■■■■■ 2011.10.31 ■■■■■

 野田首相のFTインタビューは遅すぎ

オリンパス・スキャンダルはついにくるところまで来た。
海外紙を読んでいると、日本では、大企業は出鱈目なことを平然と行っていても黙認される社会といった印象しか浮かぶまい。
非大手メディアから経営上の疑義の指摘があっても、日本の大手メディアによって社会的に握りつぶされるのが普通という感じを受けたに違いない。なにせ、日本人でさえ、日本の大手メディアではなく、海外紙の報道で株価急落の実情がわかった位なのだから。

このスキャンダルは厄介そのもの。日本のハイテク・グローバル化企業の典型として見られてしまうからである。要するに、日本企業によって、日本の「特異」なビジネス慣習が海外に持ち込まれると見なされてしまうのである。

残念ながら、今からでは、どうにもならない。
会社側の当初の公式記者会見では、指摘された支払い金額は大きすぎるという主張だったが、その後、その金額だったと表明したと報道されてしまったからだ。このような事態にもかかわらず、日本国内では、そんな事態をなんら問題視しないということもわかってしまった。
それがどう映ったかは自明な話。・・・ナイトが命を賭けて問題を指摘したが、何かをひたすら隠蔽し続ける経営陣はそれを嘘呼ばわり同然で応じた。しかし、結局、指摘を認めたというストーリーが定着してしまった訳である。英国なら、これはナイトの名誉にもかかわる大問題だが、日本では、そんなことはほとんど気にしないのである。
日本とは、そういう社会なのだと、皆、認識を改めたのは間違いあるまい。
まあ、それが日本の実態だからいかんともしがたいが。

もともと、日本では、経理数字を作り易くするために、内情を公示しなくてすむ子会社を設立したり、目的が曖昧なベンチャー投資が行われている。ビジネスマンならほぼ常識だろう。ただ、それが屋台骨を揺るがすような多額にのぼるとか、賄賂や闇社会対策、はたまた個人の使い込みに回されることは稀とされてきた。(実態はどうなのかわからないが。)そのため、ある程度は容認というのが、この社会の掟。リスクを容認しない風土だから、ある程度のアソビを認めておかないと、窒息しかねないからである。

従って、この醜聞で、大騒ぎにでもなって、規制が始まったりすると大事。監査厳格化によって、ボロボロと問題がでてしまいかねないし、適当なところで早く納めろという姿勢になるのはよくわかる。
しかし、そんな機微を海外の人々がわかる訳もない。

ようやく、野田首相が一言発したが、掲載が30日と動きが余りに遅すぎる。
日本のメディアが余りにひどい状況なので、小生が書いたのが19日のこと。この段階で、コメントを出すとか、東証首脳に一言あってしかるべきだった。

国際感覚鈍し。
世界は動揺しており、こういう情勢では、いつ何時日本異質論が生まれてもおかしくない。もう少し注意して欲しいもの。

(ref.)
Michiyo Nakamoto and Mure Dickie in Tokyo: "Japan PM’s fears over Olympus scandal Yoshihiko Noda warns of threat to nation’s reputation" FT October 30, 2011
Jonathan Soble: "Pressure on Japan to probe Olympus" FT October 25, 2011
当サイト:「海外紙は今や必読紙」 2011.10.19


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