■■■■■ 2012.9.15 ■■■■■

  冷戦後の対立構造が見えてきた感じ

世界の安定が急速に損なわれ始めたようだ。

「アラブの春」の実態が表面化してきたとも言える。ムハンマドを冒涜する米国製映画に対する怒りが爆発し、反米運動が一斉に火を噴いた。
リビアでは、ここぞとばかり、ロケット弾を装備した武装勢力がデモに紛れて米国領事館を襲撃。そこらじゅう重火器だらけで、宗教原理主義者が跋扈する地域にしてしまったツケを払わされたのである。

というのは真っ当な見方だと思うが、実は、現象論的。

同時にこれとは違う動きが東アジアで発生している。
言うまでもなく、領土問題。ただ、これは、ロシア、インド、中央アジアと中国間の国境問題ではない。4000年も連綿と続く中華思想を考えればわかるが、中国にとっては、周辺諸国との境とは国境と概念が違うのである。おわかりだと思うが、周辺諸国とは文化的に独自主張ができる能力を持たない人々が住む地域を指す。中華文化に隷属せざるを得ない状況なら、皇帝の命には絶対に背かせないというのが大原則。もともと国際法には馴染まない。
だからこそ、周辺国は用心に用心を重ねてきたというのが歴史。(ついでながら、朝鮮半島の政権はそれが一度も上手くいかず、満州族のように大陸覇権を実現したこともないから、中華コンプレックスの塊の地。従って、ミニ中華思想が蔓延ることになる。)
それに加えて、中国も韓国も世界大戦後の独立達成後の独裁体制の権力基盤強化のために、大いにナショナリズムを活用してきたから、それが習い性になっていることも大きい。

このように書いていると、なにやら長期的に考えていそうな気になってしまう。背景を考えるならこうした考え方もまともだとは思うが、現象論に歴史的見方を接木しただけとも言える。

本質を考えるなら、背景について、もう一歩踏み込んで考える必要があろう。軍事バランスが大きく変わってしまったことと、米国を旗手とする金融経済体制が揺らいでしまったことの2点で、安定性が失われたため、そこここで紛争が発生し始めたとの視点を欠くと問題を見誤るのでは。

なかでも重要なのは軍事バランスが急激に変わってしまったこと。中国の軍事力増強路線もあるが、ポイントとしては、あくまでも米国が通常兵器の軍事力を大幅削減したことの方。しかも、その類の技術開発も抑えてしまった。
中東も東アジアも、古典的兵器による軍事力拡大が続いているにもかかわらず、米国は、その流れに逆行した方針で来たのだから、地域の安定性が損なわれるのは必然。多少の紆余曲折はあるものの、武器は売るから、長期的には、自分らで安全保障体制を確立せよとの政策を採用しているということになる。

まあ、そんな方針もありかナとつい思ってしまうが、グローバル経済を促進させている状況のなかでは、えらく危険なやり方であるのは間違いない。しかし、おそらく、そうは考えない人が多いのである。と言うか、真逆の理屈がまかり通っているのだろう。・・・相互依存の経済体制になってしまえば、紛争を引き起こせば当事者の国は揃って大きな損失を食らうから、次第に紛争を丸く収める方向に向かう筈というもの。
正論だし、部分的には確かにその通り。為政者が依拠する、グローバル経済で潤っている層にしてみれば、感覚が鈍い人は別として、その理屈を肌ですぐに感じ取れる状態だからである。

ところが、現実にはそうは問屋が卸さない。おわかりだと思うが、グローバル経済化にともない、それぞれの国内で見れば、生活レベルが落ちたり、権力を失ったりする人が沢山発生しているからだ。マクロと言うか、グローバルで見れば潤う人の数は膨大だが、各国でみれば大いに潤う人は一部に留まる。そのため、それぞれの国内では、グローバル化が面白くない人達が大量に発生している。
もちろん、この層もグローバル化による経済的メリットをそれなりに享受しているから、鎖国的要求をするまでには至らないことが多い。しかし、不満は募っているから捌け口を求めている状態なのである。従って、ナショナリスト的感情発露の場面が提供されれば、これはは願ってもないこと。
当然ながら、反権力勢力や権力争奪戦を繰り広げている政治屋がこのチャンスを逃すわけがない。ことを鎮めるのは一筋縄ではいかないのである。そして、この手の騒動はこれからさらに盛んになっていくのは間違いないところ。
もちろん、先進国、新興国、発展途上国すべてが当てはまる。

冷戦が終わり、新たなイデオロギー対立の枠組みがはっきりしてきたと言うこともできそう。今はその過渡期。
イデオロギー対立で考えれば、金融資本主義・自由主義・グローバリズム v.s. 反金融資本主義・統制主義・ナショナリズムといったところ。前者が勝利することになるのが必然と思うが、後者によって世の中が騒然となる可能性もある。そうならないように政治家が頑張るとは限らないからだ。
尚、日本における自称資本主義者の多くは前者ではなく後者。旧左翼の位置付けに近いから、そう言われてもにわかに信じ難いかも知れないが、時代が変わったのである。

(記事)
反米デモ 中東・アジアで拡大 9月14日 5時56分 NHK
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駐リビア米大使が領事館襲撃で死亡、米国強く非難[ベンガジ(リビア) 12日 ロイター]2012年 09月 13日 03:24 JST
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