■■■■■ 2012.7.11 ■■■■■

  コムギ腹本がベストセラーとは

米国の肥満の原因は全粒小麦紛だと説く「Wheat Belly」という本がベストセラーに。(ニューヨークタイムス July 15, 2012で2位)
小生は、紹介をチラ読みしただけで、本文覗き見をする気がしなくなった。どうも、パン、ベーグル、ドーナッツ、パンケーキ、ワッフル、ピザ、パスタ、シリアル、麺、等々は止めろというに近い主張らしいのだ。

蕎麦同様にアレルギーがあるから、小麦を嫌う人もいるだろうし、低炭水化物ダイエットを執拗に勧める方も少なくないので、ここまで来たかという印象を持ったのだが、どうもそういうことではないようである。なにせ、精白しない全粒紛は最悪というのだから。よく耳にする臨床報告例を全く考慮しない主張なのだ。
従って、「小麦恐怖症」本との指摘は当たっていそう。
と言うか、おそらく、遺伝子操作反対勢力の新たな動きなのだろう。
小麦のお陰で太るだけだなく、様々な疾病というか、あらゆる病気が引き起こされているとの、一大キャンンペーンを打ち出しているということかな。

流石に放置しておく訳にもいかず、丁寧さには欠けるが、とりあえず反論も始まったようだ。そのポイントは以下のようなもの。
(Claim)
 ・たいていの穀物は悪。今の小麦は最悪。
   -アミロペクチンA含有
   -血糖値上昇(食欲刺激)
   -グルテン反応性向上
  ・・・今の小麦とは 交配の結果生まれた“Frankengrain”である。
(Fact)
 ・どの種も、長期に渡り、収量増のための作物改良が行われてきた。
 ・新品種が健康栄養上での差があるとの臨床的証拠は出ていない。
  ・・・現代農業への恐怖感を広めようとの意図での主張と見るべき。

宗教対立に近いから、この手の説得が奏功するとは思えないが。
日本では、コナモンB級グルメ全盛だし、ミニクロワッサン、ベーグルサンドイッチ、ベルギーワッフル、ソフトドーナッツ、ハワイ式パンケーキ、と次々と流行が作られており、今のところは反コムギ運動の兆候はないようだが、はたしてどうなるか。

小生はアンチ炭水化物論が非科学的思考の流行の元凶ではないかと見ている。摂取しすぎが悪いというのは、どんな成分だっておなじ話であり、一成分を取り上げて目の仇にする思考法は最悪だと思う。なかでも、甘味はヒトにとって重要な成分。これを避けるのはどうかと思う。実は、そんなことを感じさせるニュースが流れたばかり。・・・
乳頭温泉近くの岩手・秋田県境の山林で行方不明の78歳男性が、なんと20日ぶりに救出された。ブルーシートにくるまり、あおむけに横たわり、沢の水と持っていたチョコレートなどだけで、生き延びたのだから、まさに奇跡。脳の活動を支える糖分供給が可能で、低体温さえ防止すれば、ヒトは丈夫なことがよくわかる。

(本)William, M.d. Davis: "Wheat Belly: Lose the Wheat, Lose the Weight, and Find Your Path Back to Health" Rodale Pr (2012/1/1)
(批判記事)"Wheatophobia: Will Avoiding Wheat Really Improve Your Health?" August 2012 Berkeley Wellness Letter
(救出記事)78歳男性を20日ぶり救出 タケノコ採りで入山 岩手 2012年07月09日 河北新報
(当サイト過去記載) まともな栄養学に期待したい(2012.7.1)


(C) 2012 RandDManagement.com    HOME  INDEX