

例えば、下町観光といった曖昧な訴求の政策が昔から繰り返されてきた。グローバル型観光を目指すなら、これははなはだ疑問の施策である。
何故かと言えば、そこは、英語で言うところのDowntownとは似ても似つかない場所だから。
つまり、地域での魅力が本当に存在しているのかよくわからないということ。人気を生むのはあくまでもそのなかのスポットだけかも。珍しい工芸品の製作者や、相撲部屋で稽古中の力士といった、プロが活躍している姿を見るのは楽しいからである。東京の場合、こうしたスポットは、その周囲の環境とはなんの関係もなかろう。それを地域の風土と解説しても、訪れる方にしてみれば不可思議感しか湧くまい。わかり易く言えば、街として関心を集めるのは、お店が小奇麗に並ぶ「お江戸の情緒」ではなく、調理用具ならなんでも揃う河童橋商店街の方ということ。

町並としての魅力というなら、人気を呼ぶのは、表参道だろう。買い物便利というだけのデパート的無味乾燥な建物が無く、色々と凝った造りの個性的な建物が並ぶからだ。いかにも散策向きであり、歩きたくなろう。渋谷駅前のスクランブル交差点交差点視察も外せない場所だし、キャットストリートも人気が出ておかしくないから、それらを繋ぐというのはあるだろう。

そんなことを考えると、東京の寺社や庭園施設を観光「名所」化する取組は考えモノ。散策に向いているか疑問だからだ。従って、それは京都や奈良にまかせた方がよさげ。
もちろん、例外はある。深い森と太い鳥居がある明治神宮、各種庭園の寄せ集めではあるが、植物園的雰囲気濃厚な新宿御苑、皇居とのつながりを感じさせる東御苑、この3ヶ所が東京の魅力的な場所であるのは間違いなかろう。そこを訪れるのが嬉しくなるようなファンを増やす必要があろう。

そして、飲食の魅力ももっとわかり易い形でアピールすべきだと思う。
日本はもともと食材豊富な国であり、それらが新鮮なうちに、各地から東京に集まってくることを理解してもらうことが重要では。さらには、輸入モノ調達も世界に冠たるものがある。東京の品揃えが一番とのジャンルは少なくないそうだから。
当然ながら、世界各国料理のレストランも揃っているし、質も高い。
これほど魅力的な都会はそうそうあるまい。しかし、それが知られているかと言えばはなはだ疑問。
まあ、ここもPR活動は結構難しいのである。新陳代謝は激しいし、一過性の大混雑はかなわぬと考える店も少なくないからだ。
そこを突破する知恵が必要といえよう。

そんなことを思うのは、世界は、今や都市間の熾烈な競争に突入しているからだ。そんな状況で、新陳代謝絶対拒絶の地方と一緒になって動いていたら、早晩、沈没間違いなしである。
ロンドン、パリ、N.Y.、はたまた中国の大都市やS.P.とも、トータルな魅力度で戦っていることを忘れるべきでなかろう。日本経済の低迷で、すでにアジアのビジネス拠点としては地位は低下しているが、今迄の蓄積があるからかろうじて踏みとどまっている状態であると見た方がよかろう。
そんな状況だとしたら、的確な文化的アピールを精力的に繰り広げないと。
All Japan的な曖昧なコンセプトを避け、都市東京としての文化的魅力を磨き抜くしかない。

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