■■■■■ 2011.9.13 ■■■■■

 野田内閣の人事は反面教師として学ぶ価値あり

野田首相と小沢前代表は「あまり話をしたことがない」状況だったという。そこで、代表選の数日前にホテルで30〜40分間の会合がもたれたそうだ。「気持ち良く話せてよかった」との小沢談が伝わっている。
これには唖然。本当にこのレベルのコミュニケーションしか無かったとしたら、組織一丸となって動くどころの話ではなかろう。
大臣にしても、内閣の方針に関係なく、個人の想いを勝手に表明するのは当然の権利と考えているようで、チームで動く感覚は皆無なのかも。

もともと小選挙区対策ということで、思想的にもバラバラな議員が寄せ集まっただけの政党である。従って、綱領も作りようがない状態。在る程度は致し方ないとはいえ、ここまでまとまりがない組織とは思わなかった。そんな組織が国を動かしている訳だから恐ろしい話。
だか、よく考えてみれば、もっと恐ろしいのは、この民主党的組織状況を例外事象と見なせる根拠がない点。日本の組織はすべて同じようなものかも知れないのである。

実際、辞任した経済産業大臣のようなお方は、企業内では結構見かける。
いかにも古臭い事業部の現場体質の組織文化でずっと育ってきたにもかかわらず、突然にして枢要な役員に任命されたりする例は少なくない。皆、なんであの人をと語るが、組織の事情から。
感覚がズレている可能性が高いから、スタッフにまかせてお神輿の上に乗っているだけにして、ピント外れなことをしてくれなければよいがと、影では誰もが語っていたりする。しかし、狭い社会でしか生きてこなかったから、本人はそんなことは全く気付かず、満面の笑み。拝命し、本気で真面目に頑張る所存。周囲には不安感が満ち溢れる。

もっとも、技術系は結構覚めた人が多いから、事情をわかっている場合がほとんど。技術統括総責任者が、経営はズブの素人とおおっぴらに語ったりする。そりゃそうである。付け焼刃的な経営者教育だけしか受けていないのだから。しかし、代替人材もいないというのが、お家の事情でもある。
エンジニアや研究者としてピカ一とか、大型プロジェクト運営で圧倒的な力量を発揮されたから、この人にまかすしかないかという人事ということのようだ。従って、本人が認めるように、戦略的な発想ができる人材ではなさそう。だが、本人もそう見られていると自覚しているから、意見を色々聴いて、論理を鵜呑みにせず、的確な判断ができるように努めることになる。お陰で、有能なスタッフが育ったりする。それはそれで、結果は上々だったりする。
だが、民主党の状況を見ると、日本企業のそんな組織文化も風前の灯火と化しているのではないか。

バラバラ組織化が進んでいないか、一度点検しておく必要があるのではなかろうか。特に技術分野。
と言うのは、今の時代、マネジメントの肝は、手法を駆使したより高度なアドミニストレーションの実現ではなく、リーダーシップ発揮の構造を作ることだからだ。にもかかわらず、前者の「マネジメント」教育だらけが実情。
確かに、前者は学べばそれなりに力は付く。ただ、どの企業も同じように注力しており、そこから生まれる差異など僅かなもの。それに、組織運営の仕組みを整備し、周到に政策を作り、その実現のためのポイントを示し、関係者一同が決意表明したところで、ベクトルが合うとは限らないのである。ここを忘れるとえらいことになる。
リーダーシップが発揮できないのに、管理能力だ磨けば、皆、リスクをとらず当たり前のことしかせず、自分の任務以外には手も口も出さなくなる。こうなると、長期低迷路線に迷い込む可能性は極めて高い。
まともな欧米企業では、個人の資質を生かすために、後者に徹底的に注力しているが、それと比べると好対照。
知的生産活動の合理化を進めることで生産性向上を図ろうとしている訳で、グローバル企業にとっては、少数精鋭化は必至。そのためには欠かせない施策でもあるから力の入れ方が違う。成果が乏しい部下を一人でも抱えたりすれば、部下の能力を組織的に活かせない無能な管理者と見なされる時代。チームワークを実現するために皆必死にコミュニケーション方法を工夫し、人材管理に奮闘しているのである。

そんな実情を思えば、日本の政権に何が欠けているかなど、政治評論家のご高説など読まなくても自明。
・皆がわかるような方向性を打ち出せない。
  ---役職争奪の政治屋稼業に徹しているということか。
・皆の気持ちを、その方向へと一つにまとめることができない。
  ---国の将来像を自分の頭で考えたことなどなさそう。
・その方向に進むための、課題を示すことができない。
  ---大局観が無いから、何からどう手をつけるべきか判断できない。
従って、やっていることといえば、耳目を集めるような目標を掲げ、工程表つくりを急がせるだけ。当の本人はわからないようだが、こんなやり方では方向感は全く生まれない。

そんな政治でも、なんとかなるのは、誰でもが言うように、現場がしっかり動いているから。だが、それは両刃の刃。
狭い視野では正しい判断かも知れぬが、広い視野で考えると決定的な誤りを犯している可能性があるからだ。特に、転機にさしかかっている時は、その恐れ濃厚。
変革が必要というなら、現場のものの見方も変える必要があるのが普通。だが、方向性が明示されない限り、現場では、今迄通りのやり方が踏襲される。仕組みができあがっているから、現場が動けばその効果はすぐにあらわれる。結構な話に聞こえるが、それはせっかくの変革のチャンスを失ったということかも知れないのである。

(ref.)
「野田、小沢会談を仲介 細川元首相」 産経新聞 2011.9.3
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110903/stt11090320230003-n1.htm


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