■■■■■ 2012.7.26 ■■■■■

  化石哺乳類の絵を眺めての気づき

調べモノで図書館に立ち寄ったが、そこで偶然出会った1.5Kgの図鑑についつい見入ってしまった。
手にとって開いたページがたまたま絶滅爬虫類エステメノスクスの絵。発音すると舌を噛みそうなお名前で、小生にはもちろん初耳。正直ビックリ。
命名の話でなく、そのお顔。お面だったか、土像だったかは定かでないが、どこかで見た覚えがある。それこそ、デジャブ感。ひょっとしたら、絶滅爬虫類の面影を伝承してきた人達がいるのかも。
という調子に頭が働くので、この本なかなか面白い。電子書籍なら即購入したかも。
ともあれ、そこには、小生が全く知らなかった絶滅哺乳類の世界が展開されていたのである。そして、大いに考えさせられた。

化石動物学だから、部外者にはわかりにくいことこの上ないが、網羅的に記載されているので、全体像が伝わってくるから圧巻。これがなんといってもありがたい。
解説を読んで状況を想像すると、まるで、パズルか頭の体操をしているようなもの。もっとも、こうした反応に関しては個人差が大きそうだが。

なんといっても、この手の本で素人が理解し難い箇所といえば「分類」。マニア諸兄はそれが嬉しいのだろうが、科学好きならそれこそコリャナンダカネの世界である。普通、分類とは、特定の視点で、A、B、C、その他、といった具合に分けるもの。網羅性を重視するからである。ところが、そんな常識は全く通用しないのである。例えば、以下のような分類が行われる。これが現実と言われてしまえば実も蓋もないが、どうにも納得しがたいのである。
 A 鼻が長い。
 B 前歯が鑿のようになっている。
 C 足にヒズメ2つがある。
 D 空を飛べる機構を持っている。
 E、F、・・・と、いくらでも、追加されていく。
つまり、これは分類ではなく、ある種の一部の特徴が肥大化していく際の、原種と新種の分岐にはどんなものがあるかという、現時点で判明したリストというにすぎまい。従って、このリストを眺めながら、どうして分岐したのか、あるいは、どうして絶滅したのか考えることができる訳である。しかし、この点に関しては未だ実にプリミィティブな議論しかできないようだ。情報が余りに少ないから致し方ないとはいえ、想像を働かせれば様々な見方ができるのに実に残念な話。

しかし、化石の骨相学を極めれば、様々なことが読めそうで、その辺りで議論すればもっと面白い話がでてきそうな感じがした。そう思ったのは、爬虫類の分類表現に奇異な感じを受けたからでもある。
最初、下記のような記述を読んだ時はひっくりかえりそうになった。あまりに恣意的な分類に映ったからである。
 A 現在のカメに至る系統
 B 哺乳類の祖先に至る系統
 C その他すべてということかナ
   (ヘビ、トカゲ、ワニ、等。及び、恐竜、等。)
要するに、哺乳類類似爬虫類(B)とそれ以外(A+C)に分けただけでは。ただ、それに、とってつけたような例外(C)を1つ付け加えたとしか見えまい。だいたい、その他に入る種が余りに雑多だし。それこそ、素人からすれば、なんだかなー。
ところが、解説を読み進むと、頭(蓋)骨の側面の窓穴の数で分けたというのだ。ほほー。
 A 穴無し
 B 1穴
 C 2穴
頭の窓としては、他には、口、鼻、目がある訳で、それ以外に脳に繋がる感覚器官がどれだけあるかということか。それにどんな意味があるのか気になるところ。
2穴になると、骨の構造上、歯を支える顎の動きの自由度を大きくとることが難しいのか、決まった形になってしまうようである。一方、無穴だと単純構造で、1穴なら、様々な噛み合わせが可能ということのようだ。その結果、色々な形態な歯が生まれる訳かネ。
要は、餌の探索や危険察知能力を磨くより、なんでも食べることができることを重視して、餌の対応で多様化したのが哺乳類ということか。

その哺乳類だが、もちろん幼体をミルクで育てる脊椎動物というだけでなく、毛の覆われている点も必須条件らしい。恒温動物だから、毛による保温なしは原則あり得ないという訳か。多少寒くても、4肢を駆使していつでもすぐに活発に動けることこそが哺乳類繁栄の鍵とされているようだ。
しかし、その実体はなんとも。
哺乳類の祖先は、恐竜の影にかくれるようにして、細々と生きてきた食虫の小生物だと言うのだ。そんな地位にいたにもかかわらず、大型の変温動物が動きがとれない環境になったため、幸運にも、優位に立てただけのこと。大繁栄を目指して戦略的に着々と進化をとげたとはとても思えない。たまたま、場当たり的に新しい生き方を始めた分派が、その生活に合う遺伝子の発現を強化し、不要な遺伝子の発現を抑制するように変化することで、多様化が生まれ、それが発端となって種の大変動勃発と見るとよさそう。

つまり、どの種も、ちょっとしたことで、絶滅の道を歩む可能性があるということになる。たとえサンクチュアリー的な棲家を見つけても、おそらく、流れに逆らうのは無理筋だろう。
そんな風に眺めていると、大型哺乳類はこの先まず間違いなく絶滅すると言えそう。それは、ヒトが繁栄する前からの趨勢で、ヒトによる殺戮が激化したためこの流れに拍車がかかったとしか思えないから。と言うことは、遠からず哺乳類から新しいコンセプトの生物が生まれるのかも。

(本) 冨田幸光[イラスト-伊藤丙雄・岡本泰子]:「絶滅哺乳類図鑑」 丸善 2002


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