■■■■■ 2012.6.6 ■■■■■

 今や、パキスタンとサウジアラビアが頭痛のタネ

えらく気になるのが、パキスタンにおける米軍のアルカイダ殲滅作戦。諜報活動をベースとした特殊工作部隊と無人機攻撃を組み合わせ、効率的に国際テロ組織撲滅活動が行われている訳である。
現地では相当な反撥を招いているとの話が多いが、それを、国際法上の問題とか、覇権国による国家蹂躙という視点で眺めていると、ことの重大性を見失うのではないか。
と言うことで、一寸、書き留めておくことにした。

言うまでもないが、これは米国の政策転換に基づくもの。ヒト・モノ・カネを浪費する世界最強の大部隊派遣を止めた訳である。
アルカイダ掃討作戦だけ眺めていると、この方針が奏功しているように映る。しかし、世界の今の流れを考えると、恐ろしく危険な選択をしているのでは。長期的視点では、この作戦はアルカイダ型組織増出効果を生んでいる可能性が高いからだ。

こうした特殊工作重視路線は、対アルカイダだけでなく、アラブの反米独裁政権打倒の際にも使われている。典型は、カダフィ独裁政権打倒。これもミクロでは大成功。だが、お陰で、北アフリカ一帯は、大国家エジプトを含めて、宗教原理主義勢力の実権奪取の流れを作り出しているのは間違いなかろう。民主化や地域安定化が進んだとは言い難いというより、その逆と見てよいのでは。ただ、そうなっても、どの国も、経済的鎖国化の動きには繋がりそうになく、グローバル経済にとって深刻な問題が生まれることはなさそう。イラクのように、国内治安の悪化はあるだろうが、つらいのは、各国の民どまり。
しかし、パキスタンの全面的反米化の流れはそういう話と次元が違うのでは。
サウジアラビア同様、この国は例外的存在だからだ。そう、ここでの主流思想はインターナショナリズムということ。

今や、先進国だろうが、発展途上国だろうが、反グローバリズム感情が花盛り。
仏大統領選ではっきり示されたように、右翼国粋主義への支持は盛り上がっているし、左翼といえば国家社会主義的政策強化に余念がない。どれもこれも、基底はナショナリズム。
イスラム圏でも、もはや汎アラブ思想は過去のものと化し、宗教原理主義勢力も、その内実は国家主義的組織。アフガニスタンのタリバンさえアルカイダ潰しに動いていそう。インターナショナリズムを掲げる組織は一番の敵とされる時代なのである。

そのなかで、パキスタンとサウジアラビアは未だにインターナショナリズム的正義感が通用する社会のようだ。両国とも排他的な宗教文化を御旗に掲げている人達だらけだが、ナショナリズム感からではなさそうなのである。これはえらいこと。国際武装組織創出の源となりかねないからである。

厄介なのは、先進国内にエスニック地域が存在する点。グローバル化が進んだため、そこここに異文化コミュニティができあがっているが、そこに祖国感喪失の若者が多数存在するのである。経済不調で、どの国もナショナリズムが勃興しているが、こうした若者はその流れに乗るどころか、敵視の対象となりがち。その閉塞感たるや、ただならぬものがあろう。そんな状況を見越し、サウジアラビアとパキスタンから、インターナショナリズムのオーガナイザーが間断なく訪れている訳だ。
これが、どのような結果をもたらすかは自明。

(ロイター記事)アルカイダの「ナンバー2」、米軍無人機の攻撃で死亡か 2012年 06月 5日 15:02 JST


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