高尾山でのこと。
(その1)
ベンチに座って早めにお昼の弁当を食べていたら、オジサン達が三々五々やってきた。聞き耳を立てていた訳ではないのだが、その会話。・・・
「イヤー、○○さん凄い馬力だネ。流石。俺はまいったゼ。」
それに応えて曰く、
「70近くになって、山登りが趣味になるとは思わなかったヨ。」
そこに、別な方がチャチャを入れ、
「確かに。ま昼間元気なとこ、一度も見たことないシ。」
「ハハハ。毎晩、地下生活だったからナ。」
ホホー、そういう方々がやってくる訳か。
(その2)
ほとんどお客さんがいない茶店の庭で冷えた瓶ビールで喉を潤していたのだが、なんとなく視線を感じた。そこで目をやると、そこには、いかにもファッショナブルな登山者スタイルで決めた、50才前後のグループ。全員立ち尽くして、こちらを眺めていたのである。・・・
なんだかわからないので、軽く会釈。
反応なし。誰一人として小生を見てはいないのである。
ようやく1人が、口を開く。
「予定では休憩じゃないけど。」
しばし、沈黙。
「頂上はすぐだから、イイカ。」
全員ビール。話題は、それぞれの愛車の薀蓄とお気に入りの道路。成る程、アルコールに敏感に反応する訳だ。
ドライブ好きも登ってくるのか。
(その3)
水を飲みながら、遠くの山々を眺めていた時のこと。足元で何者かが動く気配がした。下を見たらなんとダックスフントがこちらを見上げていた。
「○○戻ってこい。」
その声で、ワンちゃんはすぐに離れ、駆けて行った。
こりゃ、まるっきり都会のお散歩気分ではないか。
イヤー、色々な方が来ているもの。
「山など行ったことはないが、高尾山にどうやって行けばいいの?」と尋ねる人もいるので、そんなオジサン向けの高尾山案内でも開陳してみようか。言うまでもないが、標準偏差でいえば、かなり平均から離れているからそのおつもりでお読み頂ければ幸い。
○先ず、服装から。
かつての文部省検定登山テキストの原則には全く従っていないのでそのおつもりで。今や、若い方までステッキ使用の3点確保で歩くようだが、小生は、手足が不自由にならない限り、そんなものを取り入れる気はさらさら無い。それに、頂上まで車が上がってくる「山」だから、万一を考えた装備も全く考慮していない。
・デイパックを背負い、手にモノを持たない。
・歩きなれている靴を履く。
・帽子をかぶる。たたんでしまえるもの。
・天候に合わせたウエアならなんでも。
・山の入り口から出口の間だけ着るもの。
(汗をかいて気分が悪いので、着替える。)
・邪魔なので、傘とレインウエア無し。
・寒くなりそうなら、ウインドブレーカー。
○持ち物は最低限で。予め準備が必要なものは避ける。
・チャージ残高がある電車のカード。
(切符売り場の混雑回避)
・携帯電話。
(緊急連絡用)
・自分で水を入れたペットボトル。
(フタ落ちしないボトルが便利)
・自分で作った簡易弁当と箸。暑い時は保冷材も。
(密封ケースに詰めれば10分で完成)
・オプション:冷凍枝豆。
(ザルにあけ、ざっと流水を通し、密封ケースに詰めるだけ)
・汗拭き用タオル。
(着替えの時に体を拭くだけの用途)
・ゴミ箱行きのパンフレット。
(座る際の敷物)
・電車内で読む本。
(ガイドブック/地図不要)
・キャンディー1袋が入ることもあるが、原則、ゴミが出るモノは避ける。
○行き方。
・平日。(鉄則)
・京王線で終点の高尾山口駅へ。
-京王線時刻表の検討無用。
-車内放送に従い、順次電車を乗り継ぐ。
-空いている先頭側車両に乗る。
・無計画で出発。
-11時に高尾山口駅到着でも十分。
-3時には駅に着くように下山。
-山歩きの時間配分は臨機応変とする。
・天候が悪くなりそうな気配を感じたら、トットと引きあげる。
○歩き方の選択。
高尾山口駅を降りたら、すぐに、駅の右手の細い道をケーブルカー駅に向かって歩く。トイレは何箇所かあるから、空いていそうなところで、済ませる。ついでに、どこかで着替えるとよい。
ともかく、ケーブルカー駅前広場にできるだけ早く着くこと。まあ、10分とかからないが。
広場で、人の込み具合を眺め、以下、(A)から(E)の、どのルートにするか、その場で決めるとよい。好き好き。
(A) アウトレットモールに遊びに行くのが好きな方なら
乗り合いのケーブルカーが最適。
(B) 苦労して登るのは避けたいが、のんびりしたい方なら
リフトが最適。
(C) スポーツジムがお好きな方なら
登山道とは言い難いが、1号路はどうか。
蕎麦の高橋屋の先から、正規の参道を登っていく。
以上は、そのまま道なりで、お寺を経て山頂へ。
(D) ジョギングがお好きな方なら
稲荷山ルートがよかろう。
ケーブルカー駅左手から川を渡って山道に入る。
稲荷山での展望は悪くない。
尾根道で、雑木林的。ところどころ植林地。
高尾山頂近くは階段状の上りが続くのでいい運動。
(E) それ以外の方には
沢伝いの、6号路をお勧めしたい。
ケーブルカー駅左手から川沿いの車道を進む。
病院の手前で左折して、渓流沿いの山道に入る。
運悪く、団体がいたりすると矢鱈騒がしく、興醒め。
まあ、どのコースだろうが、麓から1時間程度で山頂に到達する。案内パンフレットだと90分。帰路は足の調子で選べばよい。
○小生の歩き方(ご参考まで)
沢道である上記(E)の6号路から入り、山頂には行かず、城山に向かい、そこから下山し、相模湖岸を経て、JR相模湖駅に。隣の高尾駅で京王線に乗り換える。コースの高低差はたいして無いから、楽だと思うが、滅多に歩かない方はそうは感じないかも。(駅はどこも標高200m程度だと思う。高尾山山頂は599m、城山が670m。相模川辺りが一番低い筈で、150m前後か。
道筋を順に説明していこう。間違えることは先ずないから、地図は不要。
(1) 高尾山口駅から、修行用の打たせ滝(琵琶滝)まで早足で一気に歩く。
・最初の15分、チンタラ歩くと以後疲れが出る。
・水行見物は非常識。道場側に行かず左の山道へ。
・体が慣れてくると、早足ペースを続けたくなる。
(2) その先にベンチが2箇所あるが、休憩をとらない。
・渓流に降りれるようになっているところがあるが、遊ばない。
・途中の硯岩とか大山橋との命名は、単調さを崩す工夫かも。
(3) 稲荷山の尾根ルートへ向かう分岐点に注意。
・渓流沿いに行けなくなると、小橋で対岸に渡り、別の支流に移動する。
・渓流道の最後は、水がチョロチョロ流れるなかの跳び石路。
・跳び石路に入らず、渓流対岸の道を進むと稲荷山コースに接続。
(大きな表示があるが、その標識前に人が溜まっていると気付かないかも。)
(4) 跳び石路後、水と離れると、階段状の上り。
・案内によれば、ケーブルカー駅前から飛び石路まで約1時間。
・階段の横木を止める杭に踵をのせ、一定のペースで上ると楽。
・途中で休むとかえって疲れる。
・普段、階段を全く歩かない人だと息が切れて階段だけで30分かかるとか。
(5) ちょっとした広場で、ベンチがあるところで早お昼。あるいは休憩。
・早足で、休まないで歩けば、高尾山口駅から40分ほどで到着。
・山頂に近づくと人が多すぎるのでココで。眺望ゼロだが。
・余りに早便すぎると感じたら、紅葉平での昼食とする。
(6) 広場の先に道が3本。左の山道を選ぶ。
・真ん中と左は山頂域周回ルート(5号路)。
・真ん中を進めば、メインルート(1号路)上の山頂下トイレ前に出る。
・右は、3号路で、降りる道。メインルートの迂回路。
・真ん中と右は、車が通行できるように道幅を広くとってある。
(6a) 真ん中の道に進み、トイレ前を経て、山頂に出る手もある。
・山頂は単なる広場で店屋もあり趣を欠く。人が多く埃っぽい。
・トイレと頂上には水道がある。
・南側の見晴らしから丹沢山塊を臨める。雲がなければ富士山の頭も見える。
・頂上に直接繋がるのは、メインルート(1号路)、稲荷山コース、城山方面の3つ。
・見晴らし右手から長い階段を城山方面に下る。山頂域周回ルート(5号路)と交差。
(7) 山頂に上る道を確認しながら、山頂域周回ルート(5号路)を歩く。
・すぐに、稲荷山コースと交差する。
・次ぎが、城山方面の道との交差点。ベンチあり。
(8) 城山方向、つまり「奥高尾方面」へと進む。
・小仏城山と書くのは、八王子城山と区別したいがため。
・小仏峠は城山からさらに先の地名。
・山頂域周回ルート(5号路)と山頂への道以外へ。
・巻き道もありゴチャゴチャ感あり。
(9) 紅葉平のお茶屋の前でのんびり休む。山頂でないから空いていることが多い。
・山頂と反対方向の坂を一寸上れば目と鼻の先。
・ここで、冷えた瓶ビールを注文。持参枝豆がつまみ。
・注文しない時はお店前のテーブル席は使わないのが常識。
・山々の景色を眺めながらしばし寛ぐ。
・地名でご想像がつくと思うが、紅葉期は混む。
[追加] (9a/10-3) 紅葉平を避け、南斜面をのんびり歩く。
・紅葉平に人が溜まっている場合のオプション。
・山頂域周回ルート(5号路)と城山方面路の交差点で南側山道へ入る。
・大垂水方面路とされているが、南側の巻き道でもある。
・途中の分岐で城山方向を選択するだけの話。
・日光に晒されるので夏向きではない。
(10-1) 疲れを感じたなら、又分岐に戻り、北側の道へ入る。
・車が通れる広さの巻き道である。
(10-2) お茶屋から尾根伝いの道を下り城山方向へ。
・桜の季節は別だが、ここから先は人通りが少ない。
(11) 巻き道と合流するが、しばらくいくと、又巻き道がある。
・ここで南の大垂水方面の路に入らないこと。尾根か北側道。
(12) トイレがある広い休憩地に行き着く。一丁平。
・団体が好む昼食地。さっさと通りすぎる。
・茶屋から30分はかからない。
(13) 道なりに、(巻き道もあるが)進めば城山である。
・一丁平から30分もあれば着く。
・近辺になると別れ道もあるが、上る方向に進めばよい。
・しつこいが大垂水方面の路に入らないこと。
・茶屋休業との前提で。ベンチ多数。草地も。
・ここから首都圏が見渡せる。
・反対側からは相模湖が見える。
・眺めが良いとは、日陰が無いということ。
(14) 相模湖方面と書いてある道を一気に下る。
・道をよく見ながら、転ばないようにサッサと進む。
・ガタゴトと無理に体を止めながら下ると疲れる。ともかく、ただただ下るだけ。
・途中尾根道もあるがたいした長さではない。
・眺望は無い。
・最後辺りは急下降。土が崩れているので、歩きにくい。足元をよく見て。
[追加] 葉の量が減ると一箇所だけ眺望点があるのに気付く筈。そこの横道でしばし休憩。
(15) 里に出た地点ですぐに休まない。
・下りる山道が竹林に入り、公園の階段的な雰囲気が出てくると里。
・山道終了地点はトイレ横。ここからは家々が並ぶ舗装道路。
・茶屋が開いていることがあるが休まない。
・道は一寸見にはわかりにくいが、弁天橋方向の表示がある。
・どうあれ、ちょっとした急坂を下り、大通りに出るだけの話。
・大通りの信号を渡れば、千木良バス停留所。
・相模湖行きバスに乗りたければベンチで待つ。
(16) 千木良で、お蕎麦屋に入るか、自動販売機の冷えた飲料で一休み。
・城山からここまで、人によって所要時間は相当変わる。1時間でどうか。
・自動販売機設置店がベンチを提供している。
・道を挟んだ隣の手打ち蕎麦屋は月火水が休業日。
(17) 大通りから、住宅地と畑の道に入り、川へと下る。
・お蕎麦屋横の道を進み、ぶつかったら左折すると神社横。
・神社横の住宅の傍らから、下りの山道に入る。
・初めてだとすぐにわかりにくいが、標識はある。
(18) 相模川に下りる道からの眺めはなかなかのもの。
・この辺りで人に出会った覚えがなく、静か。
・降り切ると、沢を渡る橋があり、渡ると左が露営地。
・大通りからせいぜい10分かそこらで着く。
・この沢は水量豊だから、渓流で手足を冷やすのも手。
・キャンプ場的雰囲気とは違う。鶏が歩いていたりして。
・生活臭紛々の掘立小屋横に弁天橋という表示があり、そこが道。
・道が見えないので、なんとなく行きづらいが、躊躇する要なし。
(18a) ここから、相模川を渡らず上る手もある。
・沢を渡った橋から、道なりでしばし上るだけ。
・バス道路に出るが、道路の反対側に見学可能な宿場本陣あり。
・相模湖行きバスに乗りたければバス停あり。歩いてもいいが。
(19) ヒト専用の弁天橋からの眺めをしばし楽しむ。
・相模川が向きを90度変える場所。
・おそらくは、人影なし。両岸は高く、木々で覆われており、広い川面は緑色。
・対岸はキャンプ地。
(20) 川を渡ったら、階段と舗装道路を登り、平地へ。
・歩き疲れが出る頃だから、のんびりと。
・トイレもある。
・上り切ると左側に養護学校。
・すぐに自動車道路に出ないで、畑横の道を歩く。
(21) 二車線道路に入ったら、相模湖方面に歩くだけ。
・車は滅多に通らない。人もいない。
(22) 相模湖大橋を渡る。
・弁天橋から20分くらいのもの。
・ダム上の橋は工事中。
・巨大な車がバンバン通る大橋の歩道を通る。
(23) 相模湖沿いに散歩。
・相模湖大橋から、湖沿いの歩道を歩く。
・ほどなく、公園に入ることができる。
・平日はほとんど人はいない。
・さらに進むと、寂れた観光地的風情の領域。
・トイレの先に廃業したと見える渡し舟待合あり。
・その横をさらに進むと、駅に続く道の標識あり。上り道。
(24)JR相模湖駅から乗車し高尾駅下車。
・湖畔に直角に上れば駅ということ。
・適当な場所で汗だらけの服を着替える。
・尚、喫茶店と食堂が相模湖駅前にある。
(25)高尾駅で京王線連絡口側で外に出て一休み。
・駅に近接してスーパーが直列配置で2店舗。
・ファストフード的なお店が数店あるだけ。
・高架下の蕎麦店で好みの日本酒とつまみで気分転換。
(26)京王線で、すぐ来た電車に乗って帰路につく。
・普通でも、乗り継ぎで準特急接続になる。
・平日で座れない状況はおよそ考え難い。
○結語
お勧め内容はお分かりだろうか。・・・夜になって、翌日の予定がたまたま空くことがわかったら、気分転換にお昼を食べに行くという手の休養にせず、すかさず高尾山へ足を伸ばすということ。私鉄の運賃は安いので、そこそこのランチを食べにいくより、上記の遠出の方がお金がかからないのには驚く。なんの投資もしていないし、国内消費抑制に一役かっている訳である。
(関連過去記載) 高尾山の「ブナ」について(2012.8.23)