結論から。---常識で考えれば、現行のメガソーラーは技術的に筋が悪すぎる。短期的視点でも、長期的視点でも。
1. 発電量当たりの設備投資コストは結構大きい。
蒸気/ガスタービンや水力タービンはこなれた技術である上に、産業として確立しているため、大型発電所は単位発電量当たりで見ると、低廉な設備投資で済む。
熱エネルギー源としての、原子力や火力についても、同じことがいえる。政治的バラマキの出費を除くと、純設備投資額は極めて少額である。
一方、シリコンベースの太陽電池は特殊な電子部品であり、どうしてもソーラー発電は高額な設備になってしまう。しかも、他のシリコンベースの半導体電子部品と原理は同じでも、共通した要求仕様は無いと考えるべきもの。従って、どのような作り方をするにしても、シナジー効果によるコスト低減は望み薄である。
又、大発電所とは単にパネル面積が広いというだけであり、大規模化による効率向上でのコスト削減効果もほとんど期待できない。そのため、設備投資額は結構嵩む。
・・・超廉価な有機フィルム太陽電池が実用的レベルに達しない限り、メガソーラーの設備投資額が競争力を持つレベルに達することはないと思われる。
2. 送電不安定化の問題を発生させやすい。
消費地から遠く離れた場所からの送電はロスが大きいだけでなく、天候で発電量が突然変わるため、電力網制御システム側の負担が大きくなる。電力系統運営のための仕組みはそう簡単なものではない。(巨大蓄電池を設置しないなら、メガソーラー地域の天候変動で、既存の発電所がON-OFFを強いられるということ。)
電力不足対応なら、大規模送電網を用いない消費地でのコジェネ(湯+電気)を推進するのが一番まともな発想である。
・・・既設の電力設備(発電所や変電所)にソーラー発電所を併設する方法ならよいが、遠隔地でソーラーのみの大発電所という仕組みはお勧めしがたい。
3. 稼働率が極めて低いので、管理コストが嵩む。
日照無しの時間は極めて長い。しかし、大発電所となると、電力網不全化を防ぐためにそれなりの管理システムが不可欠となる。そのため、稼動時間の割りには管理コストが高くなる。
・・・消費地での小規模ソーラーは、日照時のエアコン運転用電力にそのまま回せるので、既存発電所に要求される夏季のピーク時の電力フル供給を抑制することができる。個別発電としては高コストでも、トータルでみれば意味ある方策となりうる。
4. 大面積の大型発電所にするとメインテナンス費用も高額となる。
ソリッドステートではあるが、故障不具合は確率的に発生する。又、気候条件によるが、表面汚れも発生し、これは発電効率に大きく影響する。他の発電システムよりメインテナンスが簡単になる訳ではない。小規模だと見えにくいコストが表面化する。
・・・宇宙発電なら天候問題は発生しない。要素技術は揃っているが、劣化現象の情報が少ないので、実用性のほどはよくわからず。原子力と違って、軍事技術が先鞭をつける体制をとらなかったので、未だ概念的範疇。
5. 揚水発電所に余剰電力を回す仕組みが機能しなくなる。
夏季の大需要時期に最大発電量を発揮するため、その発電量をあてにした運営をしてしまうと、夜間の余剰電力量が大幅に減少することになる。電力供給の安定性が落ちるということ。
・・・安定性確保には末端電力消費地点に蓄電池を設置する仕組みが必要となろう。