○その1
ご存知のように、この9月、SMAPが国賓級の歓待を受けた。それに先立つ、5月には来日中の温家宝首相がホテルで面会し、アカペラを注文。歓迎の意を表明した。尚、日本のメディアによれば、北京公演は4万人の観客だったという。異なる数字もあるが、混乱防止用と思われる立ち入り禁止地帯の席数勘定の違いか。映像では、観客席は満員に見えた。
上海公演が中国側の要請で二回中止となっていることもあり、対日感情改善のためという解説が多いようだ。
(ポイント) "異例"の扱いという点。
○その2
10月13日、広東省佛山でひき逃げ。防犯カメラの映像によれば、気付いてから、さらに轢くという悪辣なもの。何人もの通行人は血を流して横たわる2歳の女児を無視。そうこうするうちに、小型トラックが踏み潰すように上を走って通っていく。凄まじい映像。
同省の共産党幹部は「社会全体の道徳水準の向上に向けて、積極的かつ効果的な方策を取るように」と、省当局者の会合で指示を出した。人民日報は、「私たち皆が(現場に遭遇する)赤の他人になりうるのだ」と題した論評を掲載し、「文明社会の公民の責任にも関わる問題だ」と主張。
(ポイント) 情報の出所は個人からではなく、当局が管理しているに違いない"防犯カメラ映像"である点。
○その3
時あたかも、六中全会。以下、中国側報道からの引用。
"英BBCは「六中全会の討議の重点は、文化体制改革の深化、社会主義の基本的価値観の樹立だ」と指摘。「総合的な国力競争における文化の地位と役割は一層明らかになり、国家の文化の安全を守る任務は厳しさを増し、国家の文化のソフトパワーと中華文化の国際的影響力を高める必要性はより差し迫ったものとなっている」との中国メディアの報道を援用した。"
"AFP通信は「今回の会議で中国の指導者は、国家の『文化の安全』を守り、中国文化のソフトパワーを強化することを期す綱領的文書を採択した」と報道。「中国は現在、公民の文化的自覚、自信の強化に努めている」と指摘した。"
"朝日新聞は「会議は『文化体制改革の深化』に関する決定を採択。第18回党大会の来年後半の開催も決めた。文化体制改革は急速な経済成長に見合ったソフトパワーを強化し、『社会主義文化強国』を建設するためのものだ」と報じた。"
"韓国・京郷新聞は「中国共産党は、その経済的地位に見合ったものにすべく文化産業の発展に注力することを決定した。中国は製造業ではすでに一部企業が世界トップ500社にランクインしているが、文化産業ではまだ世界的ブランドがない。中国政府はこの状況を変えることを決意した」と報じた。"
(ポイント) わざわざ、韓国メディアの"文化産業振興"といった、ピント外れのコメントまで引用している点。
以上。
これで終わる訳にもいかないから、以下、付けたし。
ご存知中国は言論統制社会。個々の事象ではなく、全体を俯瞰して、どういう意味があるか考えたらどうかな。
背景解説があると、お助けになるかも。
10月9日、北京人民大会堂における辛亥革命100周年記念式に、死亡報道が流れた前国家主席が現主席に隣席して登場し、握手を交わした。
元産経新聞中国駐在記者の福島香織氏によれば、この式典前後は、「取り消しになった催しも多かった」し、「掲載差し止めになった論文・記事もたくさんあった」という状況だったという。湖南省長沙市での辛亥革命100周年の催しは中止命令が出たそうである。北京国家劇院で初めて上演される予定だった歌劇「中山・逸仙」も突然、上演停止命令が下ったという。
文化大革命の国であることをお忘れにならないように。
昔の話だが、中華主義と国家社会主義のミックス版のような「文化運動」だったが、日本のメディアは好意的な評価。毛沢東語録を翳した大衆運動の風合いで進められた訳だが、これを、スターリンによる粛清と同類の権力闘争と断じたのは極く一部の人だけ。
さて、今回は。
(ref.)
「SMAP国賓級 異例の人民大会堂会見」 朝日新聞 2011年9月16日
「ひき逃げ放置の中国2歳女児が死亡、党幹部はモラル向上指示」 ロイター(北京) 2011年 10月 21日
「中国:ひき逃げ2歳児、18人見て見ぬふり 人心荒廃嘆く ◇広東地元テレビがビデオ流す ネットで批判殺到、人民日報「道徳向上を」」 毎日新聞
「海外メディア、中共の第17期中央委員会第6回全体会議に注目」 人民網日本語版 2011年10月20日
福島香織:「「中国を変えるのは革命しかない」iPhone握り孫文の再来を夢想する」 日経ビジネス 2011年10月19日
(注)タイトルですが、「3大」です。三題ではありません。念のため。