■■■■■ 2012.2.22 ■■■■■

 The Third Man の時代は終わったかも

しばらくぶりに、「第三の男」、オーソン・ウェルズ演じるハリー・ライムの台詞をしみじみと聴いた。もちろん、破壊を免れた遊園地の大観覧車内での言葉。・・・
"You know what the fellow said ? in Italy, for thirty years under the Borgias, they had warfare, terror, murder and bloodshed, but they produced Michelangelo, Leonardo da Vinci and the Renaissance. In Switzerland, they had brotherly love, they had five hundred years of democracy and peace ? and what did that produce?"
・・・"The cuckoo clock."

事実ではないが、「事実」と感じさせるシニカルな言い草。だからこそ、しがない大衆小説家稼業で生きるしかない、かつての親友には、胸に突き刺さるような表現だった。
この言葉があったからこそ、都市の遺構のような場所での、ハリー・ライムの最期が妙に心に染みる訳である。
そして、最期の埋葬シーンも生きてくる。遺体が墓に埋められても、ハリー・ライムは死んでいないのだ。
さらには、それを象徴するかのようなエンディング。ハリー・ライムの愛人は、稟とした姿勢で、一直線の道を一歩一歩踏みしめながら、都会へと戻っていくのである。

まあ、冷静に眺めれば、役者の演技や撮影技術は一流でも、オーソン・ウェルズ以外は、ステレオタイプな情景と人物像描写だらけ。いかにも大衆作品的風合い。おそらく、意図的に、哲学や思想性を感じさせない演出に徹したのだろう。
しかし、それが、かえって、ピカ一の名画と感じさせる所以と言えそう。話し言葉の感触を味わうのが好きな、日本人ならではの感想と言えなくもないが。

そのウィーンだが、今や、住みやすい都市ランキング(エコノミスト版)で欧州随一の評価。メルボルンやバンクーバーと世界のトップを争うまでに。
「第三の男」の風情は今何処である。

最近の高校生はコノ映画を見る機会があるのだろうか。いや、たとえ見たとしても、感動を覚えるのだろうか。
そもそも、画面はモノクロだし、旧スタンダードサイズとくる。現在のディスプレーにはまるっきり合わないから、はなから対象外とも言えそう。
The Third Manの時代は終わったと見るべきかも。


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