習近平 (Xi Jinping;シージンピン ) 国家副主席の5日間に渡る訪米は、次の時代の米中関係をさぐる「前哨戦」とか。誰が考えたところで、指導者交代による政策転換期待の、一大交流イベントを企画するのは悪いことではない。ただ、衰退国の要求が受け入れられるとは思えまい。
もっとも、今後、2大国で世界の全体構図を決めていこうとの意思一致はできたかも。どこまで、中国が責任を持つつもりかはわからぬが。
その象徴が、「TPP・環太平洋パートナーシップ協定や日中韓FTAに関する情報を共有してゆく」との合意とは言えまいか。
WTOが全く機能しない以上、包括的なTPPか個別FTA拡大しか経済拡大の道はないのだから、当然の結末でしかないのではあるが。
米国にとってみれば、中国が国家資本主義的な仕組みをどこまで自由経済型ルールに合わせるかに尽きよう。日本がTPP加盟を言い出して、ようやくここまでこぎつけた訳である。にもかかわらず、オバマ政権は国内製造業復活を言い出し、保護貿易へと政策を振り始めた状態。これで新たな枠組みへの道筋をつけることができたら奇跡。
中国としては、日本が昔からやってきた、部分的な市場明け渡し路線でお茶を濁すにしくはなしというところ。
しかし、「最大の問題は、やはり、安全保障の分野」。オバマ大統領が、「強固な米中関係の構築が死活にかかわる重要な問題だ」と発言したのも当たり前。アジアで、両者の角逐が始まってしまったからだ。
そんなこともあり、異例の、習副主席とパネッタ国防長官との会談が設定されたのだろう。早い話、現状のパワーバランスを踏まえた新たな線引きをどうするかという話だ。
と言っても、軍備軽量化路線に突入中のオバマ政権が提案できそうなことは限られていよう。・・・中国が北朝鮮の暴発を阻止し、南/東シナ海の海軍膨張路線を抑え、台湾併合棚上げに同意するなら、10年かけて朝鮮半島から米軍を全面撤退させるといった手の取引。中国の指導での半島統一で結構ということ。それが現実的か否かは、米国は関知せずで済ますつもりでは。
ともあれ、今回の訪米で、中国指導部は大国化路線に自信を深めたのは間違いないところ。データを示されれば、オバマ政権も動くに動けまい。・・・
「How satisfied are you with the country's direction?」調査での、「Satisfied (Dis-)」回答率。参考に日本も加えておこうか。
2011年:
中国 85%(10)
米国 21%(73)
日本 25%(72)
2002年:
中国 48%(33)
米国 41%(55)
日本 12%(86)
(記事) 加藤青延解説委員:時論公論「習近平中国副主席 訪米の狙いと成果」 NHK 2012年02月15日
(データ)
"Satisfaction with Country's Direction"
Pew Research Center