■■■■■ 2012.4.27 ■■■■■

 One Sonyになれるか(続々)

発表された経営方針によれば、ソニーは、エレクトロニクスの重点3領域に投資/技術開発を集中するとのこと。
  ・デジタルイメージング
  ・ゲーム
  ・モバイル
明確なようで、実はそうともいえないのが、この世界。厄介そのもの。
上記の3分野、それぞれ組織が対応しているから、企業内ではそれなりに意味もあろう。しかし、市場から眺めれば、独立分野とも言い切れないので、マネジメントは難しい。
3人のマネジャーが強固なスクラムを組んで大型商品を生み出すことができれば、one Company化実現だが、それは簡単ではないのである。人間関係上のケミストリーという意味ではなく、将来像が共有できるかという話。微妙な違いに気付かないと、途中で齟齬が生じたりするもの。

もっとも、そんなことは80年代から予想されていたこと。デジタル時代に入ると、分野が融合してくるし、ハード/ソフト/コンテンツが絡みあう上、部品/機器/システムの連関が勝負となるから、マネジメントの質が問われるようになってくるとされていたのである。要するに、絵はいかようにも描けるし、それが人々の琴線に触れるなら、世界を変えることさえできるということ。調査や分析でなんとか勝負できる時代は終わったのである。
しかも、ソニーの場合はこの転換に合わせるのが矢鱈難しい。調査や分析で出発した会社ではなく、画期的新製品を生むことにこだわった会社だったからである。当然、それぞれの組織には独自のこだわりがある。つまり、互いに違った将来像を持ちがちになるのだ。これを揃えるのは簡単なことではない。下手をすると、やる気を喪失させかねないからである。

重点3領域にも、その恐れは依然として存在している。ざっと眺めてみよう。

●デジタルイメージングと言えば、ソニーのドル箱のビデオカメラ(カムコーダ)。光学素子開発力もあり、いかにもエレクトロニクス企業らしき分野。
しかし、一眼レフとなると、米国で力を発揮していた旧ミノルタの力を加味しても、同じ土俵で勝負するとなれば、2強カメラメーカーを凌駕するのは並大抵のことではなかろう。一方、市場を見れば、コンパクトカメラは、ケータイやタブレットに座を奪われかねない状況。デジタルイメージング領域としながらも、実はモバイルともからむ訳だ。しかも、自宅PCファイルでのアルバム写真集から、外部のアーカイブ利用へと移り始めそうな気配。機器メーカーとしては、これにどう対応するか悩ましいところ。それに、これからはリビングルームの大画面で写真を見ることになる可能性も高い。こうなると、テレビがかかわってくる。
組織を超えて、どう大型商品を作っていくかは、組織図の問題より、事業の将来像に係わることが多いのである。組織間で将来像を共有せずに迅速な意思決定を進めれば、one Companyは画餅に終わるし、将来像を巡る意見の違いでグズグズしていれば、時期を失したり、中途半端な方針で妥協することになったりしかねないのである。

●モバイルはもっと厄介である。エリクソンの歴史を引き継いだので通信分野では力量があるとはいえ、スマホの世界では雄とは言い難い。タブレットになると、米国市場ではほとんど目立たない地位に甘んじている。数字で見ておこう。
-- U.S. Market Shares of Androkd Tablets (Feb-12) --
Amazon Kindle Fire 54%, Samsung Galaxy 15%, Motorola Xoom 7%. Asus Transformer 6%, Toshiba AT100 6%, ....., Sony Tablet S 1%, others 2%.

スマホが今やゲーム機器化しているのは良く知られた話。今のところ、一寸した時間潰し用でしかなく、本格的なゲームとは市場が違うが、開発者が流れこみ始めており、機器機能が日進月歩の分野だから、主流が奪われる可能性もなきにしもあらず。しかも、幼児用ゲームや絵本の電子市場がタブレット分野から生み出される雰囲気濃厚。
そんな状況だと、ゲームとスマホ・タブレット組織が将来像を共有するといっても、簡単なことではないかも。

●ゲームはプレイステーションというプラットホームを持っている。これだけで巨大なアセット。それに加えて、家庭での視聴覚機器では圧倒的な力量があったのだから、これらを活用して、ホームエンタテインメントの革新を図っていこうとの目論見があったに違いなかろう。それだけの力がある企業だったのは間違いない。しかし、組織の壁は破れなかったようだ。分野融合とは、売り上げ縮小のリスクを孕むから、危機感が醸成されておらず、とても踏み切れなかったということか。 ELディスプレーにしても、初展示は、消費電力低減可能なハンディゲーム機器でなく、美しく見える小型テレビだったのが象徴的。

●さらに付け加えるなら、テレビの扱いも気にかかるところ。経営的にはもう崖っぷちの事業に映るが、事業の役割がどうなっているのか見えないことが気になる。今もって、テレビは家庭のエンタテインメントの核だし、コンソールゲーム機器事業もそれが前提だからだ。
そんな商品が、スーパーの特売山積み商品的地位に陥っている。ワクワク購入感皆無のジャンルということ。先頭に立って、この状況を突破して欲しいというのが外部の期待だと思うが。

(data source) Tablet Competition Heats Up: Kindle Fire Captures more than Half of Android Tablet Market April 26, 2012 comScore Press Release


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