■■■■■ 2012.4.3 ■■■■■

 放射能恐怖感は呪術感覚を呼び起こすのかも

ヘンテコなタイトルだが、ご勘弁のほど。
震災がれき受け入れ阻止運動のニュースを眺めていて感じたことをまとめてみただけのこと。

日本における、放射能に対する忌避感は根強いものがある。被爆者は長いこと差別に悩まされたそうだが、それもこの発想から来ていそう。
その一方で、ラドン温泉とか、ラジウム鉱泉大好き人も多いらしいから、不可思議。
これを無知から来る現象とか、反科学的な動きと見なす人も少なくないが、小生は、日本文化の根底に流れる「呪術」的発想に関係していそうな気がする。放射能問題を議論する際は、ここら辺りも考慮しておく必要があるのではないか。

と言うのは、日本の場合、「科学」と「呪術」が対立概念とは言い難いから。

キリスト教信仰の社会では、創造主存在は大前提。従って、自然における法則性は存在して当たり前。神が作ったルールをヒトが理解しようと努力する行為が「科学」となるだけの話。そんな社会では、ヒトが行う「呪術」は、マヤカシ以外のなにものでもなかろう。
しかし、日本ではそうはならない。古事記でわかるように、神より先に宇宙ありきなのである。神は葦の如く生まれ出るもの。しかも、日本における神はヒトに直接つながってきたりする。このような発想だと、宇宙を支配するルールは一意的には決まるまい。そうなれば、呪術も否定しがたかろう。

だからと言って、表だって呪術を肯定する日本人は少なさそう。多分、西洋から未開文化とは呼ばれたくないから。だが、日本人の心根が変わった訳ではない。現実を直視すべきだと思う。
どんな状態か、東京都で行われた調査データで調べてきたので、ご紹介しておこう。
●「お祓いに、効果あり」 (「お祓い」とは「呪術」そのもの)
  20代 68.8%
  70代 34.1%


高齢者は、迷信にとりつかれていたりするものと言う人がいるが、「お祓い」を信じている割合は3分の1でしかない。大半の人は習俗と見なしているだけのようだ。一方、若い層は逆である。過半が「呪術」を信奉していると言ってよかろう。若年層は「占い」への親和性が極めて高いことはよく知られているが、その本質は「呪術」信仰なのでは。この点はしっかり押さえておく必要があろう。

この場合、注意しておくべき点がある。日本の無神論者は西洋とは全く異なり、「呪術」否定論者ではないのだ。
●神仏霊を否定する人でも、祈願は、
  「かなう」    3%
  「心が安らぐ」 70%


キリスト教社会の常識では、こうした心情を持つ人を無神論者とは呼べまい。いかにも胡散臭く映るのではないかな。社会迎合志向の「呪術」肯定論者と見なされておかしくないと思うが。

繰り返しになるが、日本では、西洋型の「科学 v.s. 呪術」は通用しないのである。言ってみれば、「科学 plus 呪術」か。
「科学 v.s. 呪術」なら、科学的な議論を通じて、一番合理的な説明を正論と見なすことができよう。もちろん、様々な反論もあり、例外的事象から強引な仮説を主張する人もいておかしくない。しかし、それだけのこと。
だが、「科学 plus 呪術」だと、そうはいくまい。いくら科学的に緻密で合理的な説明をしたところで、「呪術」が必要な状況だと、納得感はさっぱり生まれないと考えられるからだ。
確率は極めて低くても、危険な状況に遭遇する可能性があると、いくら確率論で説明されても、説得できない人だらけの社会ということ。危惧の念が少しでも残っていると、西洋型の正論は通用しないのである。コレ、おそらく、「呪術」の世界なのである。

と言うと、誤解を招きやすいので、以下追加説明。・・・
未開人は「呪術」で生きており、科学からほど遠いと考える人が多いが、多分偏見。「呪術」の対象は、あくまでも、悪天候、重篤な疾病、危険な挑戦、といったヒトの知恵ではどうにも対処できそうにないもの。日常生活においては、経験論に基づいた「科学的」考え方で行動していたと見るべき。例えば、バナナ採取に呪術は不要ということ。しかし、作物が育つかはっきりしない主食用農作業や、釣れるか皆目わからない漁労、毒蛇地域入山に際しては、呪術は不可欠。こういった場合、「お祓いに、効果あり」だからだ。
当然ながら、恐ろしいことが起きそうな予感がしたら、皆で呪術。その場合、禁忌の徹底も付随する。
コレ、集落を守るための最重要な決まりごと。従わない人は粛清するしかない。

日本文化は、どう見ても、精神的古層に、このような南の島々の呪術体質を抱えている。そのため、ここを刺激するような話になると厄介。考え方を変えようとしてもおそらく無理。

こんなことは、西洋の人達には想像もできまい。従って、海外から誤解されないよう、こうした日本文化を説明する努力が必要だと思う。ところが、残念ながら、そんな英文サイトは無さそう。なんとかしなければ、とは思うのだが。
一方、邦文サイトや書籍を眺めると、日本文化論は大盛況。目を通した訳ではないが、西洋人は肉食人種だとか、狩猟民族という手の話だらけなのでは。そんな、ドンキホーテ論調が好きな方が多いからこまったもの。

(データ) 竹内郁郎・宇都宮京子:「呪術意識と現代社会―東京都二十三区民調査の社会学的分析」 青弓社 2010年
(当サイト過去記載) 「ラドンの謎(2006.4.18)」


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