渋谷駅がついに大変身する。
2003年春、東急東横線が地下に潜り、東京メトロ副都心線と直結。それを機に、JR湘南新宿線/埼京線のホームが山手線の横に移動してきて、使い勝手が格段によくなる見通し。
ようやく、トンデモ構造の駅からの本格的な脱皮が始まる訳だ。場当たり的で、つぎはぎ策による対処文化を知るには絶好の地だったが、ついに、抜本的な構造改革を進めることになる。
とにもかくにも、この駅の圧巻は、給電用レールで走る小型車両の東京メトロ銀座線がデパート内部の3階で発着していること。地下鉄が他の鉄道の上層階にあり、まぎらわしいことこの上ない。さらに駅のわかりずらさを醸し出すのが案内表示。表示形式は一貫性を欠くし、様々な広告に紛れて表示を見逃しがちだから、初めての人には矢印を辿って改札に行き着くのは大仕事だろう。
銀座線もさることながら、新しい地下鉄の副都心線も厄介。なにせ、地下5階と深い。渋谷は地形的に谷底だし、様々な路線が入り組んでいるから、こうなるのは致し方ないとはいえ、乗り換えとなれば大事。直通エレベーター無しだから、下手に動けば8階分を登る訳で、健脚の人でもえらい運動量になる。その上、その間の道筋は複雑怪奇。嬉しいのは、迷路遊び好きな人だけでは。
これだけでも東京名所と見なせそう。
もっとも、この乗り換えは理屈だけ。半蔵門線に乗って、表参道駅で乗り換えればよいのである。
これで話を終えてしまうと、フーンでしかない。
しかし、よく考えてみると、プロ意識が希薄な状況で、管理がされて来たと言えるのでは。
駅の利用者の質が桁違いに高かったので、それに甘えているような感じがする。
その質の高さを実感したければ、京王帝都井の頭線の中央改札口に至る連絡通路に行けばよい。ここは、ハチ公広場前の大交差点を見渡せる側が総ガラス張り。高さが不足しているので状況を眺めるには今一つ迫力に欠けるが、歩行者用信号が青に変わった瞬間の醍醐味は味わえる。大群衆が一斉に勝手な方向に動き始めるが、なんの問題も発生しないのだから、これを当たり前と思っていない人には、驚異的情景。欧米観光客は目にした瞬間、凍りつくとも言われている。
そんな話をすると嫌われるから、ここで、岡本太郎画伯の壁画鑑賞をお勧めするのが礼儀である。
このように質の高い人が利用する駅だからこそ、バスターミナルも支障なく運営されているというのが、小生の評価。
なにせ、バスの乗降ルールや、歩行ルールは自明ではないのだ。従って、下手をすれば、様々な方向に急ぎ足で向かう人で混乱してもおかしくないが、そうはならない。指示などなくても、粛々と進むのである。とはいえ、発着するバスの間をすり抜けたりして、急いで通行する人が出るのは当然の話。本質的には事故発生可能性大の構造である。
しかし、その手の批判をできる限り避けるというのも、乗客の質の高さを物語る。余計なことをされると、かえって危険が増しかねないことを知っているからだろう。すぐにわからないような、新たな通行ルールをつくり、整理員を配置されたりすると、良い方向に進むとは限らないと直感的にわかっているのだと思う。
そんな感覚を育ててきたのは、都バスの存在かも。バスの運行管理をするためだけに、大勢の地上管理員が右往左往する状態が続いてきたからだ。ロジスティックスの欠陥モデルを勉強するには格好のサンプルかも知れぬが、この調子で安全管理をしてもらいたい人はおそらくいまい。
そう言われても、バスターミナルを利用したことがない方だとよくわからないか。
ただ、大企業における現場の安全管理を知っている人なら、渋谷を歩けば問題にすぐに気付くと思う。安全管理の第一歩は「整理整頓と掃除」からという発想が感じられないのだ。・・・掃除がいい加減なので汚れがこびりついている場所、掃除が難しいらしくゴミが溜まったままになっている箇所、物置化し雑然とした状態の区域、張り紙ベタベタ通路、等々。
「無駄と無理」も散見される。通行人が少ない所のスペースは広い。安全避難のためとの理屈だと思われる。一方、大混雑がわかっているところの人の流れをスムースにする工夫は僅か。
そんな風土が変わる切欠が生まれそうな気配。
期待したいもの。