世間的には高給取りとみなされている方から、先日うかがった、ごく個人的な話。・・・子供が米国の大学入試をパスしたが、家族会議の結果、留学をとりやめたそうだ。金銭的なハードルが結構高かったとのこと。かつての状況とは様変わりした感じ。
実際、「米国の日本人留学生は2010〜11年の学期で2万1290人と前年比14%減った」とのこと。
その主な理由は以下の3点と言われているらしい。
(1) 費用など経済的な問題
(2) (一部で指摘される)学生の「内向き志向」
(3) 学生が新興国に注目
レベルが違う「理由」が並んでいるので、すっきりしないが、実際どうなっているか分析する気力は無い。とはいえ、多少は気になるので、ちょっと考えてみた。調べた上で書いていないから、間違いもあるかも。この先をお読みになるなら、そのつもりで。
米国留学者の大半は若い人達だと思われる。ところが、だいぶ前から若者人口は漸減状態。留学希望状況にたいした変化がなくても、留学生の数が減るのは当然の流れなのだ。だが、前年比14%減はそんなレベルの減り方ではない。
もしも、希望状況にたいした変化がないなら、留学を中年以降に延期した若者続出ということかも。それと、予算カットによる、派遣留学のガタ減りもありそう。
ともあれ、経済的な問題が大きく影響していそう。
昨今は、大卒だからといって就職できるとは限らない。そうなると、とりあえず留学という訳にはいくまい。帰国したら就職浪人という可能性もなきにしもあらず。科挙的大学入試の国のような留学熱はもともと無いから、留学を躊躇して当然かも。
しかし、それでも留学したい若者は少なくないのでは。だが、留学希望の学生を抱えている家庭の収入は、以前留学生を送り出した家庭のレベルに到達していない筈。そうなれば、長期的な家計を勘案すれば、留学に踏み切れないことも多かろう。
ざっくり考えても、出費は結構嵩みそう。国内でも、それなりの額が必要とはいえ、絶対額でかなり増えるのは間違いない。
(直接的支出)
・留学情報収集、試験勉強、出願等の費用は、それなりの額。
・留学先での生活を始めるための準備渡航滞在費用はかなりの額。
・入学前の語学学校費用。
・一時帰国費用も加算の要。
・米国の私学だと、授業料が年間2万ドル以上。
・本代として年間千ドルは不可欠。もちろんパソコンも必須。
・生活費は現地の人でも年間8千ドル程度は必要か。まあ、その3割増程度か。
・住居費用と食費以外になんやかやで年間3千ドル。
・医療保険が数百ドル。
・別途旅行保険が年間換算で15万円程度か。
(うべかりし損失)
・日本の大学を休学すれば、卒業が遅れるので、当該期間は収入損失。
・国内と違い、留学中の現地アルバイトは無理。
次に、学生が新興国に注目しているとの話だが、これは最近始まったものではなかろう。
確認していないが、留学生数における米国のシェアが5割を切ったのは相当前。新興国だけでなく、欧州留学も増えたからだ。しかし、とうに、どちらも頭打ち状態と耳にした。日本企業が現地採用してくれるが、それは現地給与水準でしかなく、日本での採用となると、留学が格段に有利ともいえないからと聞いたことがある。さもありなん。
こんな風に眺めると、学生が「内向き志向」というよりは、現実をよく踏まえているということでは。冷静に、投資とそのリターンを計算しているということ。それは自分の身の振り方だけでなく、引退後の親の生活も考慮に入れての話。(親が子供を独立させないから、こうなる。)
すでにキャッチアップ時代は終わっており、周到なキャリア計画無しに、米国でいくら頑張ったところで無駄に終わる公算が高いという感覚ではなかろうか。挑戦の気概を欠くというより、無謀な行動を避けるといったところでは。
すでに、短期間のアルバイトの稼ぎで、海外旅行ができる時代に入ってからずいぶんたつ。海外に出たければ、自分の力で、いつでもすぐに行けるのである。留学に特別な感情を抱くこともないのでは。
それと、すでに、海外旅行を通じて海外の体質を理解している点も見逃す訳にはいくまい。人種排他的で、好戦的な態度を肌で感じ取っている可能性が高いということ。キャッチアップの時代なら、それに抗して生き抜く気概が自然と生まれるもの。だが、現代の若者がそんな感覚を覚えるとは思えない。キリスト者的に育った人でなければ、そのようなコンフリクトは避けたくなるのでは。・・・そんな姿勢を「内向き志向」と呼ぶこともできなくはない。
(米国国務省の留学情報サイト) http://educationusa.state.gov
(記事) 学校訪問し留学促す パトリック・リネハン米国総領事に聞く 関西in outグローバル 第4部(3) 2012/4/6 2:00 日経
(当サイト過去記載) 留学市場の変化(2006.6.20)