■■■■■ 2011.10.11 ■■■■■

 "Stay hungry, stay foolish."に想う

"Stay hungry, stay foolish."という言葉だらけ。

小生は、これを耳にすると、どうしても、ある研究者を思い出してしまう。ただ、対象分野はITではないし、Apple社の製品は一度も触れたこともなさそうなお方。
と言えばご想像がつくかもしれないが、日本のとある大学で、同じ研究室に「居続けていらっしゃる」オーバードクター氏。

実は、ご自分の信条を、"Stay foolish."と語ってくれたのである。その語り口は意気軒昂とはほど遠く、静謐そのもの。

そして、同時に、"Stay hungry."も実行されていた。ただ、精神的な話ではなく、物理的に清貧の生活をしているというだけのこと。
誰からも金銭的支援を受けず、短時間、低賃金のアルバイトで食い扶持を稼いでいると言うのだ。自分のやりたい研究に思う存分時間を割くには、"Stay hungry."しかないと信じ込んでいるらしい。

そうくれば、誰でも気になるのは、どういった研究かという点。

もちろん画期的な成果を狙ってはいるが、なんと表現したらよいか悩ましいテーマだった。確かに、狙っているデータが実験で得られれば、誰もが驚くだろう。しかし、可能性はゼロではないが、もう何年も同じことをやっているが成果はゼロ。にもかかわらず、失敗とは考えず、未だに続けているのである。

それだけではない。その研究目的は、聞いてもよくわからない。しかも、どうしてその実験でなければならないかの論理もさっぱり。なにはともあれ、そのうち、信じられないようなデータを出そうと考えているというだけの話。

こういう研究者を輩出してしまうのが、日本の理工系教育。
分析技法や実験スキルを徹底的に磨くだけで、概念形成がさっぱりできない人ができあがってしまうのだ。
ただ、それはマイナスとも言えない。狭い分野での緻密なコミュニケーションがえらく上手なエンジニアを育てるには向いているからだ。
この方向を是とすれば、当然ながら、斬新な「概念」を提起する能力は低下の一途。これではこまるから、技術マネジメント教育でなんとか防ごうというのは正論だが、そこに分析技法や「ご教訓」ドグマばかり持ち出せば、せっかくの意義が消え去る。こまったもの。

それはともかく、構想力なき人に、"Stay hungry, stay foolish."を勧めるのは考えモノ。


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