総務省の「光の道」構想の最終報告内容が決まったそうである。
・NTTの光回線事業は分離しない。・・・国策アクセス回線会社は作らない。
・NTTは光回線基本料金の値下げを進める。・・・貸出光回線費用を値下げする。
・競争条件の公平化を進める。・・・NTTは機能別組織に改組する。
ソフトバンク構想は否定したが、上記の方針で進め、2015年を目途に各家庭に光回線を普及させたいらしい。ソフトバンク試案は銅線電話網廃棄だが、それも止めということか。ISDN交換機の廃棄時期が迫っているから、銅線電話網への投資もさせようとの算段でなければよいが。
まあ、どちらにしてもハコもの作り路線だから、たいした違いはないが。
IT革命とは、すべてをIPプロトコルに乗せることで、それはこうしたインフラの話ではない。
今後の通信の展望を語るなら、電話、FAX、ISDN、といったIP非適合の古典的通信をどうするつもりか、はっきりさせる必要がある。しかし、そんな話を避け、なにはともあれ、ハコもの作りなのである。一時代前の政策に未だご執心な訳だ。こまったものである。
だいたい、インフラの議論をしたいなら、固定と無線をどう位置づけるかを決める必要があろう。
技術進歩のお蔭で、無線ブロードバンド接続もごく当たり前のものになっており、2005年から値下げしないままの光ファイバー通信価格とたいして変わらない状況。都会では、こちらの方が光ファイバーより余程使い勝手がよい。固定網を家庭に引き込む理由は考えにくいのが現実。
こうした議論をしないから、日本は飛躍のチャンスを逃してしまうのではないか。これも、こまったもの。
もしも、携帯電話黎明期の頃に、“有線から無線へ”とのビジョンがあったなら、ほとんど使われていないISDN網を使い、“つなぎ”技術を利用し、いち早く無線通信基盤を整えることもできた筈。大規模事業者の宅内電話が、ほとんどがPHSになってもおかしくなかったのである。これだけで、生産性は急上昇したかも。さらに、世界に先駆け、企業内32K無線インターネット網も構築していた可能性も。
しかし、産業界は、中途半端な技術でも、膨大な投資が必要な携帯電話インフラ作りに邁進させたかった訳だ。そのお蔭で、携帯電話王国が生まれたのだが、賞賛すべきか、はなはだ疑問。
光の道もチャンスを潰す方向に進まなければよいが。
今、無線インターネット市場が開けつつあるからだ。普及すれば企業の生産性を高めることは間違いないし、様々な利用開発が進む。
にもかかわらす、固定光ファイバー網の普及を急げというドグマで動く。無線より、有線を先に、という話になるのだ。
こうなってしまえば黄昏光の道を歩みかねまい。