タイトルは派手だが、内容がある訳ではないので、予めおことわりしておく。一寸書いておきたくなっただけ。
と言うのは、断片的なタネを巡る報道が余りに多すぎるからである。情報不足だから致し方ないのだが、まるっきりの推測話も横行しているようで、こまったもの。
それなら素人も、というところ。
そうそう、なかでも驚いた報道は、TV画像に登場する泣き叫ぶ姿を、「異様」と扱う向き。コレ、朝鮮半島では葬儀に係わる一種の風習にすぎず、珍しいシーンではないと思うが。おそらく、地方毎に正統スタイルがある筈である。そんなものを揶揄してなんの意味があるのだろう。
そもそも、価値観が全く違う社会であり、それを前提にしない推測には無理がある。
なんといっても他の国との大きな違いは、国体を護るためには、将軍様に命を捧げる所存の人達だらけだという点。毛沢東にゾッコンとなり、同胞を平然と殺戮した中国民衆のようなものだが、こちらは土着宗教心と融合した首領信仰が根底にありそう。従って、部外者にはその心情ははかりかねる。
しかも、国土の隅々まで緊張状態にあることを忘れるべきでない。この国は停戦状態だが、未だに米国とは戦争状況下との認識。国家が戦争状態なのだから、一糸乱れず動かなければ負け戦と考えるのは道理。独裁強権体制への反対者が現れる筈が無かろう。
その観点で、首領様の成果を見る必要があろう。・・・超大国の米国と同じ土俵で交渉できるまでになったのは事実。その手腕を低く評価する人はいまい。首領様あってこその、国家存続と考える人が多くて当たり前。彼等から見れば、韓国も日本も、米国の属国以外のなにものでもないからだ。
と言うことで、ポイントをまとめてみた。
○ 計画通り権力継承イベントを実施しているだけ。
・今迄なかったような頻繁な外交状況から見て、首領自ら死期を悟って、死後の道筋をつけておいた可能性が高い。死因等の発表内容やその時期を含め、継承プログラムは完成済だったと考えるべきでは。
・継承者が、中国共産党トップに直接死亡連絡をしたと思われる。独裁国間の軍事同盟が締結されている場合は、コレが常識的な対応だからだ。中国はこの情報をリークしないことで、北朝鮮問題については中国がとりしきるという立場を強化したことになる。
・中国も含め、どの国も、北朝鮮の権力状況が把握できていそうにない。北朝鮮の情報操作に世界が泳がされかねないのが実情だろう。
○ 新組織体制はすでに構築済みなのでは。
・権力継承時には、普通は、粛清必至。しかし、すでに、様々な人事が発令済みであり。その対策は終わっている可能性が高い。権力基盤は弱体化と言うより、強化されているのでは。
・鍵となる組織は、親衛隊と特殊部隊、軍外部の軍事委員会、秘密警察と治安部隊、宣伝と思想担当といったところだろう。細かなことは知らないが、これらの内部構成については、考慮済みのようである。要するに、ここ1年ほどで、粛清は終えたということ。前回の継承時での混乱を教訓にした筈。
○ 後継者が若かろうが、組織的には安泰だと思われる。
・軍事独裁国家であり、軍隊組織を維持することでしか、王朝国家は成り立たない。しかも、軍人の数が途方もなく多く、この組織を統治できれば、政権が倒れることはない。
・軍には定年がないようだ。従って、抗日パルチザン時代の長老も軍籍のままであり、粛清を逃れて残っている高齢層は金王朝絶対主義者だらけと思われる。
・高齢の元幹部クラスの子息がすでに軍の中堅層を統制している筈であり、親子ともども、金王朝国家体制維持を最優先して動くのは間違いあるまい。金一族の独裁者に裁断を仰ぐ仕組みでなければ、軍の統制はとれない。それを皆理解しているに違いない。
・金一族の内部分裂の兆候はない。海外在住の血族は、医療紹介や外貨稼ぎといった、一部の機能を担当していると見るべきだろう。韓国を対象とした工作要員でない限り、海外組が軍事政権に影響力を持つことは考えにくい。
・儒教的風土のなかで、後継者を3男にしたのは、軍部の意向が反映されたと見るのが自然。国是ともいえる軍部最優先政治を進める上で、長男や次男は不適人材だったということだろう。
○ 路線対立発生の可能性は低かろう。
・飢餓を含めた国内の危機的状況は、外部から見れば、一大事だが、軍事独裁国にとっては大きな問題ではない。敵国の仕掛けによる被害との認識以上ではなかろう。戦争続行に必要な犠牲というだけのこと。
・北朝鮮支配層は、戦争終結を望んでいない訳ではなかろう。ただ、それを実現する手立ては、米国との平和条約締結。自分達の手でそれを成し遂げるというのが、この国の思想である。
・独裁者は、この観点で国を率いて一歩進めることができたかで評価される。経済不振が深刻なことが問題になるのは、生活苦ではなく、軍事費不足。
・北朝鮮の思想から見れば、韓国や日本は米軍支配下の属国でしかない。そこに住む同胞は、解放のための革命運動を繰り広げるべし、となる。ただ、金王朝のご都合で、海外活動分子は切り捨てられるかも。
○ しかし、資金難が続くから、いずれ内紛勃発。
・エネルギーの大半と食糧の半分程度を輸入に頼らざるを得ず、輸入の対価として、資源開発と港湾鉄路貸与を外国に認めざるを得ない状況にある。しかも、工業生産能力不足は深刻。今や、消費財はほとんど輸入品なのでは。実質的に経済を中国に握られてしまった訳である。そこまでしても、資金が回ってこない冷遇状態の軍事部門がでてくると、軍隊の秩序維持は難しい。(軍人の数が過大すぎるので、どうにもならない。)
・デノミを通じて、新たな統制経済化を図ったようだが、大失敗。地方の蓄積資本吸い上げだけはできただろうから、おそらく、国内の地場産業は総崩れ。その上、自然災害からの復旧は進まず、農民は疲弊している筈。労働力や設備機材や資材が決定的に不足しているから、この先、食糧生産はさらに落ち込むと思われる。政権が安定していても、地方経済を立て直すことは不可能に近い。大部分の地域は、自給自足型経済へと落ち込むことになりそう。そうなっても、組織的な反乱は発生しないのでは。ただ、軍隊内の非組織的な反乱は続出しそう。その程度では、政権は倒れることはなかろう。
・中露からの収入で国庫が支えられることになるが、これらの国々は開放経済圏であるから、そうした潮流が国内にも芽生える。収入を増やさないと、ドン詰まりなので、開放経済の仕組みも取り入れたりするに違いない。しかし、それは、力で押さえ込む統制経済の仕組みとは水と油。末端での混乱は避けがたい。この流れに乗りそこなう層も生まれるから、内部対立が表面化するのは時間の問題だろう。開放経済しか道は無いが、それは政権を揺るがすという矛盾に遭遇するということ。
その矛盾をどう他に転嫁するかは不透明。
(当サイト過去記載)
危機対応の議論に時間を割いて欲しいもの 2011.12.20
金正日長春訪中の意味 2010.9.6