前原外相の辞任の報には驚いた。
間違えてはこまるが、辞任したことではなく、報道内容の方である。一番的確な指摘だと感じさせたのが日本のメディアではなく、Financial TimesのEditorialだった。("Japan resigned to political drift" [March 7 2011])
民主党政権の特徴を言い当てている。
・薄い人材層での頻繁交代。---総理は2人目、財務相と外相は3人目。
・官僚依存が益々深化。---公約は政治家主導と官僚数の削減。
・外交政策漂流中。---米中日三角関係への移行は大失敗。
アラブの国々の知的な層は、BBCとアルジャジーラの報道を重視するというが、日本も同じような状況になりつつあるのかも。
新任者に関する報道も実にわかり易い。どのような姿勢の政治家かよくわかる。(Mure Dickie(Tokyo): "Japan appoints new foreign minister" [March 9 2011]) そもそも、記事のスタンスが違うような気もする。伝えたいことが全く異なるということかも。
英語なので、読むのは多少面倒だが、断片的で、恣意的な感想を混ぜ込んだりする日本の報道を数多く読むよりずっとまし。
もっとも、些細な原因での辞任であり、今までの内閣が見せてきた強硬な姿勢と180度違うから、腑に落ちぬとの指摘が無い点はもの足りないが。もっとも、日本の主流派メディアの姿勢も同じである。
週刊文春[3月17日号]の中吊り広告に"前原が何より恐れた「刑事告発」 外国人献金どころじゃない" とあるから、ここら辺りが問題では、というのが大方の感覚だろう。だからといって、わざわざ読む気もしない。
政局話で盛り上げるのはメディア商売で致し方ないとしても、経済分野ぐらいはもう少しなんとかならないものか。日本のメディアには、素人が見てもおかしな自称経済学者が登場するからだ。もともと経済学が信用されていない風土ということもあるが、これにはこまったもの。矛盾した、訳のわからぬ解説だけはご勘弁である。
例えば、以下の2つをざっと眺めるだけでも、通貨の世界がどう流れているか、なんとなくわかる。実務家が聞きたいと思っている、こうした学者の言葉を伝えるぐらいできそうなものだと思うが。
> B. Eichengreen: "How to prevent a currency war" PJ Syndicate 2010-10-12
> Interview With US Economist Eichengreen
'Europe's Banks Are in Far Greater Danger Than People Realize' SPIEGEL 03/02/2011
なんでこんなことが気になるか、おわかりにならなかったらどうかしている。
アラブでの大騒動勃発にもかかわらず、今迄とは違い、有事の米ドル逃避パターンが見られなかったからだ。ついに、ドル機軸崩壊の開始か。
産油国が米ドルを他通貨にシフトする姿勢を打ち出し、米国が中東へ軍事関与をせざるを得ない状況へと追い込まれているのでなければよいが。リビアを早く安定させないと、カダフィ政権が抱えていた大量のアフリカ難民の流入もありえるから、欧州も一緒になって仕掛けたりしかねず怖い。そんな羽目に陥れば、中東大戦争への道をまっしぐら。そうなったら、日本経済は半年で壊滅する。
そうでないとしても、オバマ政権は大統領選挙に向け、厄介な施策はすべて先送りしているから米ドルへの信頼感は薄れる一方。しかも、選挙までは、金融緩和を続けるしかないから、その副作用は小さなものではない。欧州は利上げしかねず、その齟齬も表面化してくる。
と言って、ユーロが危険な状態を脱した訳でもないのだ。
この先、一体、何がおこるのだろうか。
それを考えたいのだが、日本のメディアではどうにも。海外メディアに頼るしかないのが現実。