IBMがPOS事業を東芝テックに売却とのこと。
多くの人が予想していた通りの展開だが、もしかすると、これをきっかけとして、日本のITシステムベンダーが変身を始めるかも。
もっとも、この案件から、そんな流れが直接読み取れる訳ではないが。
素直にこのニュースを読むだけなら、こんな解釈になろう。・・・
●東芝テックの力量は、この分野の日本市場では圧倒的。しかし、海外市場で、その力がそのまま通用すると考える人は稀。日本市場は、ケータイでなくとも、ガラパゴス状態だからである。使い勝手に関しての細かな気遣い、様々な新技術の投入、個々の顧客毎に合わせた調整、等々、素晴らしいものが多いが、それが海外で競争優位に繋がると考える訳にはいかないからである。従って、グローバル企業として発展していくためには、IBMの事業取得は極く自然な流れと言えよう。
●一方、IBMにしてみれば、相当前から、この事業を抱え続ける必然性を失っていた筈。パソコン事業同様、優れた自社機器をウリにしたシステム事業推進には、関心を失って当然だからである。
さて、ここから、何を読み取るか。
●IBMが考える将来社会とは、おそらく、標準化されたビジネスの仕組みが普及している世界。そこで活躍するグローバル企業にITサービスを提供するなら、それに合わせた展開を図ることになろう。そうなれば、グローバルに通用するプラットフォーム上で、適宜モジュールを選択し、それにアクセサリーを付属させるといった体系で対応することになる。この体系から外れる、独自システムの構築は避けざるを得まい。
●一方、IBMの競争相手たる、日本のITベンダー達は違う絵を描いていそう。その一番の得意技は、顧客の独自要求に細かく合わせたシステム作りだからだ。これを重視すると、どうしても手作り部分だらけになり非効率で収益性が低いサービスになってしまう。しかも、実装で問題も生じ易い。しかし、それが日本の顧客の要求なのだから、致し方ない側面もある。もっとも、真正直に100%カスタム受注をしていたらたまらない。適度に標準的なものを使うことで、収益があがるように、上手にバランスを取っている訳だ。そこら辺りを一番上手にこなしてきたのが、日本IBMだったと言えるかも。
この日本型事業だが、海外展開せざるを得ないなら、この先も同じことを続ける訳にはいかないのでは。日本のユーザーも、独自仕様のITシステム構築にこだわったところで、費用が嵩む割りに得られるメリットが僅少なことに気付いていない訳でもないのだし。
そうなると、日本のITベンダーは仕事の進め方を変える必要に迫られよう。個別対応ということで、人月単位の工数を水脹れさせる、薄利多売型ビジネスから足を洗うしかないのである。
日本型進め方の典型例。
(ステップ1)顧客の要求をできる限り受け入れ大型のプロジェクトにする。
・・・錯綜した顧客の考え方を放置。(ドブ板営業による受注。)
(ステップ2)細々とした機能毎に下請けを駆使して数多くのモジュールを作る。
・・・膨大なマンパワー投入。丸投げ方式で、既存品類似プログラムを多数作成。
(ステップ3)モジュールを寄せ集め、稼動困難が判明したら、鳩首会談。
・・・優秀なボスの投入で対応策検討。大胆な妥協。
(ステップ4)ボスの采配でバサバサと機能を削除し、実装のプロを投入。
・・・稼動。驚異的。(失敗もあるが、それはトップ交渉によるうやむや化で幕。)
(ロイターニュース)
東芝テック<6588.T>が米IBMのPOS端末事業買収、世界シェア首位に 2012年 04月 17日 12:10 JST
UPDATE1: 東芝テック<6588.T>、米IBMから流通業向け情報端末事業を買収 680億円で
2012年 04月 17日 16:43 JST
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2012年 04月 17日 21:57 JST