■■■■■ 2011.11.9 ■■■■■

  TPP参加是非にPros and Cons議論は意味なし

TPPのメリットをいい加減な数字で薔薇色に描く人がいるが、そんなものは嘘っぱち。しかし、直接的な経済メリットがいかに少なくても参加せざるを得まい。
それは、「開国」せざるを得ないという話ではない。「開国派 v.s. 攘夷派」の明治維新とは全く意味が違う。だいたい、義務教育日本史で覚えさせられるこの対立ほどいい加減な代物はない。「尊王攘夷派」がいつのまにか「開国派」に転じる理由さえ全く説明しないのだから。普通はこのような政変をクーデターと呼ぶ。徳川政権が薩長土佐に倒されたにすぎない。
そんなことはどうでもよいが、アナロジーとしては不適。交易は活発化させなければならないが、「開国」か否かという問題設定では、世界の状況がわからなくなるからだ。

TPP参加派とは、グローバル経済化の波に乗ることを是としているというか、その波から落ちれば国がたちゆかなくなると考える人達を意味している。ただ、その実態は軍事覇権国たる米国の考える「公平」なルールでの自由貿易体制を敷くということだが。
もっとも、そんなことなど全く意識していない参加派が多いようである。世界の交易インフラの安全を保証してくれる米国に寄生してきたから、今更、どうにもなるまいといった感覚。まあ、惰性での参加。

一方、反TPP派とは、中国あるいはロシアのブロック経済圏に入ろうという人達。しかし、反対者自身はそう思っていない人がほとんど。現実を見ようとせず、米国にやられるという恐れからくる反対と見て間違いなかろう。
しかし、日本は、輸出と海外直接投資の見返りで食べている国。米国経済圏から離脱しておいて、中国経済圏に取り込まれずに独立独歩で経済が成り立つ訳がないのは自明。さあ、どちらを選択するかというだけの話だから、反対とは中国圏参加の道を歩む以外に手はない。

こうした見方に立つなら、国論が二分した件としてのアナロジーは、日米安全保障条約問題を取り上げた方がまし。
当時は冷戦下。言うまでもないが、軍備もない中立国などあり得ない。そのため、反米の安保反対闘争は賛成派にとっても大助かりだった。反米政権樹立の可能性を臭わすことで、安上がりの安全保障をとりつけることができたからである。
今や、米国にとっては、中国もロシアも重要な市場。同じことが、今回期待できる訳がない。米国はTPP不参加国は切り捨てることになるだろう。そうなれば、日本は中国圏に入っていくしかない。要するに、冊封国化の道。

こういう話をすると、第二次世界大戦勃発のきっかけでもあった経済ブロック化をアナロジーせざるを得ないが、そう単純なものではない。と言っても、国家資本主義体制を敷く中国やロシアは、当時のブロック経済圏感覚がそのまま残っている。独裁政権の都合でどのようにもなる経済圏作りにいそしんでいる訳で、参加国は盟主の意向に従う以外に手は無い。事実上の中華帝国である。
一方、TPPは確かに米国流ではあるが、ルールが明確化される。胡散臭い運用になるのは致し方ないが、名目的には自由貿易体制を作りあげているのは間違いない。どの参加国も、そのルールのもとで自由に経済を発展させることができる訳で、軍事大国だからといって勝手にルール破りをすることはできないことになっている。従って、中国やロシアの経済圏構想とは水と油。

WTOが事実上機能しない状況で、経済発展を狙うなら、自由経済圏を作っていくしかない訳で、EU並みの交易体制を敷くのがTPPということ。グローバルな自由貿易体制モデルを作ろうという取り組みでもある。上手くいく保証はないが、それ以外に手はなかろう。
それに、不参加時の副作用も考えておく必要があろう。TPPを推進しているオバマ政権は一応は文化的自由をより重視するリベラルプロテスタント層が基盤。保守プロテスタント層ほどは自由経済志向ではない。にもかかわらず、自由貿易体制構築に日本が否定的となれば、どういうイメージに映るかよく考えておく必要があるのではないか。
輸入規制を設けておきながら、米国市場への輸出を謳歌する国があれば、それを敵国と見なす可能性もなきにしもあらず。中東産油国からの安全な輸入を保証してもらい、巨大な食糧供給元でもあり、東アジアの戦乱を防いでもらっている国とつきあうのはそう簡単な話ではない。
TPPの議論に参加している国の大半は、米国の姿勢を心地よく思っている筈はない。しかし、それでも一緒に動くしかないのである。

(当サイトの前回記載分)
TPPへの賛否をテコに、政党再編を実現して欲しい…(20111023)
日本でのTPP議論にはたして意義があるだろうか…(20111014)


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