パンダは肉食動物だったことが証明されたとか。
遺伝子分析から、肉食獣特有の酵素は持っているが、植物分解酵素が無いと判明していたそうだが、今回、その酵素を出す細菌のDNAが糞から発見されたそうだ。
笹しか食べないで生きていけるのは、この腸内細菌のお蔭。ただ、効率はえらく低いらしい。従って、笹を大量に食す必要があり、動きを小さくしてエネルギー消費も少なくせざるを得ない訳だ。
肉食では生きていくのが困難な環境になったため、生活習慣を自発的に変えたということのようだ。今では、肉はお好みではないようだが、与えられれば食べることはできるということか。
もっとも、そんな雑食の食生活を始めると途端に運動不足で肥満になって早死するのかも。尚、飼育パンダの菌叢は野生とは多少バランスが異なるようだ。主食は同じでも、環境が変わると代謝状況は相当変わることを意味していそうだ。
ヒトの場合は、それこそ、食も環境も千差万別だから、腸内細菌叢も相当なバラツキがありそうで、ここいら辺りの違いで健康度の差が生まれるものかも。
と言っても、腸内細菌の機能は未解明な部分が余りに多いらしい。ただ、腸内の微生物が健康に大きな影響を与えていることは間違いない。免疫系にも係わっているし、腸内細菌による食物中のphosphatidylcholine分解生成物の多寡で心筋梗塞と脳卒中発症率が左右されることも知られている。
このような知見を眺めていると、食事メニューで脂質量をコントロールするのも考えモノという気がしてくる。長寿者の真似も如何なものか。
食事パターンや環境の違いから、腸内細菌叢の状況は個人毎に相当違う筈であり、良かれと思った対策がマイナス効果を呼び込むことも有り得そうだから。
おそらく、世は俗説で溢れかえっていることだろう。専門家にしても、全体像を理解している訳ではないし、マクロでよさそうなアドバイスしかできかねる訳で、当然ながら、それが特定の個人に妥当な対策であるかはなんともいえない。自分の身は自分の判断で守るしかないのが現実。
例えば、小生は次のように考えた。
一番重要なことは、便秘や下痢を避けること。そんな症状が出たら、いち早く正常な腸内細菌叢に戻す対策をとった方がよい。異常増殖した特定の腸内細菌を抑えるため、殺菌作用がある薬を服用するのは悪くない手だ。
腸が不調にならないようにするには、時間、量、中味の観点で食のリズムを守ること。これが破られれば、細菌バランス変化が生じることになるからだ。ストレスも相当効く。小生のかつての同僚は、合併企業の責任者をしていた頃、人間的軋轢から過敏性大腸炎を発症してしまったそうだ。出社する途中でトイレに駆け込む毎日。他人様には言えぬ苦しみである。
そうそう、腹部の温度を適度に保つことも忘れてはなるまい。就寝時、手を当てて見れば、どんな状態かすぐわかる。
それに加えて、健康良好な時を見計らって、しばし、空腹状況をつくり出してみるのもよさげ。自分に好都合な菌が、腸内でさらに強力な地位を占めることができるかも知れないから。そういう観点で、ヒトの栄養にならないが、菌の培地にはなる寒天のようなものは、菌やその代謝物をまとめて排出しやすそうだから、メニューに組み込むとよさそう。まあ、蒟蒻、茸、海藻の類を適宜食べるのが、一番よさげではあるが。
ともかく、出発点は、全体像を自分で描くこと。
と言ってもどういうことかわかりにくいか。
例えば、健康生活の薀蓄を傾ける人に、BMIの意味を尋ねてみるとよい。もちろん、計算の仕方と、それが肥満度を示すと即時答えてくれるだろう。
しかし、その数値がどうして肥満度と言えるの?ココが肝。
おそらく、統計でとか、およそ的外れな答が返ってくる。要するに、丸暗記しているだけなのだ。ところが、本人はそうは思っていない。いくら説明しても、理解できなかったり。しかも、そんな人が理工系大学を優秀な成績で卒業していたりして。
(ref.)
Rachel Kaufman: "How Do Giant Pandas Survive on Bamboo? Panda poop held clues to how bears break down plant fibers, study says." National Geographic Daily News October 17, 2011 (邦訳) http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111018003&expand#title (原報-Abstract) Lifeng Zhua,1 et.al.: "Evidence of cellulose metabolism by the giant panda gut microbiome" PNAS September 7, 2011
Sarkis K. Mazmanian et.al.: "A microbial symbiosis factor prevents intestinal inflammatory disease" Nature 2008
Wang Z. et.al.:
"Gut flora metabolism of phosphatidylcholine promotes cardiovascular disease" Nature 2011 (解説) 古川哲史: 「食物と心疾患リスクをつなげる腸内細菌叢」 日経メディカル オンライン 2011.4.14