■■■■■ 2012.1.18 ■■■■■

 被災地復興の進捗状況が気になる

大半のエコノミストは、2012年、日本経済は復興需要で年率2%近くのGDP成長率を記録すると見ているらしい。
専門家の経済予想は外れることが多いが、財政資金が本格的に投入されるのは間違いないから、今回は確かそう。しかし、問題は、それが、必ずしも現地経済の再興を意味している訳ではなさそうな点。

もっとも、そんな見方も無理からぬ話かも。復興スピードは今一歩状態らしいのだ。
知人が、週末、被災地に出向いて、ボランティア作業員として片付け作業をするという。まだまだ仕事の山らしい。そろそろ一年経過するというのに、未だにそのレベルなのだ。
支援制度を紹介するサイト(http://www.r-assistance.go.jp/)にしても、1月17日にようやく開設。これからどの制度が使えるか検討して、申請手続きを行い、承認審査を経て、所要の準備を整えると、ようやく補助金が下りるということのようだ。先は長そう。
被災規模が余りに大きいから、なにをするにも時間がかかるのは致し方ないとはいえ、この調子でよいのか心配だ。

つい、そんな気分に陥ってしまうのは、皆で知恵を出し合い、地域開発マスタープランを考えようとの主張を見かけたりするから。
それはそうかも知れぬが余りに理想論すぎないか。
被災地は都会から遠く離れているのである。従って、もともと、雇用機会は限定的な地域なのだ。神戸の教訓はそのまま活かせない。
インフラを作り、その上で産業復興するといった手順では時間がかかりすぎる。今すぐ雇用を生みだす手を打たなければ、食べるために、人々は外に出ていくしかなくなってしまうのではなかろうか。そうなれば、ビジネス環境を整え、魅力的な起業インセンティブを用意しても、事業を支える人的資源が枯渇していてどうにもならなくなる。消費市場も縮めば、小売・サービス業の存立基盤も危うくなってこよう。

従って、早く事業を立ち上げ、一人でも多くの雇用を生み出すことこそ緊要な課題とはいえまいか。

もちろん、黙って、そんな路線で先頭を切って走ってくれる企業も多々ありそう。
典型はビール工場。タンクが全壊したほどの壊滅的被害を受けたとの報道を見たが、いち早く再開したというから驚いた。驚異的なスピード。総費用とロス時間でソロバンを弾けば、多分、廃工場化と工場移転が最適解の筈なのに、それに逆らった意思決定なのでは。当たり前だが、株主も拍手喝采しそうな大英断。
しかし、被災した経済圏の大半は個人事業者と地場産業の地域。同じようなことは資金的にとても無理だろう。従って、こうした方々に、いかにして早く投資資金を回すか知恵を絞るべきだ。

と言っても、簡単な話ではない。投資リスクが余りに高そうだから。
例えば、他地域に顧客を持っていた事業者が元の経営状態に戻せるかは、なんとも言い難い。商品供給が中断してしまえば、顧客は他地域の業者との取引に移行せざるを得ない。つまり、すでに、その需要を満たす供給能力が他地域にできあがっている訳だ。事業を再開しても、顧客開拓をゼロから始める必要があるかも。しかも、金利負担がさらに嵩む。経営者にとっては、公的補助金で事業再開を目指すといっても、清水の舞台から飛び降りる位の覚悟が迫られのかも。

もし、そんな状態だとしたら、ハイリスクを容認できる民間支援ファンドの出資が望ましい。プロが運営してくれるなら、即決投資も可能だからである。
皆で、こうしたファンドにお金を出し合うようになるとよいのだが。


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