■■■■■ 2012.2.29 ■■■■■

 自衛隊救援活動の民間調査もして欲しい

民間事故調の報告がメディアを賑わせているが、「結論」として紹介されていることに特段の目新しさは感じられなかった。
そうなると、教訓は、わかっていても変えれないとなるのかナ。

小生は、そんなことより、自衛隊による救援活動の実態報告を読みたい。もちろん民間調査で。
報道によれば、10万人の隊員が文字通り死力を尽くして活動したとされる。任務とはいえ、過酷な作業の連続だった筈で、頭が下がる思い。
しかし、ココにハイライトを当てたいのではない。

見るところ、準備万端の組織だったとは言いがたいから、この辺りを調べて欲しいのだ。もちろん、隊員のマネジメントといった現場サイドの仕組みではなく、装備や部隊編成という政治マターが対象。言うまでもなく、これは自民党政権の方針上の問題。政権交代したから議論になるかと思いきや、なしのつぶての領域。

何故、こんなことが気になるかと言えば、「トモダチ作戦」の威力に圧倒されたからである。もし、そんなことを感じなかったとすれば、それは余りに鈍感。
この作戦、米国の同盟国に対する姿勢を如実に示したものとされるが、キリスト教の文化的背景がある国だからできたこと。ただ、あそこまで大規模な動きに踏み切ったのは、自衛隊の力量をよくわかっていたからに違いあるまい。
はっきり言えば、土木部門の力量は高いが、ヒトとモノのロジスティックス能力は弱体ということ。米軍の援助なくしては、時間のロスだらけになりかねまいと見ていた可能性がありそう。
隊員大量動員だけでなく、装備も大胆に投入することになれば、自衛隊は米軍に防衛体制についてのブリーフィングを行った筈。従って、米軍が切迫した事態を察したということでは。

なにを言っているかおわかりだろうか。
ニュースを散見して感じた点を並べることで、そのご説明にかえよう。

 ・なんと言っても驚いたのは、偵察機を飛ばして、その映像を首相官邸で逐一見れる状況ではなさそうな点。今時、非常時に、わざわざ上空視察で時間を潰して、国民に頑張りを見せるのが嬉しいリーダーなのだからいかんともし難い。時代錯誤感に襲われた。解像度が低い部分的な航空ビデオ映像が紹介されたことがあるが、その瞬間、超高精細ネガフィルムでの写真撮影をさせられていなければよいがと思った。
  ・通信網が壊滅したのだから、細かな航空偵察から始めると思いきや、その余裕さえなかったようだ。あるいは司令官の指示がないから、法律遵守で、自治体要請を待つしかなかったのかも。通信資材と緊急救援物資のロジスティックス計画はデータ無しで作ったに等しかろう。装備が無ければ、それ以外に手は無いから致し方なし。
  ・三陸海岸では、なんの救援も受けずに自力で生き延びた孤立村落続出である。避難所のルポによれば、HELP文字に気付いて到来したのが米軍ヘリだったり。思わず、どうしてこうなるノ。
  ・なんといっても唖然とさせられたのは、地上物流ルート確保に必死になっていた姿。この活動は質が極めて高く、賞賛に値するものだった。だが、素人の常識からすれば、基幹道路が寸断されたら、即、大型輸送機で地域空港に物資と隊員を輸送するもの。そんなことができない装備体制だったことになる。
  ・ご存知、自衛隊の拠点飛行場は津波に洗われた。しかし、いち早く復旧。この展開が常識的と言えよう。だが、TV映像を見ると、離発着するのは米軍大型機だ。自衛隊は大型機が枯渇しているのでは。民間機もさっぱり。大型貨物輸送機の緊急チャーター制度もなかったのだろうか。自衛隊の資材輸送は原則陸上ルートとされていそう。
戦乱時を考えれば、全面的な道路網崩壊はありえること。自民党政権が採用してきた方針は、自衛隊は、それに対応した体制構築不要というものだったようだ。
  ・孤立集落には自衛隊のヘリコプターは滅多にこなかったようだ。基幹道路を回復させて物流拠点に資材が集まっても、その先は難しい。衛星的な拠点へのヘリコプター輸送で手一杯。そこから先の孤立集落に目を配る余裕などなかったのは明らか。
「トモダチ作戦」なかりせば、どうなっていたか、冷静に見ておく必要があるのでは。
  ・隊員大量派遣決定が遅れたのは、リーダーの判断力のなさだが、最終的な数字は、現場がよくそこまで決断したものだと思うほどのもの。日々の防衛活動をゼロにする訳にいかないから、救援に力を割くというのは相当の負荷を覚悟してのこと。しかし、踏み切ることができた訳で、自衛隊の予算配分がヒトの数を偏重したものだったと示唆していそう。
換言すれば、装備の高度化と、隊員の専門スキル向上に重点を置いてはいないのである。狭い国土だが、大型機による隊員輸送方式を採用して、ヒトの数を抑える方向は嫌われてきたようだ。

ともあれ、素人から見れば、多額の国防費を投入している米軍装備の圧倒的迫力を見せ付けられた感じ。そのため、どうしても、日本は隊員の気力と体力だのみに映る。この先もコレではこまるのではなかろうか。
自衛隊は万一を考えた組織。少なくとも、偵察飛行の装備近代化や、最低限の大型輸送機数の確保、飛行場やヘリポート開設部隊移動手段の確保位は最低限必要な気がするのだが。如何なものか。

以上、素人のざっくばらんな印象にすぎない。マスコミ報道姿勢は恣意的そのものだったから、本当のところはよくわからないのでご注意のほど。

問題は、今のままなら、ここら辺りは知らん顔で済まされてしまうこと。旧与党の防衛談義に華を咲かせたい人達はなにも言わないようだし、現防衛相はズブの素人とされており、その問題意識にのぼることもなさそう。こここそ、民間調査による問題指摘が望まれる分野という気がするのだが。


(C) 2012 RandDManagement.com    HOME  INDEX