■■■■■ 2011.5.6 ■■■■■

 失敗学の講演を思い出す人も多かろう。

企業の開発や生産現場で活躍している方なら、畑村洋太郎教授が提唱してきた「失敗学」を知らない人は少ないのでは。企画部門や戦略立案部門の人達だと、講演を聴いた人も多そう。
世の中失敗だらけだが、未然に防げるものばかりという内容のお話だが、実例を見せ付けられると心に染みるもの。
しかし、それがわかったからといって、実は、どうにもならないこともある。

講演に参加した人なら、そんな例として、印象的なスライドを今もって覚えている筈。「これ以下には家を建てるな」という石碑と、そのずっと下の方に家並みが続く写真だ。
その瞬間、会場にかすかな溜息がもれる。

コレ、ずいぶん昔の話である。

当たり前だが、「想定外」の事故などないのである。
要は、リーダーがそれに対処するか否かというだけのこと。事故の結果が悲惨か否かは、一重にここにかかっているのである。

畑村教授の講演で小生が今でも鮮明覚えているシーンは、企業の中堅マネージャーがあえて行った質問。・・・ボトムアップでもなんとかならないかたずねたのである。聴衆は皆その答えはわかっていたが、それと同時に、皆、質問してみたいものだと思っていたに違いなく、まさに代表者として立ち上がったのである。思った通り、即座に簡素なお答え。確か、「人事権を持つトップの姿勢が変わらない限り何も変わらない」だったと記憶する。
そして、会場は静まりかえり、質問は途切れてしまった。
そりゃそうである。聴衆にトップなどいないからである。

津波だけではない。
福島原発事故にしても、「想定内」である。

原子力発電の原理がわかっているなら、素人でも、緊急冷却装置が不全になればどうなるかなど自明。そんな事故が発生したら、なにをすべきかも、はっきりしている。当然ながら、リーダーがすぐに対応するかで、結果が大きくかわるだけの話。
ボトムアップでいかに頑張ろうと、政治のトップが不適人材である限りどうにもならないのだ。

それは、現政権だけの話ではない。
福島原発の場合、地震が発生すれば送電鉄塔が倒れて送電不通となることは予想されていた。そして、津波に襲われれば、緊急発電装置が壊れる可能性も指摘されていたのである。なにせ、国会質問でも取り上げられたのだから。
ただ、視野の狭い政治家が、"狼がきたぞ"の反原発運動家発言と見なし、危険な状態を放置し続けた訳である。
リーダーにいかに人気があろうと、大局観が無い人だから、こうなるのである。
くり返すが、こればかりはどうにもならない。


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