■■■■■ 2011.10.5 ■■■■■

 撤退ファンドに期待

日本の大手スーパーの商売を見ていると、余りに非生産的な競争ばかり目につき、合理主義の欠片も感じられない。顧客のニーズに応えるという名目で、小手先の新機軸を打ち出し、一時しのぎを続けているようにしか見えない。
これこそが日本の経営の真髄だと言われれば、その通りかもしれないが、暗澹たる気分にさせられる。

おそらく、雇用問題とか、地域経済への影響といった理由からなのだろうが、資本コストを大きく割り込む店が多数存在し続けているのは間違いなさそう。 それは、一企業の問題だけでなく、日本全体の経済を悪化させるオオモトでもある。いい加減に止めて欲しいものだ。

もし、これが日本社会で生きるための必須条件だとしたら、この国に未来はないのでは。

とにかく、経営的に意味が薄い店が多すぎる。早く閉鎖し、そこに投入されている膨大な資源を他に回すべきである。好調な店を伸ばす原資を、潰れてしかるべき店の存続に投入するのは即刻止めて欲しい。
今のまま続ければ、問題は膨らむだけ。日本経済を立て直すには、スクラップ・アンド・ビルトしかない。まずはスクラップである。

なんといっても、ひどいのが以下の症状が濃厚な点。
(その1) 規模の経済がさっぱり効いていない。
(その2) ほとんど特徴が感じられない事業と化している。
(その3) 無益としか思えない競争を続けている。

要するに、地域経済規模に見合わない過剰投資をしてしまったにもかかわらず、見直さず、その場しのぎの競争でなんとか現状維持を図っているということ。未来は暗い。
この先、スーパーが対象とする日本の小売市場規模は人口動態と所得推移を見れば減ると見てよいだろう。しかも、その縮小一途の市場に、違った業態の店が進出してくるのだ。マクロでは魅力はないが、ミクロで見れば、既存業態では対応できていない部分はいくらでもあり、起業家にとっては事業チャンスだらけ。そんななかから、イノベーターが登場し、市場全体が一変する可能性も無いとはいえない。
しかし、スーパーは衰退業態以外のなにものでもなかろう。今の状況を見る限り、変身ができるとも思えない。このまま続けていく訳にいかないのは誰がみてもはっきりしているのでは。しかし、手を打とうとしない。こまったもの。

そんなことを言うと、教科書的に、だから「規制緩和」なのだと叫ぶ人がいるが、誰でも知っているように、そんなスローガンは地方では全く意味をなさない。
業容回復の見込みゼロで、資本コスト割れになっているビジネスであっても、皆で援助して存続させようとするのが地方の文化。しかも、そんな日本没落化の取り組みに、all Japanで知恵を絞って日本を立て直そうというスローガンを掲げたりする。
こんなことをしていて地方経済が上向いたら、文字通り奇跡としか言いようがなかろう。

それならどうしたらよいかと言えば、なんら難しい話ではない。現実を直視し、本当の知恵を生み出せそうな人を投入するだけのこと。
一番簡単なのは、撤退ファンドの創生。業界内の生産性が悪い店を、所属企業に関係なく一挙に分離統合して経営する仕組みを作ればよい。能力ある経営者なら、個店評価などお手のものだろう。政府は。当座の所得として消えるだけでしかない補助金バラマキを止め、リスクマネーとしてファンドの原資を提供した方がよかろう。お得意の奉加帳を回して、業界を丸め込む必要はありそうだが。ただ、人事は、目的に合う人材登用で進めなければ成果はゼロとなる。
わかっている人なら、各店舗の、閉鎖、一挙に縮小、店舗統合など即刻決断できる筈。その後、資本コストを上回る収益を出せそうになったら、最適な企業に売却するだけの話。難しいことは何もない。

問題店舗の「分離」の決断は早ければ早いほどよい。と言うか、今が最期のチャンスでは。
これは、競争力を喪失している事業を抱え続けているメーカーにも当てはまる話。資本コスト割れから回復できる見込みが全くないのにかかわらず、優秀なエンジニアを大勢貼り付けている事業は、分離して新しい道を選択するに限る。貴重な知恵とおカネを、勝てもしない競争に使っていれば、どうなるのかはわかりきったこと。


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