■■■■■ 2011.1.26 ■■■■■

 外交とは冷徹なもの

 Wikileaksによる米国外交文書曝露の影響は小さなものではなかった。曝露が結構気軽にできることがわかってしまい、曝露のバリアが低くなったからだ。
 そう感じさせたのが、中東のBBCこと、アルジャジーラによるパレスチナ外交文書報道。もちろん本物。

 内容は、東エルサレムへの入植地のイスラエル併合を承認するとの話。なんら驚くようなものではない。
 日本で言えば、"米軍核持込容認"、"尖閣諸島の領土問題棚上"、"戦争賠償金代替としての中国へのODA"、のような類の交渉と同じ。他に手がなければ、互いに適当に誤魔化すしかない。パレスチナ政府の場合は、交渉に当たって、なんのカードも無いのだから、そもそも「譲歩」するという立場にはない。混乱を抑えながら、イスラエルの要求に少しづつ従っていく道しか残っていないのが実情。
 この公表で政治的混乱必至との話もあるが、現実を追認する意味では悪くない方法である。どうせ、いつか、やらねばならないことだからだ。「東エルサレムをパレスチナ国家の首都へ」という空虚なスローガンを終わらせ、実践性ゼロのアラファト流大衆扇動路線から決別しない限り、パレスチナ政府はイスラエルに軍事的に潰されるしかないのである。
 従って、危機意識を持った政府内部の若手がリークしたと考えるのが一番自然である。
 もっとも、すでに和平交渉が頓挫しており、それ以外に役割が無いパレスチナ政府の存在価値がなくなってしまったから、時すでに遅しでは。

 イスラエルはすでに不安定な政治状況に突入しており、パレスチナ政府との和平交渉は時間の無駄という姿勢を打ち出し、軍事独裁型路線に進むことになろう。東エルサレム併合と、ヨルダン川西岸地区の軍事支配に進む可能性は高い。反イスラエル色が鮮明な住民の隣国への強制移住まで進むかも。
 それを防ぐ手立てはなさそうだ。本気になって、この動きを止める国は見当たらないからだ。
 要するに、パレスチナ政府はいつ見捨てられてもおかしくない状態にあるということ。

 ともかく、他国にとっては、パレスチナ問題が中東大戦争の火種にならないようにすることが最優先課題。中東の状況は危険な状態にあり、自分の身に問題がふりかかってこられたのではたまったものではない。パレスチナ政府消滅で、大戦争を防げるなら皆その方向に進むだろう。
 外交とは冷徹そのもの。

 なにせ、状況が悪すぎる。
 なんといっても、8,000万人を擁す大国エジプトが混乱防止役になれないことが大きい。内政自体が不透明な状況にあり、外交に注力できる状況にはなさそう。スエズ運河とアカバ湾の安全航行担保には不可欠な親米軍事独裁政権だが、今や安泰とも言えない状況。
 もう一つの問題はイランの動き。イスラエル殲滅宣言まで行い、地域での影響力強化を図ってきた。もともと、反イスラエル性向があった国ではないから、親米政権の反政府武装勢力を支援するための方便だろう。このお蔭で地域全体が急速に不安定化していく。
 さらに厄介なのが、スーダンの南北分裂容認。これはすぐに、イエメンの南北分裂に繋がるし、イラクのバスク独立も活発化していくだろう。新国家誕生で、エジプト・スーダン間の水協定が破棄でもされれば、戦乱勃発かも。
 もうパレスチナ政府の存続などどうでもよいという気になっておかしくない。

 うーむ。考えてみれば、まさに、他山の石。
 東アジアにしても、同じようなものだからだ。

 米中首脳会談は、この地域をどうするか決める場だった筈。なにも発表されないから、進展無しなのではなく、その逆だろう。両国にとって、北朝鮮、韓国、日本、台湾など将棋の駒にすぎまい。外交とはそういうもの。

 北朝鮮の会談直後の動きから見て、米中で、なんらかの取り決めがあったのは間違いない。金王朝の支配体制維持では同意がついたということのようだ。換言すれば、韓国によると半島統一は将来的にも無しとされたということ。どうせ、米国は東アジアで戦争はできまいとの判断で中国政府が臨んだ結果かも。

 まあ、素人の勝手な見方。残念ながら、日本では、こうした手の議論がなされないから致し方ない。当たり障りのない事実関係を並べ、「注目される」とか、「目が離せない」というお話だらけで、こまったもの。
 繰り返すが、外交とは冷徹なもの。
 ボーとしていれば、何をされるかわかったものではない。

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