■■■■■ 2012.4.11 ■■■■■

 米国のイスラム圏への影響力は消滅していくのかも

米国のイスラム圏への関与の仕方が気になってしかたがない。
日本のメディアは、海外と違い、コラムや解説の質を意図的に低くしているようで、状況がなかなか見えてこない。しかも、国内政治屋の動きに合わせて海外の流れを報道する傾向が強く、肝心な情報は見つけにくいし、海外とは違った感覚を覚えたりして、どうにもこまったもの。

その典型は、鳩山元首相がアフマディネジャド イラン大統領と「個人的」な会談のニュース。
これに、怒り心頭の政治家だらけらしい。まあ、現実のパワーポリティックスを直視したくない方のようだから、いかにもやりそうな事。(米国の意向を踏まえることなく、日本独自の外交を展開し、米国と対等な立場で勝手に動くべしとの信念をお持ちなのだろう。)従って、又かと憤慨したくなるのはわからぬでもないが。
しかし、個人プレーでこんな会談を設定できる訳もないだろうから、米国の傘の下から抜け出そうと画策する勢力が支えた動きなのだろう。日米同盟堅持路線を歩む以上、外相が「政府の要請に基づくものではない」と発言するのは当然だが、路線変更のオプションを持っていた方がよいということかも。

ともあれ、背景がよくわからない以上、大騒ぎせずに、無視するのが一番なのでは。
そんなことより、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランとのイスタンブール会議の行方を考える方が余程重要。世界の流れになんの影響もない、日本の「二元外交」問題で議論を盛り上げて、一体、それにどんな意味があるのか。

こまったことに、イランのニュースといえば、鳩山話だらけ。肝心な方はベタ記事が少々。なにもわからない。

素人判断では、ついにトルコ出番でイラン問題解決に向かうといったところかナ。
おそらく、核兵器開発断念を示す動きをイランが示し、ロシアがその保証役を担うのだろう。
スペインの原油輸出が止まり、危機勃発の可能性もあるから、EUも解決を急ぎたかろう。イラン原油に直接関係無い米国にしても、オバマ政権は同じ気分では。イラン問題での原油高騰の結果、時あたかも流入し始めたカナダの低質品がかなり安価になってしまったからだ。高品質な輸入原油しか精製できない東部の大製油所は閉鎖される憂き目。
このままでは、大統領選挙目前に、ガソリン価格急騰の図。落選間違いなし。原油備蓄取り崩し程度でなんとかなる話ではなかろう。
この状況なら、イラン問題は、落としどころを探れば、解決しそうなもの。

だが、問題がある。もちろん、それはイスラエル。
すでに、イラン攻撃間違いなしの雰囲気がかもし出されつつあり、マスコミを通じたブラフとも思えず、これがデッドロックに乗り上げた感を与えていた。
しかし、オバマ政権の外交解決という方針は揺るがないまま。と言って、目算があるようには映らなかったが、今まで無視していたトルコ調停に、表立たない形で乗ることにしたということなのだろう。
会議開催にこぎつけたということは、イスラエルを納得させることができる下準備ができたことを意味していそう。

このことは、イスタンブール会議がイスラム圏におけるパワーバランス大転換を決定する場という様相を呈することになりそう。まさに結節点。
もし、合意に至らなければ、戦乱必至。解決へと一歩踏み出すとすれば、米国がイスラム圏安定化の役割を放棄との意思決定と同義。
EU加盟の気を喪失したトルコと、シリアに軍港を持つロシアを中心に、中国を含めた諸国でなんとかしろということになるのだろう。

そうなると、米国のイスラム圏への影響力は消滅していくということか。そんなことはあり得ないと思っていたが、国内で、宗教、人種、思想による分断化が進んでくると、それしかないのかも。
米国はインド化し始めたのだろうか。

(イスラエルの記事:Jeffrey Goldberg @ Bloomberg)
"Israel Can't Go It Aoone on Oran Nuke Threat" Feb 7, 2012
"Israelis Grow Confident Strike on Iran’s Nukes Can Work" Mar 19, 2012
(当サイト記載) 「米国はイスラム圏をどうするつもりなのだろうか(20120409)」


(C) 2012 RandDManagement.com    HOME  INDEX