■■■■■ 2010.11.22 ■■■■■

 The optimistic doomsayerに期待が集まる時代

 “The World's Most Powerful People 2010”が発表になった。 Forbes
 どうということもないリストだが、インド(Reliance, ArcelorMittal, Tata)やブラジル(EBX)の経営者が入っているのが時代を感じさせる。日本の経営者はソフトバンクの孫社長だけ。
 Osama bin Ladenはわかるが、ギャング団やドラッグ組織の親分も入っているのには驚かされる。まあ、オリンピック組織委やサッカーのFIFAの長も入れるなら、そんなところか。
 多少気になったのは、Warren Buffettは入っているのだが、George Sorosが入っていないこと。影響力は薄れたということなのだろうか。
 随分昔のことだが、世界を変えた25人の大富豪に入っていたからにすぎないが。  (2004.12.7)

 これを見ると、結局のところ、金融・財政政策の枠組みはGoldman Sachs、JPMorgan Chase、BlackRock、PIMCO辺りの意見を入れて、B. Bernanke、T. Geithner、L. Summers辺りの談合で決まるということか。対立意見を述べるエコノミストもいるが、彼等の力は圧倒的なようである。
 尚、Nouriel Roubini選“Powerful economists”は以下。 Forbes [2010.11.03]
  ・・・B. Bernanke, L. Summers, J. Sachs, P. Krugman, R. Rajan, K. Rogoff

 この人選面白い。受賞作「Fault Lines」の著者R. Rajanを後押ししているように映るからだ。こうしたエコノミストの考え方を取り入れないと、又、悲劇の繰り返しだとでも言いたげ。確かに、投機マネーで収益を上げるウオールストリートと政府機関が蜜月状態だと、経済は上手く回るが、バブル化は避けがたい。経験則としては、だいたい3年毎にくるということ。(1990年の銀行危機、メキシコデフォルト、アジア金融危機、LTCM破綻、Nasdaq 株価暴落、・・・)
 実際、非ウオールストリート人材を起用すべしという主張も広がりつつあるのかも知れない。
   C. FERGUSON: “Thinking Outside the Borders” Foreign Policy [NOVEMBER 3, 2010] 
 ただ主張は単純。金融危機を招いたエコノミストを外し、金融危機を警告した非伝統的なエコノミストを起用せよということ。候補として5名があがっている。Raghuram Rajan[インド出身]、Simon Johnson[オーストラリア出身]、Nouriel Roubini[イラン出身・イタリア育ち]、George Soros[ハンガリア亡命者・英国]、Charles Morris[米国出身だがアウトサイダー]
 なるほどね。

 しかし、そんなのんびり構えていてよいものなのかな。米国、欧州、日本のすべてて国債バブルが発生しており、どこで弾けてもおかしくない状態なのでは。

 米国は日本を真似て、Bernankeのドルジャブジャブ作戦を開始した。そんなことをすれば、財政赤字の規模が巨大だから、長期国債の利回りが上昇し(価格下落)、インフレ化とドル下落の可能性大である。たとえ、上手くインフレ率をコントロールできたところで、企業は国内投資を避け続けるだろうから、オバマ政権が気にする雇用を増やすことにはつながるまい。結局のところ、余ったマネーは新興国にどっと流れるだけ。対象とされた国はバブル化阻止に資本規制したいところだが、FTAを締結していたりすると禁止条項でできない。弱い環が切れれば、又、大騒動だろう。

 日本も懲りずにゼロ金利。いくらマネーを流したところで経済など好転する訳がない。為替に多少影響が出るだけ。もともと金融政策でなんとかなる問題ではないのだ。それを無理するのだから、もう禁じ手だろうがなんでもあり寸前。だいたい、まともな企業は投資先が無いので、余剰資金がうなっている。資金需要があるのは、実質債務超過とか、赤字でふらついている企業ではないか。
 こんな市場で、銀行の法人セクターがまともな利益を出せるのか大いなる疑問。どう考えたところで、金融機関は資本市場でお金を回すしかないが、ここは金利差でなにもしなくても利益が稼げる状態。収益激増でウハウハ状態だと思うが、金融機関としての将来性を失ったということでもある。不健全なことこの上ない。名目上低リスク経営になるから踏み切る訳だが、長期的には国債バブルに乗った超ハイリスク路線に迷い込んでいることになる。とわかっていても、他に取る道もないのだ。

 そして、なにより気がかりなのは、貯蓄層の高齢化。この先貯蓄を崩していくしかないからだ。経常収支が黒字でも、この先、家計の貯蓄率はプラスにはなるまい。企業にお金が 貯まる訳だが、それは投資資金でしかない。早晩海外に回される。そうでもしなければ企業はジリ貧になってしまう。つまり、どう見たところで、国債消化は滞るのである。その兆候が見えた瞬間、投機筋が一斉に国債を売ることになる。国債バブルは一瞬にして弾ける。恐ろしいことである。

 一方、欧州は相変わらずの酷さ。
 そもそも、各国の銀行が持っている不良債権額を簡単に補足できないのだから、手の打ちようがない。日本のかつての先送りと同じ手口が仕組みに組み込まれているようなもの。従って、結局、同じ轍を踏むしかあるまい。特に、小国の場合は、銀行を助けるだけの資金が無く、銀行に保証でもしていれば国が連鎖倒産の憂き目。国債デフォルトは貸し手である欧州中の銀行に強烈な一撃を与えるから、金融業務は一瞬にして麻痺するだろう。問題がありそうな金融機関の内情は開示情報では計り知れないものがあり、国債デフォルトの噂は日常茶飯事。パニックはいつどこから発生してもおかしくないのである。ユーロ圏解体は時間の問題かも知れない。

 この状態では、“The optimistic doomsayer”の登壇を期待する人が増えて当然だろう。

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