遺伝子解析による日本人のルーツ探し本をしばらくぶりに眺めてみた。じっくり読み込んだ訳ではなく、パラパラと目を通した程度。そもそも、この手の本の選択眼がないから、題名で適当に数冊選んだだけ。従って、内容も質もマチマチ。そのせいもあるのか、そういうデータもあるのだな程度の読後感でおわってしまった。時間の大損というほどではないが、イマイチ感は残った。
せっかくだから、備忘録がわりに気付いたことを書き留めておくことにした。
思うに、この手の本の一番の欠点は、恣意的な論理を繰り広げているように映る点では。もう少し書き方を工夫したらよそそうなものだ。
なにせ、ある場合は、この住民は別な場所から追い立てられたとの説明がされていたりする。そうかも知れぬが、それなら、現代人の近縁性を調べたところで、地理的な意味付けをしてもたいした意味はないことになる。いかような古代分布仮説も可能ということになるのでは。どうでもよさそうな説明は長いが、肝心な論理の説明は短く雑なのである。まあ、そういう手の本ということかも知れぬが。
●「白血球の型」での一種のクラスター分析的なものは結構面白い。
様々な結果がありそうだが、素人が見ると、概略、以下のような近縁構造になっていそうに映る。本当かネ、というのが正直な印象。
アフリカGroup
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欧州Group
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東北アジアGroup
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|−日本−沖縄−サハリン−アイヌ−−−中南米Group
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東南アジアGroup
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台湾(先住民)
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パプアニューギニア
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オーストラリア(先住民)
太平洋島嶼人のデータを説明してくれると、それなりの気付きもありそうだが、上記のような大雑把なデータを眺めてしまうと、正直のところ、ナンダカネの世界。こんなデータで日本人の故郷を議論されても、耳を素通りするだけ。
もっとも、それは小生の場合で、納得感を覚える人が多いのかも。
●「ミトコンドリアDNA」で見ると、さらに面白い。
こちらは、世界を網羅的に見ることができるから、日本人の位置がわかり易い。素人が眺めると、系統は以下のように映る。
アフリカ系1
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アフリカ系2−アジア系1
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アジア系2−欧州系1
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アジア系3−欧州系2
日本列島にはアジア系のすべてが存在する。
発掘骨のデータもあるが、それが当時の代表例と言えるのかはなんとも言い難し。他にデータが無いとはいえ、雑種を議論するのだから、一寸無理があるような気がする。
どう読むべきかは素人にはよくわからないが、古代から、様々な系統の人がバラバラに存在していたということだけは確かかも。古い骨といっても大昔という訳でもないから、もしかすると石器時代からすでに様々な人達が混交状態で暮らしていたということかも。勝手な推測だが。
残念なのは、移住民との混交が少なさそうな「○○ネシア」系の太平洋島嶼のデータを説明しようとの気が感じられない点。(尚、台湾は参考にならない。)大陸から隔たっていれば、そうそう人は移動できないだろうし、どの程度遺伝子の多様性を有しているかの情報は貴重だと思う。そのパターンと日本列島を比較するだけでも、様々な示唆が得られると思うのだが。
太平洋島嶼と違い、大陸の場合は、古代の人と今の人が同じであるとは限るまい。欧州は色々なタイプがあるといっても、世界でみればほとんど一塊に過ぎない。このことは、欧州では、他の人種を消し去ったことを意味しているのかも。
ミトコンドリアは母系遺伝子だから、言語系統と親和性があると考えられるが、そんな感覚で考えると、印欧語族に祖語があって当然。原住民を滅ぼしながら、大移動を続けてきた系統と考えると妙な納得感が生まれるからだ。ご存知バスク語は、印欧語族のなかの孤島。滅ぼされたクロマニョン人の末裔が昔の言語を守っていると想像したりして。
同様に、日本語は超古代の「オーストロネシア」系言語の雰囲気を残していると見ることもできそうだし。
●男系の「Y遺伝子」のデータも結構揃っているようである。
素人からすると、母系の結果とそれほど違っているようにも思えないが、そんな解釈でよいかはよくわからない。ただ、読み方によっては、かなり異なる全体像が見えてきたりする。
そもそも「アフリカGroup」なるものを考えておきながら、アイヌと沖縄の差を見るというのはナンセンスという気になったり。その程度の違いなど、「アフリカGroup」で見ればほとんど誤差のレベル。アフリカはとんでもなく多様なのである。印欧語族など、まさに小さな一塊にすぎない。
そして、日本列島だが、やはり毛色が違う系統が存在している。相当に古い持代に分岐したと思われる3系統が、狭い地域に同居していることになる。欧州というか、大陸の常識では、3種共存は考えにくかろう。侵略の結果せいぜいが、古い分岐の2種状態。
だが、そんなことより、驚かされたのは、日本特有の遺伝子タイプが存在している点。おそらく、相当な古代に日本列島に住みついていた人の末裔。大陸にその先祖を探そうとすると、それができないのである。同じタイプは極く僅かな人が朝鮮半島にいるだけ。ところが、タイプは異なるが同系統が、雲南とチベットに存在するのだ。どういうことかネ。
西アジアから中国を経て日本に古代人は渡ってきたというのが定説だが、すでに住み着いていた、この系統の遺伝子の人を蹴散らかしたということか。
もしもそうだとしたら、日本人の源流を探すという発想を考え直す必要があるかも。僅かに残った古代の仲間は、チベットと雲南ということになる。もとからそこに住んでいた人達かはなんとも。
小生は、日本人のルーツを考えるなら、太平洋島嶼人は検討対象から外してならないと思う。と言うか必須。蒙古斑を持つ人達であり、近縁性は必ずある筈だからだ。
全世界、陸の至るところにヒトが住み着くようになり、処女地たる海に向かった人達がいた訳である。○○ネシアの人達がその末裔なのは間違いなかろう。簡単に移動はできないのだから。素人だからよくわからないが、島嶼への移住は紀元前2000−1000年頃のことだろうか。根拠地はどうせ東アジアのどこか。最終的にはハワイ諸島やイースター島まで到達したのだから凄い。南米にも行ったに違いない。そんな海人が、黒潮に乗ろうと考えなかった筈がなかろう。ヤパネシアこと日本列島弧に到達していて当たり前では。伊豆半島と神津島間の黒曜石航路など屁の河童で、小笠原航路があってもおかしくないのである。
理由は定かではないが、この手の話題を避けるのが暗黙のルール化していそう。本当の話は人気が無いということか。