ようやくにして、「先進国から転落の危機に立つ日本」で始まる報告書が登場。一応、目を通しては見たが、今更話だらけで読むのがつらい。
今迄、バラバラと言われ続けてきたことを、「課題先進国」という観点から整理してあり、わかり易いのだが。
・成長なき経済20年
・政府債務GDP比約200%
・財政/社会保障危機
・長期的エネルギー制約(東日本大震災)
・東アジア地域での安全保障上の緊張
・人口減少/超高齢社会に突入
ただ、小生は、本質的問題は上記では無いと見ている。どれもこれも、早晩、直面するとわかっていたようなもの。にもかかわらず、すべて先送り。対処が遅れれば遅れるほど、病は悪化するのにもかかわらず。どうにもならなくなってから、まともな診断を仰ぎ、なんとかしようと動いてもどうにもならないのが普通。
それが、この日本では。
この報告書にしても、文字面では「危機」だが、「わが国の将来をめぐる国民的議論が活発化するきっかけ」を目指すものにすぎない。これから議論を始めようというのだから恐れ入る。しかも、「与野党の政治リーダーには、本報告書の問題提起を真摯に受け止め、政策を前進させることを強く期待する」と言うのだ。
小生はもうそんな時期はとうに過ぎてしまったと思うが。今の状態は、没落経済30年の幕開き以外のなにものでもなかろう。
お隣の、人権無視のお国では、街も工場も1年経たずに様変わりする。日本で同じことを進めれば、下手すると50年かかったりしかねない。それを、日本では民主主義の正当なコストと見なし、自画自賛。グローバル競争の時代、そんな姿勢でやっていける訳がないと思うが、ともかく新陳代謝を抑制したい人だらけだからどうにもならぬ。言い方を変えれば、既得権益のしがらみが交錯し、もがけばもがくほど泥沼に沈んで行く図となるか。
成熟社会で新陳代謝を抑制すれば、経済低迷は避けられないと思うが、そんなことを気にせず、社会の安定を最優先する政治が続いて来たのである。成長なき経済20年が実現できただけでも、まさに幸運そのもの。たまたま、世界経済が上向きだったし、有力企業が内部変身を図って競争力を維持できたから、そのお陰でなんとか国力が保てたのである。
そんな幸運が今後も続くとは思えまい。
(報告書) 「グローバルJAPAN −2050年 シミュレーションと総合戦略−」 一般社団法人 日本経済団体連合会21世紀政策研究所 グローバルJAPAN特別委員会 2012年4月