■■■■■ 2012.8.2 ■■■■■

  ロンドンと東京の違い

ロムニー大統領候補が英国でのNBCインタビューでつまらぬ発言をしたため、キャメロン首相から強烈なパンチを食らった。
“We are holding an Olympic Games in one of the busiest, most active, bustling cities anywhere in the world. Of course it’s easier if you hold an Olympic Games in the middle of nowhere.”

そりゃそうである。
ソルトレークシティのような田舎町でオリンピックを開催した経験があるということで、ロンドンの運営を批判するなど思い上がりもはなはだしい。

市長が「the greatest in the world」というのも、自惚れとはいいがたいところ。なにせ、世界中から人が集まってくるのだ。
住民の三分の一は外国生まれで、使われている言語は300にのぼるそうだ。
しかし、それほど魅力的な都市であるにもかかわらず、この10年、東部地区の貧困は減るどころかかえって増えているようだ。いや、それは120年前から変わっていないという見方もある。
そんな都市でもと言うべきか、そんな都市だからか、世界の富裕層は争うようにしてこの地に住みたがるのである。
こうした両極の住民にとっては、オリンピックにたいした意味を感じていないかも。そして、同じような発想をしている人もそこここに存在するようだ。コスモポリタンの立場だと、個人技軽視の競技だらけで、見ていてちっとも面白くないかも知れぬし。
そう、多文化ということは、個人の価値観を大切にすることを意味する訳で、ヒトそれぞれなのである。そこが、盛り上がりに欠けるオリンピックと指摘される所以でもあろう。都民もオリンピック誘致にさっぱり関心を示さないが、似たところがありそう。

東京もロンドンに劣らず面白い都会だと思うが、体質的には正反対。非日本人は増えているがそれはあくまで「外人」でしかない。様々な文化が流入しているが、それは東京に住む人達が愛好している類のもの。この種類が半端ではない。しかし、それは日本流にアレンジされたものであったりする。多文化だが、問題が発生しないようにコントロールされた代物なのである。

ロンドンに都会としての魅力を感じるのは、世界の富裕層と、オカネが無いとか、命の危険に晒されている層だと思われる。
こうした層は、おそらく、そんな東京にはさっぱり魅力を感じまい。勝手気ままなことができず息が詰まるに違いないから。

しかし、海外でも、アッパーミドルと低所得層なら、東京を住み易いと感じるかも。
前者は、ロンドンの邸宅を購入するようなオカネはないが、都内で生活していれば上流層として大切に扱われるからだ。しかも、東京には、世界中から到来する様々なモノやイベントが溢れかえっている。当たり前だが、日本の機能が東京に一極集中しているから、探せばなんでもアリの世界。こんな風土に体質が合えば、飽きることはない。それにサービスの質が全般的に高いのも、住み易さのうち。一旦、その心地よさにどっぷりと浸かってしまえば、東京から離れたくなくなるのでは。
一方、低所得層にとっても、東京で生活するのはそう悪くないかも。一般に、都会で低所得者層が住むエリアは物騒この上ないが、東京はその点ではかなり安全。極貧に落ち込まなければ、工夫で、それなりの生活ができる筈。住んでノウハウを身につけさえすれば、結構愉しい所では。
ただ、東京の場合、こんな状態をいつまでも続けることができるのかははなはだ疑問。

(記事) Romney’s Remarks on Olympics Cause Stir in London By ASHLEY PARKER July 26, 2012, 10:00 am New York Times
London: The world in a cityBy James Pickford and Chris Giles July 23, 2012 10:44 pm Financial Times


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