ナショナル・ジオグラフィックの古い記事を探してしまった。エチオピアで発見された人類最古の全身骨格化石の研究成果論文の紹介モノ。
もちろんすぐに見つかった。2009年のScience掲載論文を取り上げた記事だった。
科学好きなら、一読の価値ありタイプとの一文を覚えている人もいるかも。内容としては、チンパンジーとヒトの性に係わる違いを指摘しただけのことだが。ただ、言われてみると確かに納得感が生まれるので面白い。これが、とても化石記事とは思えない。・・・
現生する類人猿のオスは、繁殖期になるとほかのオスと戦って排卵期のメスを奪い合うが、ヒトの場合、そんな行為には及ばない。
・ヒトのメスは、オスに繁殖可能時期を積極的に示すことはない。
(排卵時期は、本人さえも自明とは言い難い可能性も。)
・ヒトのオスの生殖器の個体差は、それほど大きくない。
(優劣は大いにあるゾという御仁も。ただ、コレ、類人猿との比較。)
その理由を示したのは、オーウェン・ラブジョイ氏。チンパンジー社会での、勝者と敗者は以下のようになるというのだ。
・勝者となって排卵期を迎えたメスとできるだけ多く交尾し子孫を増やせるのは、鋭く尖った大きな犬歯を持つたくましいオス。
・多くのメスに射精できるオスは、交尾し易い構造のペニスと大量の精子を貯蔵できる睾丸を持つ。
・強いオスをいち早く獲得できるメスとは、効果的にアピールできる生殖器を持っている必要がある。
・敗者のオスは、エサをプレゼントすることで排卵期のメスを誘惑することになる。
従って、敗者のオスは、沢山のエサを運ぶことに全精力を注ぐ訳である。
そう、これがヒト二足歩行の所以と示唆している訳である。エサ探しに危険や手間が伴う環境だと、この能力はとてつもなく魅力的だったかも。
もちろん、「現生のチンパンジーでも同様の行為が観察される」から、単なる想像に基づく仮説ではない。
ご想像がつくと思うが、発見された猿人は、オスでも犬歯が小さく、二足歩行で動き回っていたと推測できるというのである。
そして、一夫一婦制だった可能性も。
これ、ルーシーの100万年前のこと。
突然、こんな話をしたのは共同発のニュースが流れたから。
そのタイトルは「二足歩行は食料独り占めのため 京大などチンパンジーを分析」(2012/03/21 共同通信-47NEWS)。
尚、小生はこの仮説は余り信じていない。強いオスがメスを横取りされたことに気付かない筈がないし、その状況を見逃し続けるとも思えないからだ。しかも、メスにとっては二足歩行の必要性は無い。それに、一夫一婦制度発祥と言うより、売春の起源と見る方が自然ではないか。
(記事)
「二足歩行が人類の配偶関係を変えた?」(日本語版)---Jamie Shreeve
Science editor, National Geographic magazine
October 2, 2009
(小生の二足歩行の見方のひとつ)
「二足歩行論の肝(20120227)」