■■■■■ 2012.9.24 ■■■■■

  国際感覚について

世界情勢について様々な人が語っているが、WSJやFTを眺めていそうもない人の主張って一体なんなの、というのが小生の感覚。状況もわからず、槍で突っ込むのはドンキホーテだけでご勘弁願いたいもの。
自民党総裁選挙戦の演説会報道を見ていて突然そんな感じがしてきた。

冷戦終結後は、米国主導のグローバル経済の時代。その核としてのイデオロギーとは金融資本主義。
当たり前だが、ルールなくしては利害調整不能。元締め無くしては成り立つ訳がない。その辺りの感覚を知るには、グローバル経済紙を眺める必要があるのは自明。もっとも、日々、ビジネス情報を必要としないなら、日課として細かく読む必要はない。たまに眺めて、どんな風潮か感じ取るだけでもよいのである。
碌に目も通さず、元締めの意向に無関係に、「世界はこうなるべし」との信念を披瀝されても、なんだかね。逆に、意向はどうせよくわからないから、元締めの言うことを骨抜きにしながら適当に合わせて動けばよいや、というのもどんなものか。そもそも、元締めがその力を失いつつあるかも知れない訳だし。
国際感覚が欠落しているにもかかわらず、それが問題とは思わないのはこまったもの。

もちろん、米国でも、そんなタイプの人達が大勢を占めるだろう。大衆紙を嫌う人でも言えそう。いわば、ボストン・グローブ紙しか読まないが、世界を眺めている気分になれるような人達が存在するということ。
ローカル紙だが、通信社配信ニュースと派遣記者の報告を適宜ピックアップしているし、他紙と同じ質が高いコラムも掲載しているから、これで十分と考えるのだと思う。
理屈ではそう言えなくもない。しかし、こんなスタンスを取っていると、グローバル経済を担っている人達がどんなムードか、実感が湧かないのではあるまいか。時代感覚から外れてしまう危険性があるということ。
グローバル経済紙の雰囲気を知っておく位の努力はすべきだと思うのだが。

ちなみに、September 21-23, 2012のWSJアジア版のWeekend構成はどうなっているか、ご紹介しておこうか。こんなつまらぬことでも、なんとなくわかることはあるもの。
全20頁のうち"Fashion &Style"が最初の4頁。続く、"Culture & Entertainment"が5頁。"Food & Drink"が2頁。住宅不動産関係の広告と"Home & Decorating"で5頁。"Travel"1頁。"Books"2頁。"Auto"1頁。・・・といったところ。
書評は3冊で、話題は、それぞれ、イスラエル陸軍、中国人の特質、愛国心といったところ。大統領選になると、中国叩きキャンペーンと親ユダヤ姿勢を見せつける共和党的な雰囲気濃厚。
ちなみに、食のコラムは20ドルクラスの赤ワインの動向とジャカルタでのカリフォルニア料理のお話。追加情報としては、700ミリのJohnnie Walker瓶が千ドルで発売になったという話と、エルサレム食の紹介。車はBentleyの解説。成る程、アジアはゴールドラッシュということか。
そんなこともあるせいか、旅行はネパールの見所ご紹介。それに付け加えて、旅行巧者から見た、中国の魅力話。

こうした記事が、お好みかどうかは別として、こんなムードで投資家やビジネスパーソンが日々頑張って仕事をしている現実を知っておくべきだと思う。
もし、それが感じとれるなら、政治的にもどんな方向に向かっていそうかの想像もつき易くなる。素人にとっては、これがことのほか重要ではなかろうか。
著名なオピニオンリーダー達の意見は、時に、日本のメディアに紹介されたりはするが、そこには発信者と紹介者のそれぞれの意図がある訳で、そのまま鵜呑みにする訳にはいかないからでもある。

ついでだから、これまで感じてきた「元締め体質」をまとめてみようか。
 ・かなりのお節介やきである。
   -個人の自由を束縛する体制を敷く輩は悪魔的存在に映るようだ。
   -金融資本主義否定勢力の絶滅は最優先事項である。
   -すぐに斧(Axe)を持ち出す体質は古代からの伝統かも。
   -若者の不満が高まると「正義」の戦争につながり易いのでは。
   -戦争をしないではいられないのかも。
 ・ある意味、プラグマチックである。
   -圧倒的な力なくしては、安定した社会の実現は不可能との信念は揺るがない。
   -軍事・食糧・エネルギー関連技術分野での競争相手の登場を許さない。
   -理想を語りながら、カネを稼ぐことを最優先することに躊躇しない。
   -グローバル経済が富を生み出す原動力だから、それに賛成しているにすぎない。
   -他国を都合のよい方向に転換できそうなら、どのような手でも使う。
   -ソフトパワーとは、通常兵器の直接戦闘無しの戦争への転換の対語でしかない。
 ・まとまりにはえらく欠ける。
   -長期包括的な政策を案出し、それに則り粛々と進めるのは肌に合わない。
   -選ばれたリーダーは、よかれと思う方向に一気に進めないと人々は動かない。
   -宗教的な原則論が絡むと、妥協で決着することは難しい。
   -宗教/言語/人種の人口構成変化は他国より相当速い。
   -二大政党政治だが、両方とも極端な主張の勢力を抱えている。
 ・エリート層の固定化が進んでいそう。
   -税負担比率の累進性を欠くため、生活レベルの差は極めて大きい。
   -裕福な層でないと社会の上層での仕事に就くのはほぼ無理である。
   -知的エリート層の質的厚さを、海外からの頭脳流入で維持している状態である。

何を心配しているかおわかりだろうか。

ちなみに、領土問題についての米国上院での議会証言を覗くと、オバマ政権の姿勢がよくわかる。・・・[Hearing] Maritime Territorial Disputes and Sovereignty Issues in Asia; U.S. Senate Committee on Foreign Relations - Subcommittee on East Asian and Pacific Affairs, September 20, 2012 [Witness: The Honorable Kurt Campbell Assistant Secretary of State for East Asian and Pacific Affairs U.S. Department of State]


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