■■■■■ 2011.11.27 ■■■■■

  ユーロ危機に関する素人のメモ

ユーロ危機の話がようやくマスコミ報道の中心になってきたようだ。
ということで、日本の専門家の方々のお話が掲載されている雑誌を読んでみたが、対岸の火事のテクニカル的解説が多い感じがした。但し、見出しだけは華々しいが。

そこで頭の整理に、海外紙に掲載された様々な意見を読んでまとめてみた。皆さんも一つやってみたら如何かと。

(一般的な問題認識)
経済不振国が緊縮財政政策を進める一方で、EU・ECB・IMFがスクラムを組んで財政支援することで危機を打開しようとの方向性は打ち出された。
しかし、救済パッケージの規模が小さい上、肝心の支援金捻出体制が確立したとは言い難い。
これでは、金融市場の沈静化は無理。
一番の問題は、ドイツが全責任を持って対応する「決然とした」姿勢を見せていないこと。曖昧決着による問題先送りを狙っているとしか映らないのである。誰もが、危機回避不能と見がち。
そもそも、救済パッケージが適用されたところで、債務国の産業構造から見て、税収増や投資活発化は望み薄。緊縮財政による需要落ち込みで、さらなる経済低迷は間違いないところ。従って、今後、何回でも債務不履行が発生すると考えるのが自然。ドイツの姿勢が変わらない限りどうにもなるまい。
早い話、この事態に対応できる政治システムがEUには欠落しているというだけのこと。それをこれから補うと言っても、EUの仕組みの改革には条約締結が必要だから、時間がかかりすぎる。先送りで時間を稼ぎ、政治 システムを作るというのでは泥縄式で、実践性ゼロでは。

(EU首脳の危機対応姿勢)
日本型先送りによる、当座しのぎ策を選択したように映る。要するに、時間かせぎ。おそらく大恐慌を脅しにして、政治的統合を模索する目論見。統合財務省設立とか、EUへの各国予算承認権付与といった方向を模索することになる。その間数年に渡って、恐慌的な信用収縮が発生しないよう、ECBがジャバジャバ資金を供給し続けることになるのだろう。
一方で、問題国での緊縮財政政策実施を担保するため、IMF管理体制を整えることになる。
綱渡り的な動きと言えよう。

(欧州金融機関の動き)
政治的に銀行の資本強化を命じた訳だが、今までの経緯から見て、「甘い」不良資産査定と銀行側が楽に対応できる期間設定での要求なのでは。 当の銀行は資本増強ではなく、総資本圧縮による自己資本比率向上に走ることになりそう。EU経済は低迷することになるし、銀行破綻リスクが低下するかはなんとも言えないのでは。

(インベスターの見方)
国債デフォルトがギリシアで発生したら、それが他国にも連鎖するのは必定と見ていそう。なかでも焦点はイタリア。この経済規模になると、現行救済プランでは対処しきれないし、スペインに飛び火したりすれば、GDP規模が大きすぎて、救済プランの立てようがなかろう。従って、特段のコミットメントなき機関は、すべてのユーロ債の売却を進めることになろう、ヘッジファンドはこの動きを利用した益出しに励むことになる。
こんな方向に進み始めれば、救済プランは即座に頓挫しかねまい。今や時間との勝負かも。

(米国識者の3つの恐れ)
欧州国債CDSに係わるデリバティブ取引がグローバル市場で広がっていそう。しかし、その実情は必ずしもはっきりしていないので、リスクの見積もりようがない。早急に主要金融機関のストレステストが必要。
中国でのバブルが2012年には破裂するとの見通しだったが、欧州経済低迷で、その時期が早まるかも知れない。しかも、ソフトランディングが難しくなる可能性が高い。
ともあれ、政治システムも金融システムも、ユーロ危機を克服できる機能を持ちあわせていないとの見方は定着していそう。
そのなかで、一番の悲観論はEU解体予測。言うまでもないが、これは一大騒動。統合市場を解体するのだから、国境を越えて互いにリンクしている金融機能は一挙に不全に陥ると見てよいだろう。もし、金融機関がその恐れを感じた瞬間、金融市場にパニック発生。EU首脳は、それを押さえ込むことができないかも。

(米国政府の態度)
G20カンヌ・サミットは時間の無駄に終わり、おそらく落胆。要するに、手助けする力もなければ、リーダーシップを発揮することもできないことを自覚したということ。ブレトン・ウッズ体制の最終的崩壊を確認したということ。

(日本国政府の態度)
救済ファンドの奉加帳が回ってくれば率先して協力するつもりのようだ。ただ、マスコミ記事や解説を読んでも、その姿勢はよくわからず。下手に動いて、日本の財政状況を槍玉に挙げられてもこまるし、目立たぬようにということかな。

・・・こうして全体を眺めると、クリントンのパシフィック構想の位置付けが見えてくる。世界経済を立て直す機関車は、中印を含めた東アジアしかありえないと見たのだろう。反米ブロック化の動きが残るラテンアメリカは、エネルギー自給の可能性がある上、人口9億人でGDP6兆ドルと規模が大きいが、自発的な方向転換を待つのが得策との判断か。
と言うことで、保護主義の流れに一番敏感な小国が始めたTPPに目をつけたのは慧眼。この地域が中国と日本のシーレーンのまさに寝首に当たっていることにも着目した訳だ。軍事費削減をこの地域諸国からの上納金でカバーする目論見と見ることもできそうである。厄介な構想だが、代替案もなかろう。
ブレトン・ウッズ体制を継ぐべき新構想と言えそう。それは同時に世界の米軍展開の刷新も絡むという壮大なものにならざるを得ない。世界は大きく変わる。


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