日経1面に「キヤノン、デジカメ生産を無人化」。
いかにも経済紙らしいニュースで好感が持てる。
どの新聞でも、社説は政治的思惑がらみで胡散臭さ紛々。そんなものに力を入れるより、こういった記事を打ち出す方に力を入れて欲しいもの。できれば記者の解説付きで。この記事では、「コスト競争力を高めて、もの作りと研究開発の基盤を日本に残す」方針をイの一番にあげている。これこそ主張そのもの。
思うに、キャノンの派遣労働者は正社員の代替との批判のお陰では。
マスコミあげての批判の大合唱となれば、競争力向上に本気で取り組んでいる企業としては、大変身せざるを得ないからである。
言うまでもないが、手っ取り早い対処方法としては、工場の全面海外移転がある。しかし、細々とした緻密なアセンブリで製品の特徴を出してきた企業だと、できれば避けたい手。
そうなると、コア業務の担当者だけを正規雇用とし、単純軽作業は全面外部委託する方向に進まざるを得まい。この場合、難しいのが生産現場における競争力維持。重い人件費負担では、とても勝てないからである。
もちろん理想論でよければ手はある。無人工場だ。しかし、モデルチェンジ毎にかなりの投資が必要になったりしかねず、そう簡単に踏み切れるものではない。それが常識とされてきた。それを突破するというのだから、流石。
この動きをマクロで考えれば、国内総雇用者数は減少ということ。そして、安価な賃労働に従事する人の割合が増えることを意味する。
これが、派遣解消運動の結果なのである。雇用を増やしてきたのは、もっぱら大企業と介護関係であるにもかかわらず、反大企業運動を繰り広げる神経にもあきれる。まあ、それがレゾンデートルなのだから致し方ないのだろうが。
もっとも、Pro企業勢力ならよいかといえば、それはもっと問題であることが多い。
仕事がないにもかかわらず、ただただ雇用維持を図ってきた大企業の姿勢を評価しているだけにすぎないからである。儲かっている企業の工場のなかには、地域一の給与をもらっている労働者だらけのところもあったりして。
企業経営からしてみれば、閉鎖が最善なのだが、そうはいかないのである。工場縮小の噂でも流れれば、即刻、中央のボス政治家が動く仕掛けだからだ。
日本の政治運動は、まだ、この次元で彷徨っているのが現実。
政治的な雑音を気にせず、ただただ将来を見据えて、競争力強化を旗印に走り続ける企業がもっともっと出て欲しいものだ。
それ以外に、日本没落を避ける手はなかろう。
(記事) キヤノン、デジカメ生産を無人化 世界初
15年メド 主力工場は国内で維持 2012/5/14 2:04 情報元 日本経済新聞 電子版