■■■■■ 2012.2.15 ■■■■■

 日銀政策の素人解釈

日銀が奇妙なサインを発信。突如、インフレ率の標的値を表明したのである。

残念ながら、海外紙は日銀にはたいして興味を持っていなさそうだし、クルーグマンでさえ紙幣を刷ってインフレ化したらというトンデモアドバイスをするほど日本の状況に無知なエコノミストだらけなので、日銀の姿勢を考えるのは結構厄介。
そうそう、邦紙は原発報道と同じで、参考になるどころか、間違った見方を押し付けられる危険性大なので、ご用心のほど。

さて、突然にしてインフレターゲットを言い出したことをどう読むかだが、政治の圧力の結果とか書いてある記事をよく見かける。
うーむ。
まあ、永田町にはインフレターゲットを要求する政治屋さん達が多いし、FOMCが最近2%を明記したから、そう解釈したくなるのはわかるが、それはありえまい。
まず、日本における政治要求自体がトンデモ論であることをおさえておく必要があろう。デフレ原因をクルーグマン的に日銀政策に求めるからだ。もしも日銀がそれに応えて動けば、コントロールできない悪質なハイパーインフレを招く可能性大。専門家がそんな方向に動く訳がなかろう。
欧米ではデフレがだらだら続くことは考えられなかったから、物価コントロールのためのインフレターゲットでしかない。金利を底に設定するしかない米国がターゲット化に踏み切ったのは、物価上昇をその程度にするようにコントロールできそうということ。協約でターゲットを設定している英国も、4%を無理矢理に2%設定値に下げることに踏み切ることはなかろう。こんなことは当たり前では。

では、何故、日銀がターゲットを表明したのか。

ついにデフレが終わると見たのでは。

そんな兆候を感じるからだ。
 ・円高にもかかわらず、実感的には物価下落はほんの一部を除けば、ほとんど感じられない。
 ・家庭消費は量的にも金額的にも変動しなくなってきたようだ。
 ・2011年、小売業セクターは最高益を謳歌した。
 ・競争価格で出荷せざるを得ず、資本コスト割れで操業していた中小企業が限界に達しつつある。
 ・政府の施策の影響で、生産原価が高止まり状態で、コスト削減の可能性は低い。
 ・輸出セクターの大半のメーカーは、国内価格を下げて生き残ることができなくなった。
 (生産能力過剰と余剰人員を維持できない。)
 ・中国からの輸入業化して生き残ってきたメーカーは、現地通貨価格ではコスト削減どころか、コスト増に頭を悩ませている。

そろそろ円高反転の頃合でもある。もしそうなると、輸入品の物価上昇も効いてくる。
 ・欧州ユーロ危機が一段落し、米国大統領選前の景気梃入れ策効果がでれば、ユーロとドルは値を戻そう。
 (もともと、円高というより、他通貨安ということ。)
 ・産業界が海外投資を積極化せざるを得ない状況だ。
 (1ドル75円という為替水準では、輸出企業は、海外への工場移転と海外M&Aを本格化せざるを得まい。)
 ・海外の債権投資の魅力は極めて低いが、金融機関は国債保有抑制に動き始めているそうだから、市場に資金を供給すると、投機マネーの流れが日本から海外に向かう可能性が高い。

しかし、もちデフレが止まったといっても、国内投資が活発化するとは思えない。円安になっても、輸出セクターは輸出業から輸入業へと業態転換せざるを得まい。雇用は失われ、物価は上がるのだ。


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