■■■■■ 2011.2.1 ■■■■■

 大熊猫外交はソフトパワー化に成功した模様。

 GoogleでLi Keqiang(李克)でニュース検索したが1ヶ月で1,000件未満。意外に少ない。中国のメディア戦略はなかなかお上手ということでは。
 次期首相と目される第一副首相が欧州を訪問したのだから、かなりあっておかしくないのだが。米中首脳会談で話題もちきりの状況を利用したということか。

 この人物、日本では、小沢一郎邸宅に居候していたことでよく知られる。まあ、そんなことが平然とできる珍しい政治家である。
 よくあるメモの棒読み的官僚タイプとは真逆。当意即妙な受け答えができる上、冗談もとばすといわれており、リラックスした話し方が欧州では好評だった模様。メディアの取り上げ方からすると、魅力的な政治家とみなされたようだ。
 「鉄砲が政権をつくる」主義を貫く人民解放軍は習軍事委員会副主席の担当で、自分の担当は民生といった調子で上手に立ち回っているのかも。

 クリントン外交は中東で大失敗をやらかしているようだが、李外交は欧州で上首尾で進んだようである。千年の歴史を誇るパンダ外交に頼るだけでなく、オバマ政権以上のソフトパワーを発揮しつつあるようだ。

 なにせ、これから本気で、欧州に大規模な投資を敢行するらしい。これで、保護主義的政策を防止し、軍事技術を含め、ハイテク導入も進める方向に転換させようということか。
 それに、米国債より、欧州債の方がリターンは圧倒的に良い訳だから、欧州圏がこの先安定するなら算盤勘定でも悪くない話でもある。

 こうした外交を眺めていると、米中の基本的スタンスの違いが浮き彫りになってくる。

 米国は、プラグマティストと言えども、問題はどうにかして解決しなければという意志を秘めている。ただ、現実の利害と副作用を考慮して動くから、どうしてもいい加減なことこの上ない姿勢を示すことになる。しかも、必ず、軍事をちらつかせる。
 したがって、米国とお付き合いする場合は、そうした訳のわからぬ動きに出かねないことを前提に、大損させられないよう、いつも用心しておく必要がある。
 これに対して、中国の体質は米国と正反対。解決できない問題は、言葉には出さないが、放置を決め込んでいる。その上で実利的に動く。これは、共産党政権でなくても同じことでは。
 両者のこうした体質を理解しない外交は危険である。米中首脳会談にしても、この体質の違いからくる齟齬がありそう。そのうち、それが表面化するだろうから、実に厄介千万。

 ある意味では、冷戦の米ソ会談の方がよほど意思一致していたのである。両者は対立していたが、大戦乱を防ぐため、できるだけ現状世界の維持を図るという点では完璧に考え方を共有していた。
 現在の状況はそれから程遠い状態。なんとなく両者の利害が一致していそうなところを確認し、後は玉虫色ですまし、とりあえず走っていこうというようなもの。これでは、両国関係悪化を招きかねまい。そうなったりしたら破滅的。なにせ、核戦争リスクさえ高まっているのだから、こまったものである。

[参考]
   「則天武后はその即位の年に日本の天武天皇につがいのパンダ2頭と毛皮70枚を贈った。」
   "中国の「パンダ外交」" 北京週報日本語版 [2009年12月28日]
   http://japanese.beijingreview.com.cn/yzds/txt/2009-12/16/content_236967.htm

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