■■■■■ 2012.1.12 ■■■■■

 真面目な白川日銀総裁には好感を持てるが、多少心配

日銀総裁が10日にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで講演し、「日本は当局が金融機関の無秩序な破たんを許容しなかったため、世界金融危機の震源地とならなかった」と述べたそうである。
まさしくその通りだと思うが、現時点でこんな発言をしたということは、EU当事者への強烈な批判ということになる。

流石に驚いた。
一般には、コノ手の話は表立って発言しないもの。誰かに言わせ、まあそんな見方もできますな程度のコメントでお茶を濁すのが普通。
下手に反撥を招いたりすれば、何をされるかわかったものではないからだ。

思うに、そこまで欧州の金融機関の状況は悪いということなのだろう。
日本は不良債権先送りで誤魔化し、竹中式手術でどうやら金融システムがまもれたというのが実情だろうが、欧州の金融システムは当時の日本より脆弱ということなのかも知れぬ。なにせ、透明度が低い仕組みだから、ありえそうな話。

そうそう、講演ではもう一つポイントを指摘したようだ。日本のバブル崩壊が、世界の大混乱を引き起こさず、なんとか経済崩落を避けることができたのは、新興国経済のお蔭だというのである。これも、金融統制を強めようとしているEU主流派に対する批判に映る可能性もなきにしもあらず。リスク市場縮小でポートフォリオ見直しが行われ、新興国への資金が逆流したりすればえらいことという話に聞こえるからだ。

とはいえ、主張の核は、あくまでも「流動性供給で時間を買う間に構造改革必要」という点。問題は、その方針に従う風土があるかどうか。外部からこうした正論を述べても、効果があるとは限らない。
それは日本の経験で誰もがわかっている筈。

日本では、未だ懲りずに、破綻企業を支えていそうな金融機関がありそうだし。しかも、融資といった本来業務は低調そのもので、国債で利益を稼ぐことが本業と化しつつある。その国債は今やリスク資産の最たるものなのだが、それが堆く積もっているのである。そのうち破裂しかねない、ゆとり返済なる、米国のサブプライムローン的な資産も抱えているし、この先、どうするつもりなのだろう。
日本の金融システムがどこまで変動に耐えられそうかは、一般人には、さっぱりわからず状態。IMFのストレスチェック頼みか。

日銀総裁発言がEU内で怒りを呼び、日本の歪みをつつく動きが高まったりすれば、どうなることやら。
もっとも、この期におよんで、それは悪いことではない。強烈な外圧なしには日本の政治はどうにもならないのは誰もが認めるところだからだ。日銀総裁がついに腹をくくったということかも。

(記事) 「UPDATE1:日本は金融機関の無秩序破たん避けたため、世界金融危機の震源地とならず=日銀総裁」 ロイター 2012年1月11日


(C) 2012 RandDManagement.com    HOME  INDEX