「クマの餌となるブナが大凶作となる見込みであることから、ツキノワグマが例年に比べて大量に出没する」といった話がとびかっているようだ。
ブナの木とは、もともとその手の植物。ドングリを食べ尽くされては繁殖上大いにこまるから、実がほとんど生らない年をつくることで、動物の数を調整しているというのが、常識的見方である。
従って、凶作になれば、人里に出てくるというのはまさにその通り。しかし、ブナの森はもともとそういう仕組み。それが原因でクマの生態が変わったかのように主張するのは、どこかおかしくないかナ。
昔は、熊は人里には近寄らない動物だったそうである。山道で、登山者が突然出くわしたりするが、両者ともびっくり仰天して、たいていは熊の方が逃げる。
ヒトが怖いからである。
何故かと言えば、そこここの村には、その奥山を歩き回って熊を仕留める猟師が必ずいたからである。熊が山で人を襲ったとの報が入れば、即座に山狩りできる体制が整っていたということ。
しかし、猟師の仕事は楽なものではなかった筈。特に、ブナ林が伐採され針葉樹植林が進むようになってからは、奥山でも、熊の姿をなかなか見つけられなくなったからである。(言うまでもないが、冬眠直前の積雪が始まった頃が狩猟期。)
ところが、熊を狙うような猟師の数が激減。まあ、猟師として食べていけるとは思えないし、素人に毛の生えたハンターでは役に立たないから、当然の流れではある。
結果、熊の頭数が激増ということではなかろうか。
それだけではない。ヒトを恐れなくなる。しかも、ヒトの周囲には食べ物も豊富だから、クマがヒトに近寄ってくることになる。
なにせ、東京は高尾山の吊り橋辺りまで出没した痕跡があるというのだ。それが2007年のこと。その先の奥多摩では毎年目撃情報あり。もちろん、2012年も。
そんな状態になりかねないことは、実は、前からわかっていたのでは。
かれこれ40年も前だろうか、雪が積もっている志賀高原の辺鄙な山村で、とある農家の方から聞かされた覚えがあるからだ。毛が浮いている、獲りたての兎汁をごちそうになりながら。
ところで、九州では、ツキノワグマが50年以上も生息が確認されていないので、絶滅のお墨付きが出たそうだ。早くから、林道だらけのようだし、植生が熊食向きとは言い難いから当然だろう。
(記事)
クマ出没ご注意を ブナ大凶作で人里へ 2012年8月25日 読売新聞
ツキノワグマ九州で絶滅 環境省、レッドリスト改訂 2012年8月29日 00:12 西日本新聞
東京のクマ 2012年8月28日 奥多摩ツキノワグマ研究グループ
八王子市下恩方町のクチコミ - 高尾にクマ出没! by tukasaさん 投稿日:2009.01.28 旅スケ
(当サイトの過去記載) 2010年の晩秋は熊だらけ(2010.11.15)