■■■■■ 2012.2.7 ■■■■■

 アラビア湾緊張シナリオを考えてみた

オバマ大統領が唐突にイスラエルがイラン攻撃準備を整えているとは考えないと発言。
素人からすれば、なるほど感あり。

どう見えたか書いておこう。・・・

普通に考えれば、ペルシャ帝国の歴史を受け継ぐ大国意識濃厚なイランが核武装化に進まない訳がない。インド、パキスタンでさえ保有しているのだから。
しかし、本格的開発体制までには至っていない可能性が高い。オバマ発言とはそういうことでは。

そう思うのは、もしも進捗の兆候を発見していたなら、イスラエルは有無を言わさず核兵器開発拠点を爆撃した筈だから。攻撃には、周囲の国々との秘密協定も必要であり、それも済ましていそうな雰囲気濃厚だった頃がある。だが、結局のところ、攻撃には踏み切らなかった。−−−米国の圧力が奏功というのが一般解説だが、そんなものだろうか。

核兵器は開発されてしまえば、以後、手出しは難しくなる。従って、米国政府の働きかけがあろうが、イスラエル軍が逡巡するとは思えない。
つまり、イスラエル軍の判断は、イランは開発に邁進している訳ではないというもの。−−−そうみるのが一番自然。

当然ながら、イランの姿勢が変わらないようにする必要がある。先ずは、査察を認めさせる圧力政策。開発嫌疑を煽り、イランにそれを受け入れさせる方針で臨むことになる。
ただ、プライド高きペルシャの末裔にとっては、それは屈辱そのもの。無理難題である。イランはもともとは反イスラエルではなかった筈だが、この動きで対立は深まる一方。
お陰で、外交交渉はニッチモサッチモ状態。だが、それはイスラエルにとっては望むところ。安定均衡とは、大国が力をつけることを意味し、自国の存在が脅かされかねないからだ。

しかし、今のような大騒動にまで進んだのは、こうした流れが行き詰まったからと見るべきではなさそう。
ココが肝。

くり返すが、おそらく、イスラエルも米国も、確証はないものの、イランの核兵器開発はたいして進んでいないと見ている。しかし、誰も実態はわからないから、最悪を考え、もうすぐ開発完了と大騒ぎしているのでは。
この流れを、イスラエルがずっと後押ししてきたということだろう。−−−それを裏付けるのが、オバマ発言という訳。

大統領が自信を持って発言したのだから、米軍の諜報活動報告によれば、イスラエル軍は攻撃準備態勢に入っていないと発言したに等しかろう。
要するに、イスラエルの希望通りのシナリオで米国は動いているが、チキンレースでイランを追い詰め、暴発させて戦争にもっていきたい訳ではないと釈明したということ。−−−小生には、その意思表明に映る。

イスラエルにしてみれば、ホルムズ海峡の軍事緊張化が続く状態が最良。米軍の中東引き上げを阻止できるからだ。
ただ、中東原油に頼っていない米国にも、その負担の十分な見返りはある。湾岸諸国が米国から大量に先端兵器を購入せざるを得なくなるからだ。しかも、それは付随訓練も不可欠な代物。これは、世俗勢力である各国軍隊が米軍の枠組にとりこまれることを意味する。イラク流支配の構図をアラビア湾岸一帯に広げることになる。

−−−以上、素人の見方でした。

(参考)
SCOTT SHANE: "No Israeli Decision on Iran Attack, Obama Says" NYT February 5, 2012
SCOTT SHANE: "Obama tones down Iran rhetoric" The Hindu February 6, 2012 BILL KELLER: "Bomb-Bomb-Bomb, Bomb-Bomb-Iran?" NYT January 22, 2012


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