■■■■■ 2012.1.26 ■■■■■

 ついつい、日本人の科学観について考えてしまった

小生は、Googleニュースを見るのが日課。
その画面デザインだが、一覧表の右側に「ピックアップ」と称する得体の知れぬ記事リンクが表示されている。デザインを変更する気がないので、興味がなくても、なにげにその見出しが目に入ってしまう。
スポーツ紙の大衆ページのようなものらしいが、キャッチーな見出しがあったりして、どうせくだらないと思いつつ、つい読んだりするもの。

前置きが長くなったが、実は、「天地創造かビッグバンか?アメリカの結果に他の先進国「…おい!」」という見出しがトップにあがっていた。
面白サイトだから、よそうと思ったが、先日、素粒子科学について書いたので一寸気になり閲覧。

実に、非科学的な内容だった。
調査結果の話ではなく、アンケート結果の引用の仕方。執筆者は、自分は科学的に物事を見ていると考えていそうだが、実は非科学的そのもの。しかし、それに気付かない。そんなところが日本人の平均像という気がする。

と言うことで、以下、この面白記事を題材として。・・・

質問は、「Who/What created the world, God or Big Ban?」というもの。ミカンとリンゴを比較するような質問で、全く次元が違う話を一緒にしているのだが、そう考えない人が多いようだ。確かに、宗教のドグマと科学的理論ではあるが、この質問設定自体が非科学的発想そのものなのである。
なにかが最初に存在しているかという話と、それがどのように変化したのかという話は、対象領域が違うからである。前者は存在論であり、まあ哲学の領域と言えそう。現時点、科学はこれに何も答えることができない状態である。一方、後者は、宇宙進化論と呼ぶべきもの。宇宙発展のプロセスを説明している理屈にすぎない。
ついでながら、ビッグバンについては、肯定する科学者が多いというだけにすぎず、これが真実かどうかはわからない。こうした見方こそが科学的態度なのである。要するに、現時点では一番納得できる理論ということ。反証が見つかれば否定されることになる。だからこそ科学なのだ。
非科学的思考とは、反証できない理屈を捏ね回すこと。
日本人にはこの辺りの論理がよくわからない人が多い。例えば、 「神による天地創造」を信じている科学者が、宇宙は大爆発して膨張しているとの理論を認めていることはありうる。ダーウィンの適者生存型進化論が成り立つと考えていても矛盾がある訳ではないのである。

このように説明しても、理解できない人は多い。日本の教育の欠陥かも。皆が正しいと言うものは真実と見なす体質ができあがっているのである。それは科学的思考と真逆なのだが。
この面白記事でも、「進化論を支持しない教師は日本ではめったにいない」と書いている。しかし、日本の場合は、それが科学的思考が広まっている証拠にはならない。この点には注意しておく必要がある。
それは、生命の起源話と進化論の違いがわかっていないからである。
前者は、最初のDNAはどこからか来たのか、それとも地球上のどこかで合成されたかという話。定説どころか、まともな仮説も提起されていないと言ってよいのでは。深海熱水でアミノ酸は合成できるが、それが生命に至る理屈には繋がらないのである。
従って、「誰か」が「命」を、外から地球に与えたとの説も、科学的仮説の一つと見なさざるをえない。その「誰か」を宗教上の「神」と考えるのは科学では無いというだけ。
未だに、タネなくしてはDNA合成ができない状況なのだ。従って、この仮説への反証は今のところ無いと言えよう。
さて、後者の進化論だが、これは、生命の起源たるDNAがいかに複雑化していったかを説明する理屈。DNAの存在はあくまでも前提条件。こちらは、極めてわかり易い。従って、大所では皆納得している。ただ、おかしなところはある。どうして、中間的種が存在しないのか。これに対する説得力ある理屈は作られていない。つまり、進化論も実は今一歩なのである。

ついでながら、アメリカ回答の異常性についてもコメントしておこうか。
ポイントは、総投票数が約42,000のうち31,000も占めている点。よくもまあ、こんなつまらぬ質問に、これほど多くの人が参加するものである。それは確かに特異。
従って、面白がって「神」に投票した可能性も考えられるし、人気投票のようなもので、どうしても「神」に勝たせたいと動いた人もいたかも。まあ、そんなところかも、ということ。

従って、面白がって「神」に投票した可能性も考えられるし、人気投票のようなもので、どうしても「神」に勝たせたいと動いた人もいたかも。まあ、そんなところかも、ということ。
もっとも、日本人もなんと1,000人が参加している。投票行動がお好きなようだ。

そういえば、福島原発についての日本人の発言もトンデモ論が多かった。
と言うか、日本人は原発について余りに無知なのであきれた。科学的な常識を持ち合わせないと言ってもよいかも。お陰で、嘘八百のアジテーターがインターネットの発言コーナーを闊歩できたのである。

忘れないうちにこれも書いておこうか。

 ・チェルノブイリは小型だが、炉を丈夫なもので覆う設計にはなっていない。スリーマイルはご存知のように、しっかりした格納容器がある。従って、常識的な対応さえしていれば、チェルノブイリのような爆裂状態に陥ることなど有り得ない。小型爆弾で壊れるようなものではないのである。ただ、稼動炉が3基もあり、冷却プールに使用済み燃料棒が大量に保管されているから、冷却が遅れたりすればチェルノブイリ以上の大規模汚染が発生し続けるという可能性があるにすぎない。首相が科学的発想で動いていればなんということのない事故ですんだとも言えそう。
米国は最初から科学的視点で眺めており、常識的な対策をとったが、日本はなにがなんだか右往左往状態で、メルトダウンしていないと嘘のつき通し。海外紙は、メルトダウンして、底で一時ブクブクしたりするかもといったところ。構造上、燃料は釜の底のシールを抜けるが、それだけのこと。常識的な予想と言えよう。日本とは対照的。

 ・おそらく、世界中が仰天したのは、街頭デモ鎮圧用放水車の派遣シーンと、ヘリコプターによるバケツの水の散布映像。誰が考えたところで、ほとんど意味がない行動。理工系大学を卒業している人が指示したのだから呆れかえる。科学的思考というより、幼児的発想としか言いようがなかろう。もしかすると、東大安田講堂の水圧鎮圧作戦のアナロジーかな。

 ・冷却できなければ、燃料棒がメルトダウンするのは当たり前。もっとも、それを公言した審議官は菅政権によって外されたが。まともに科学的常識で語ってはならない社会なのである。
なにせ、メルトダウンすると、原爆のようになると言うトンデモ話を流す輩がいる位なのだから手におえない。臨界の話と、核爆発の差もわからない訳である。流石にたまげた。そんな発言を臆面もなくする人を批判してもどうにもならない。

それにしても、日本の知のレベルの低さには恐れ入る。

(当サイト過去記載) 2012.1.16 量子力学関連のニュースを読んで


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