世論調査が政権維持の道具として使われているとの批判が持ち上がっているとか。政治の流れに合わせた恣意的な質問形式になっており、世論の後押しありとの風情を醸しだす意図がミエミエというのである。政府調査なら当然のことだが、これがマスコミのものなので、一部で話題になっているようだ。
時代の転換点で、今更、こんな小細工を仕掛けて何が嬉しいのだろうか。棲む世界が違うと言うことだと思うが、おそらく世間を動かしている気になっているのだろう。それこそが醍醐味と思う人達だらけなのかも。
そもそも、どんなアンケート調査だろうが、質問者が仕掛ければ、歪められた結果を出すことは可能。従って、マスコミの調査には特にご用心というのは常識なのでは。今とりたてて騒ぐ話でもないように思うが。重要なのは、あくまでも自分なりの解釈である。
そんなことを言うと、一丁前のことを言うなら調査結果をどう解釈するのか、実例でも出してみろと言われること必定。だから、皆、黙っている訳である。・・・ここで話を終わりたいのだが、余りにしまりがなさすぎるので、ズブの素人の解釈例をお示ししておこうか。自民党末期政権から民主党野田政権までの、社会の状況と政党支持調査結果等を眺めて、ざっくりと作ってみた仮説。くれぐれも、中味を信用しないように。
(1) 意外と言っては何だが、全く政治に係わらない人達は有権者全体の2割を多少越えた程度なのでは。投票率から見るともっと多そうだが、棄権者には関心を持つ人も入っているのでご注意のほど。その一つは、開票結果は自明なので今回は失礼型の人。もう一つは、政治的に棄権した人。もちろん、このなかには、碌な候補者がいないから投票に行かないという程度も含まれる。要するに、完璧な無関心層はそれほど多くないということ。おそらく、その半分は、はなからその態度で生活してきた人々で、残りは、生活に手一杯で政治の話どころではないという方々だろう。このうち後者は増えていそうな気がするが、そうした兆候は見当たらない。
(2) 政権交代しても、結局のところ、新たな族議員によるバラマキ政治が続いている訳だが、その圧力団体たる既得権益層は有権者の2割程度を占めていそうだ。現与党側と旧与党側に二分されるが、二股をかけることができる組織も少なくなさそう。ともあれ、積極的に政治献金や選挙支援活動を行う訳だから、コア層といえる。コアだから思想性がありそうに見えるが、本当にそうなのかははなはだ疑問。現状の生活スタイルに合う政策を打つから支持している人が結構多そう。
(3) 政治意識が高い、政党の思想的基盤を形づくることができそうな層は極めて少数。と言うか、すべてを集めれば有権者の2割ほどにはなろうが、細分化しておりまとまりがなさそう。自己主張が強い訳で、いずれかの政党支持者と称していても、その政治的主張は四分五裂状態。このため、本来は政治的にコア層らるべきにもかかわらず、その役割は果たせていない。しいて分類すれば、国体護持志向、リベラル志向、中道志向となるが、たいした意味はない。左翼の左派は、左翼の右派とは犬猿の仲で、右翼の右派と課題一致で共闘可能といったようなもので、思想的傾向での有権者比率を類似的な体質の政党支持率と考えることには無理があるからだ。言うまでもないが、この層は現政権批判派になり易い。
(4) 上で、「国体護持志向」とヘンテコな用語で記載したが、これは国粋的傾向とか保守と表現したくなかったから。と言うのは、日本のいわゆる保守層の大半は表面的には国粋的な意見を表明するが、伝統制度に膠着しているとは言い難いからである。実利を重んじた柔軟な姿勢を維持するのが一大特徴ということ。早く言えば、伝統は守った方がよいが、それよりは仲間関係を壊すことがない安定した社会を望んでいるということ。従って、政権にしても、安定第一であり、突っ走るような政治は大嫌い。大きな問題が無いなら、思想性はどうあれ、現政権続行が最善と考える訳だ。逆に、迷走しているように見えたりすれば総スカン。この層は有権者の2割強というところかな。普通に言えば、リベラルな動きも許容する穏健な保守と呼べる。さらに分ければ、最悪路線でなければ容認する現状維持層と、漸進的改革待望層とが半々か。
(5) 残りには、特定の指導者以外、全く信用しない層が含まれる。反社会的な思想もありえる。オウム真理教のように表沙汰になることもあるが、マスコミに登場することは滅多にないから実態は全くわからない。しかし、得体のしれない組織が多数存在しているのは明らかであり、細かなものを集めれば結構な数になってもおかしくなかろう。
このように考えると、日本での政権党の成り立ちや政治情勢が想像できるのでは。
・裸になれば、自民党も民主党もそれぞれ1割強の得票率しか得られない。しかし、政党としては、この層にしがみつくしかない。他に基盤を作れるとは思えないからだ。政権交代で、互いにこの層をサラミのように切り合うことなるから、両者ともに基盤は弱体化していくだろう。ただ、両者の既得権益層は利益が相反していても、互いにもちつもたれつ的様相を呈しており、急激な変化はおきそうにない。
・どう見ても、保守軸v.s.リベラル軸の二大政党政治が上手く機能するとは思えない。その線を追求して、できることと言えば、せいぜいが、ポピュリズム的なメリットを政治思想の色付けで峻別することぐらい。支持者をまとめるには、曖昧な政権公約を打ち出さざるを得ないからだ。そこまでしても、上乗せ分は2割ほどにしかなるまい。したがって、上首尾でも3割支持が限度。
・もし、思想的に明確な差別化を図ると、多数派形成は難しくなりそう。思想が相反していようが、表面的な課題一致点を探って、それをことさら強調することで票を引き込むしかなさそう。
・なんといっても重要なのは、既得権益防衛層と安定政治待望層が、実際の投票者の半数を占めている点。痛みが予想される本格的な社会改革は口だけというのが暗黙の了解事項と化しているのは否めない。外圧がかかると、丸くおさめる方向を模索することになるが、それが無理とわかれば内部分裂か排他的国家を目指すかのどちらかを選ぶことになる。あくまでも、国内で丸くおさめたいのであるから、分裂を避けるために後者選択の可能性が高い。
・政治意識が高い層は、提起すべき課題が定まっておらず四分五裂状態。そのため、他の層に対して能動的に係わることができずにいる。既得権益層に都合のよい主張が場当たり的に利用されているだけ。
・全体的に政治思想性が薄く感じられるのは、政党自体にバラバラな思想が同居していることから当然の結果。政党が思想性を打ち出したりすれば、混乱を嫌う層の支持を失ってしまうから、思想的な問題はできるだけ避けるしかないのである。従って、この弱みを突かれると、支持者激減に見舞われる。例えば、既成政党内の思想を表面化させせざるを得ない論点で議論を吹っかけられたりすると、票は逃げていくことになる。
間違えてはこまるが、この仮説が妥当か否かなどどうでもよい話。変革の志があるなら、まずは現状を冷静に眺めたら如何。恣意的な調査も含め、マクロなデータはそれしかないのだから、それが意味するところを考えるしかないのである。想像力の世界での作業になるが、それなくしては、変革の端緒を見つけることは無理なのでは。